震える産毛の開放感|小暑
昨年は雨待ち顔で空を見ていた。
(【写真】湖を走る雲|ペラペラエッセイ 2025.8.15)
今年は6月からたくさんの雨があって、胸を撫で下ろしている。
春はまだ、心配ばかりしていた。
わたしは竹薮を眺めるのが好きなのだが、今年はどこの竹薮も葉が枯れて落ちている。
水不足で筍が出てこないというのも聞いた。
山道を通ると。
車の助手席から見える斜面のあちこちに、茶色い木。杉や松が枯れ込んでいる。
常緑で「長寿」「不老不死」の象徴とされる松。神様が降りてくるのを「待つ」木。門松として飾る木だ。
こんな景色を目にするのは初めてのこと。
それも、一本や二本ではない。
ぐるりと見渡すと、枯れ込んだ木が3か所4か所に見える。長い山道のあいだ、ずっとそうだ。
そんなだから、昨年の夏から心配ばかりしていた。
しかし6月になると、よくよく降った。
わたしは一人、ほっとした。
──とは言え。
こう毎日毎日、じめじめとしていると
気付かぬうちに気分も湿ってくる。
「よく降るねぇ……」
と言葉にしながら、山の木々を想う。
見えない産毛を微かに振るわすような重く湿った空気を感じながら。

わたしの住むところでは、昨日空気がかわった。
乾いた。
すると、雀の声は空気を伝って一瞬で耳に届いた。
見えない薄い膜が1枚、剥がれたよう。
同時に、遠くで鳶がぴぃよろと歌い、ぶーん……と何かが消えていった。
カナブンだろうな。乾いた空気がいっぺんにたくさんの音を運んできた。
わたしの耳も肌もほっとしたようだった。
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