メタバースドラマ『クロスロード』最終回クランクアップ。3年かけて辿り着いた場所
どうも、久我レイジです。
メタバースドラマ『クロスロード』最終回、クランクアップしました。
こう書くと、ひとつの制作報告に見えるかもしれません。でも、僕の中ではもう少しだけ違う感覚があります。
撮影が終わった瞬間、ものすごい達成感が押し寄せてきたかというと、正直そうでもありませんでした。
どちらかというと、「ようやくここまで来たな」と思いながら、次に残っている編集や公開のことを考えていました。
まだ終わっていない。
でも、たしかにひとつの大きな山は越えた。
そんな少し中途半端な実感の中で、あとからじわじわと、3年という時間の重さが追いかけてきた感じです。
2022年10月に始まった『クロスロード』は、最初から今の形だったわけではありません。
途中で止まり、作り直し、人に助けられ、ぶつかることもありながら、ようやく最終回の撮影までたどり着きました。
今日は、そのことを書いておきます。

メタバースドラマ『クロスロード』は、2022年10月のネットドラマ制作から始まった

『クロスロード』の制作が始まったのは、2022年10月でした。当時の形は、今のようなフル動画のドラマではありません。
僕の中では「デジタル紙芝居」という言葉がいちばんしっくり来ていました。
cluster内で撮影したシーンをスクリーンショットで切り取り、それをスライドショーのようにつないで、そこに声優さんの声を乗せてドラマにする。
今振り返ると、かなり手探りだったと思います。
でも、あのときは本気でした。
その時点で自分たちにできる表現を探しながら、どうすればメタバースの中で物語を作れるのか、どうすればアバターの演技や空間の空気を作品として届けられるのか、ずっと考えていました。
ただ、作れば作るほど、少しずつ引っかかるものも出てきました。
これはこれで形にはなっている。
でも、『クロスロード』という物語を届けるには、まだ足りないんじゃないか。
静止画だから悪いという話ではありません。
ただ、この作品の中にある間や空気、登場人物たちの距離感を考えたときに、もっと動きのある形で見せたいという気持ちが強くなっていきました。
その違和感を、途中から無視できなくなったんです。

誰も来なかったエキストラ募集から、clusterでの交流が始まった

最初から、人が集まってくれたわけではありません。
clusterに来た頃、僕は「ここでドラマのエキストラを募集してみよう」と思って、イベントを立ち上げたことがありました。
でも、そのときは誰も来ませんでした。
さすがちょっと落ち込みました。
今なら少し笑って話せますが、当時は普通にきつかったです。
メタバースでドラマを作りたいと思っていても、そもそも誰にも知られていない。作品のことも、自分たちのことも、何をしている人なのかも伝わっていない。
そんな状態で、いきなり「ドラマのエキストラをお願いします」と言われても、参加する方が難しいですよね。
冷静に考えれば当然なんです。
交流もない。どこの誰が作っている作品なのかもわからない。しかも、メタバースドラマというジャンル自体がまだかなりニッチなものです。
そこで、まずは自分たちのことを知ってもらうところから始めようと思いました。
clusterでイベントに行き、人と話し、Xでも少しずつ制作のことを出していく。
すぐに何かが変わったわけではありませんが、そこから約1年、かなり本気で交流を続けました。
作品を作る前に、人との関係を作る必要があったんだと思います。
結果として、最終回までエキストラのみんながほとんど離脱することなく撮影に参加してくれました。
最初は誰も来なかった場所に、最後は一緒に作品を作ってくれる人たちがいた。
その変化だけでも、この3年の意味はあったのかもしれません。

ネットドラマ『クロスロード』を中断し、メタバースドラマとして作り直した理由

一度、『クロスロード』は中断しました。
意気揚々と始めたものを止めるのは、やっぱり簡単ではありません。
自分で始めた作品だからこそ、途中で止まることに対して悔しさもありましたし、情けなさに近い感情もありました。
このまま続けるのか。
それとも、いったん止めて、最初から作り直すのか。
その選択は、かなり大きかったです。
結果として僕は、初期のネットドラマ『クロスロード』を中断し、改めてメタバースドラマ『クロスロード』として作り直すことにしました。
フル動画にすれば、もっと伝えられるものがある。
登場人物の動き、空間の空気、視線の流れ、沈黙の時間。
そういうものを映像として入れられるようになれば、この作品はもっと強くなると思ったんです。
リメイクといえばリメイクです。
ただ、僕の感覚としては、同じ作品を少し直したというより、もう一度腹をくくって別の挑戦を始めたようなものでした。
中断した時間も、悔しかった感覚も、そのまま次の制作に持ち込むしかなかった。
綺麗な再スタートではなかったと思います。
でも、あそこで作り直すと決めたから、今の『クロスロード』があります。

蒼月樹莉愛さんと2人で、ぶつかりながら作ってきた撮影の日々

撮影は基本的に、僕と同じチームの蒼月樹莉愛さんの2人で進めてきました。
2人とも、こだわりが強いです。
だからこそ、うまく噛み合うときはかなり強いものが作れます。
一方で、ぶつかることもありました。
時には本気で言い合いになって、撮影が中断したこともあります。
こう書くと、少し生々しく見えるかもしれません。
でも、あれは単なる揉め事というより、お互いに作品を軽く扱えなかった結果だったと思っています。
カメラの角度、間の取り方、シーンの温度、登場人物がそこに立っている意味。
そういう細かい部分に、どちらも引っかかる。
妥協すれば、その場は進みます。
でも、そこで飲み込めないことがある。
それだけ本気で向き合っていました。
もちろん、楽な制作ではありませんでした。
ただ、綺麗なことだけで作品ができたわけではないし、そこをなかったことにすると、この3年の手触りが少し薄くなってしまう気もしています。
『クロスロード』は、穏やかな時間だけで作られた作品ではありません。
迷いも、衝突も、悔しさもありました。
それでも最後まで形にできたことは、僕にとって大きいです。

エキストラが入って、メタバースドラマの街に人の気配が生まれた

エキストラを募集する前は、基本的に2人で撮影していました。
そのため、街中の風景や、人混みが想定される場所でのシーンは、どうしても避けることが多かったです。
誰もいない街は撮れます。
でも、本来なら人がいるはずの場所に誰もいないと、画面の中に少し不自然な空白が残ります。
エキストラのみんなが参加してくれるようになって、そこが大きく変わりました。
街中で人が行き交うシーン。
登場人物たちが話し合っている横に、自然に人の流れがある場面。
そこに誰かがいてくれること自体が物語の厚みになるカット。
そういうものが撮れるようになったことで、『クロスロード』の世界はかなり広がりました。
主役だけでは出せない空気があります。
背景に人がいることで、その場所がちゃんと生きているように見える。
エキストラという言葉だけでは片づけられないくらい、作品の中で大事な役割を担ってもらいました。
そして何より、約1年間ほとんど離脱することなく、一緒に撮影に挑んでくれたこと。
これは本当にありがたかったです。
それぞれ生活がある中で時間を作り、集まって、作品の世界を支えてくれた。
その積み重ねがなければ、今の『クロスロード』の画面は生まれていません。


生成AI時代に、人の手で撮り続けた理由

『クロスロード』の制作が始まった頃は、ちょうど生成AIが世に出始めた時期でもありました。
そこから数年で、状況は一気に変わりました。
今では、画像も動画もAIで作れる時代です。しかも、かなり高いクオリティのものが出てくるようになっています。
その中で、僕たちがやってきたことは、効率だけで見ればかなり遠回りだったと思います。
メタバースドラマというジャンル自体がまだニッチで、撮影も演出も、実際にアバターで集まって行う。
世の中の流れだけを見れば、決して追い風ばかりではありませんでした。
でも、僕はこの作品を人の手で作ってきたことに意味があると思っています。
演じる人がいて、声を吹き込む人がいて、空間を作る人がいて、撮る人がいて、支える人がいる。
その時間が重なって、ようやくひとつの場面になる。
AIが作る映像には、AIの強さがあります。
それは否定するものではないですし、僕自身もこれからの創作に大きな可能性を感じています。
ただ、その一方で、人が集まって作ったものにしか残らない温度もある。うまく説明しきれませんが、そこには手間だけではない何かがあります。
待ち時間も、失敗も、撮り直しも、誰かの一言で空気が変わる瞬間も、全部含めて作品になっていく。
『クロスロード』は、そういう作り方をしてきました。
完成した映像だけを見れば、約15分の1話です。
でも、その裏側には見えない時間がかなり詰まっています。
そこは、僕がちゃんと覚えておきたい部分です。

全12話、出演者60名以上。積み上げてきたメタバースドラマの到達点

結果として、『クロスロード』はかなり大きな規模の作品になりました。
全出演者は60名以上。
約15分のフル動画を全12話。
ショート動画は100本を超えています。
数字だけで作品の価値が決まるわけではありません。
でも、この数字はちゃんと残しておきたいです。
なぜなら、ここまで続けること自体が簡単ではなかったからです。
メタバースドラマという領域で、ここまでの規模を積み上げてきた作品は、少なくとも僕たち以外にほとんど見当たりません。
これは自慢というより、自負に近いです。
誰かに頼まれて始めたわけではありません。
確立された道があったわけでもありません。
それでも、撮影を重ね、編集し、ショート動画を作り、発信し、イベントを立て、交流し、また撮影に戻る。
その繰り返しを続けてきました。
派手に見える部分だけではなく、地味な作業の方がずっと多かったです。
それでも止めずに積み上げてきたから、ようやくここまで来ました。

最終回撮影後、エキストラのみんなの言葉でようやく実感した

最終回の撮影が終わった直後、僕自身はまだ制作モードのままでした。
「やっと完成に向かえる」
その意識の方が強かったです。
クランクアップしたから終わり、というより、ここから編集して、公開まで持っていかないといけない。
監督としての頭が、まだ次の工程を見ていたんだと思います。でも、エキストラが集まっているコミュニティで最後のメッセージを見たとき、そこで少し感情が追いついてきました。
「1年間エキストラとして撮影に参加できて嬉しかった」
「貴重な経験ができてよかった」
そういう言葉を見たときに、ああ、本当にここまで来たんだなと思いました。
僕にとっては作品制作の日々でも、参加してくれた人たちにとっても、それぞれの時間がちゃんとあった。
そこに気づいたとき、『クロスロード』は僕だけのものではなくなっていたんだと感じました。
もちろん、監督として責任を持って作ってきた作品です。でも、そこに関わってくれた人たちの時間や思いが重なった時点で、この作品はもうひとりのものではありません。
それが嬉しかったです。
同時に、少し怖くもありました。
ちゃんと完成させないといけない。
この時間を、作品として残さないといけない。
クランクアップしてから、ようやくその重みを感じたのかもしれません。

最終回はcluster劇場公開とYouTube同時公開を予定しています

最終回は、国産バーチャルSNS「cluster」での劇場公開と、YouTubeでの同時公開を予定しています。
時期は5月末を考えています。
最終回の編集が終わり次第、正式な日程を公開します。
YouTubeは今も大事な公開場所です。
ただ、今のYouTubeはかなり激しい場所になってきているとも感じています。
作品を届ける場として大切なのは変わりません。
でも、そこだけに頼るのではなく、別の体験も作っていく必要がある。
VRで劇場に入ると、そこには座席があって、スクリーンがあって、みんなで同じ映像を観る空間があります。
場所に縛られずに集まれるのに、ちゃんと同じ場所にいる感覚がある。
『クロスロード』の最終回をclusterの劇場で迎えたいと思ったのは、たぶんそこに理由があります。
画面の向こうで再生される作品ではなく、その場に集まって観る作品として締めたい。
最後はみんなでワイワイしながら観て、この3年間の時間を少しでも共有できたら嬉しいです。


『クロスロード』は終わっても、人生の物語はまだ途中

『クロスロード』は、ドラマとしては終わりに向かっています。
でも、人生の物語はまだ途中です。
この作品を作る中で、うまくいったこともありました。逆に、思うように届かなかったこともあります。
もっと早く気づけたこともあれば、遠回りしないとわからなかったこともありました。
それでも、ここまで走ってきた経験は、確実に次につながる一歩でした。
最初は誰も来なかったエキストラ募集。
途中で中断したネットドラマ。
リメイクを決めて、フル動画として作り直した日々。
ぶつかりながら撮影を続けた時間。
そして、最後まで一緒に作品を支えてくれた人たち。
全部が綺麗につながっていたわけではありません。
むしろ、ぐちゃぐちゃしながら進んできた部分の方が多かった気がします。
でも、その不揃いな時間があったから、今の『クロスロード』があります。
声を入れてくれた人がいて、アバターで演じてくれた人がいて、背景に立ってくれた人がいて、音楽で感情を支えてくれた人がいました。
そして、完成前からずっと見守ってくれた人たちもいます。感謝という言葉だけでは足りない気もします。
でも、今はやっぱり、ありがとうございますと書くしかありません。
最終回の公開まで、もう少しです。
誰もいなかった場所から始まって、最後には一緒に作品を観られる場所まで来た。
その先に何があるのかは、まだ僕にも全部は見えていません。
でも、だからこそ、もう少し進んでみたいと思っています。
こちらもおすすめ!
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップは作品づくりの活動費に使わせていただきます。応援していただけると、とても励みになります!