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メモを取る本当の意味― 忘れるために書くと、人はもっと考えられる ―

私が45年間仕事をする中で、ずっと続けてきた習慣があります。
それは、「メモを取ること」です。

私が社会人になった頃は、まだスマートフォンもクラウドもない時代でした。予定や約束、やるべき仕事、会議の内容、ふと思いついたアイデアまで、すべて手帳や付箋紙に書き留めていました。

多くの人は、「メモは忘れないために取るもの」と考えています。
もちろん、それも間違いではありません。
しかし、45年間仕事を続ける中で、私はもっと大切な意味があることに気づきました。

それは、メモは「覚えるため」ではなく、「覚えなくて済むようにするため」に取るものだということです。

人の脳には限界があります。
「あれも忘れてはいけない」「これも覚えておかなければ」と頭の中に情報を抱え込んでいると、本当に使いたい「考える力」が奪われてしまいます。

だから私は、思いついたことはすぐに書きました。
ToDoやスケジュールはもちろん、会議で重要だと思った一言、お客様から聞いた要望、解決策のヒント、気になった言葉まで、何でもメモに残しました。

付箋紙も大きさの違うものを手帳に常備し、終わった仕事ははがし、翌週に持ち越すものは貼り替える。
名刺をいただけば、その方の特徴や会話の内容を書き添える。
こうした小さな積み重ねが、私の仕事を支えてくれました。

そしてもう一つ、大切にしていたことがあります。
それは、メモは書いて終わりではなく、見返して考えるためのものだということです。

あとから読み返すことで、点だった情報が線でつながり、新しいアイデアが生まれたり、問題の解決策が見えてきたりすることが何度もありました。

メモは単なる記録ではなく、自分の思考を整理し、育てるための道具だったのです。

この記事では、私自身の45年間の実体験をもとに、「メモを取る本当の意味」についてお話しします。
読み終えたときには、きっとあなたも「メモは記録ではなく、思考のための道具なのだ」という見方に変わっているはずです。


<第1章 メモは記憶するためではない>

「メモは忘れないために取るものです。」
これは、多くの人が一度は聞いたことのある言葉でしょう。
確かに、それは間違いではありません。
しかし、それはメモの役割の半分しか見ていません。

私は45年間仕事をしてきましたが、メモを取る一番の目的は、「覚えるため」ではありませんでした。
「覚えなくて済むようにするため」です。

人の脳は非常に優れていますが、何でも覚えておけるわけではありません。「午後は○○へ電話をしよう」
「来週までに資料を作らなければ」
「あの人に確認しておこう」など、小さな予定や気になることが増えていくと、それだけで頭の中はいっぱいになってしまいます。

すると、本当に使うべき「考える力」まで奪われてしまいます。

私は、大切なことほどメモに書いていました。
思いついたアイデア、
やるべき仕事、
会議で決まったこと、
お客様からの要望、
後で調べたいこと 。

頭に浮かんだ瞬間に書き留めることで、「忘れてはいけない」という不安から解放されます。
つまり、メモは記憶を紙や手帳に預ける行為なのです。

その結果、頭の中には余裕が生まれます。その余裕があるからこそ、「どうすればもっと良くなるだろう」「他に方法はないだろうか」と考えることに集中できます。

仕事でも勉強でも、本当に価値があるのは「覚えること」ではなく、「考えること」です。

暗記だけなら、今ではスマートフォンやAIが助けてくれます。
しかし、自分で考え、判断し、新しいアイデアを生み出すことは、人にしかできない大切な力です。
だからこそ、メモを取ることは単なる記録ではありません。

自分の頭を「記憶する場所」から「考える場所」へ変えるための技術なのです。

この考え方を身につけるだけで、仕事の進め方も、勉強の仕方も、大きく変わっていきます。

<第2章 頭の中を空っぽにすると考える力が増える>

「最近、やることが多すぎて頭がいっぱいです。」
仕事でも勉強でも、このように感じた経験は誰にでもあるでしょう。

「あのメールを返さなければ。」
「買い物をしなければ。」
「資料も作らないと。」
「明日の会議の準備もしなければ。」
こうした「忘れてはいけないこと」が頭の中にいくつもあると、それだけで脳は多くのエネルギーを使っています。

その結果、目の前の仕事に集中できなくなったり、新しいアイデアが浮かばなくなったりします。

私は45年間仕事をする中で、この状態をできるだけ作らないように心がけてきました。
そのために行っていたことは、とてもシンプルです。

頭に浮かんだことは、その場でメモをする。
ただ、それだけです。

「あとで書こう」と思うと、そのことを忘れないように脳がずっと覚え続けようとします。それだけで頭の中の容量が使われてしまいます。
だから私は、思いついたことや頼まれたことは、その場で手帳や付箋紙に書きました。
すると、「忘れたらどうしよう」という不安がなくなります。
安心して目の前の仕事だけに集中できるのです。

勉強も同じです。
教科書を読んでいて疑問に思ったことや、あとで調べたい言葉が出てきたら、無理に覚えようとはしません。
まずはメモをして先へ進みます。
そうすることで、学習の流れが止まりません。
そして後からまとめて調べることで、理解も深まります。

私はメモとは、「脳の容量を増やす道具」だと考えています。

もちろん、実際に脳の大きさが変わるわけではありません。
しかし、覚えるべきことを紙や手帳に預けることで、脳はその分だけ自由になります。
自由になった脳は、物事の本質を考えたり、問題を解決したり、新しい発想を生み出したりすることに力を使えるようになります。
だから、仕事ができる人や勉強ができる人ほど、意外なほどよくメモを取っています。

記憶力が悪いからではありません。
自分の頭を「記憶する場所」ではなく、「考える場所」として使っているからです。

メモは単なる記録ではありません。
思考するための「余白」をつくる道具なのです。

お風呂で浮かんだことをメモする方法も記事にしていました。

<第3章 私が45年間メモしてきたもの>

私は45年間仕事をしてきましたが、その間、手帳を持たなかった日はほとんどありませんでした。

今のようにスマートフォンで何でも管理できる時代ではありませんでしたから、仕事に必要なことはすべて手帳や付箋紙に書いていました。
もっとも、私は「何を書くか」を難しく考えたことはありません。

「頭に残しておく必要がある」と思ったことは、すべてメモする。
それだけです。

例えば、仕事中にふと浮かんだアイデアです。
「この売場はこう変えたらもっと見やすくなる。」
「この仕事の進め方なら効率が上がるかもしれない。」
その場では時間がなくても、あとで必ず役に立つと思ったことは、短い言葉でも構わないので書き留めました。

また、ToDoやスケジュール、タスク管理もすべて手帳で行っていました。
電話をする相手、確認しなければならないこと、締切日、訪問予定など、覚えておこうとはしません。
書いてしまえば安心して次の仕事に取りかかれるからです。

会議でも同じでした。
私は会議の内容を一字一句書き写すことはありません。
本当に重要だと思ったこと、後で行動につながること、自分が気づいたことだけをメモしていました。
会議の記録を作ることが目的ではなく、自分が行動するためのメモだったからです。

さらに、お客様との会話や部下との面談でも、印象に残った言葉や要望、約束した内容などを簡単に書き残していました。
一度書いておけば、次に会うときに自然と思い出せます。
「前回お話しされていた件は、その後いかがですか。」
そんな一言が信頼関係を深めることも少なくありませんでした。

私は受け取った名刺にも、その方の特徴や会話の内容を書き添える習慣がありました。
時間がたってから名刺を見返しても、その人との出会いが鮮明によみがえります。
メモは、情報だけでなく、人とのつながりまで残してくれるのです。

今ではスマートフォンのメモアプリや音声入力など便利な道具がたくさんあります。
しかし、大切なのは道具ではありません。
「あとで覚えておこう」ではなく、「今、記録しておこう」という習慣です。
この小さな習慣が、仕事の質を高め、考える時間を増やし、自分自身の成長につながっていくのです。

<第4章 付箋は「動くメモ」である>

私が45年間仕事をする中で、手帳と並んで欠かせなかったものがあります。
それが付箋紙です。

手帳には、必ず大きさの違う付箋紙を数種類入れていました。

今ではスマートフォンのタスク管理アプリを使う人も多いでしょう。
しかし、私にとって付箋紙には、紙だからこその大きな利点がありました。

それは、自由に動かせることです。

私は、その週にやるべき仕事や忘れてはいけないことを付箋紙に書き、手帳の見やすい場所に貼っていました。
仕事が終われば、その付箋をはがして捨てます。
まだ終わっていなければ、翌週のページへ貼り替えます。

たったこれだけのことですが、この習慣のおかげで、「今、自分が何を優先すべきか」がいつもひと目で分かりました。

もし手帳に直接書いてしまうと、予定が変わったり、仕事が翌週に延びたりしたときに、二重線を引いたり、書き直したりしなければなりません。
その点、付箋紙なら貼り替えるだけです。
予定の変更にも柔軟に対応できます。

私は付箋紙を、「動くメモ」だと考えています。

仕事は、計画どおりに進むとは限りません。
急な依頼が入ることもあれば、優先順位が変わることもあります。
だからこそ、メモも自由に動かせる方が使いやすいのです。

また、付箋紙にはもう一つ大きなメリットがあります。
それは、終わった仕事が目に見えて減っていくことです。

一枚付箋をはがすたびに、「一つ終わった」という達成感が生まれます。
この小さな成功体験が、次の仕事への意欲につながります。
反対に、何週間も同じ付箋が残っていると、「なぜ進まないのだろう」と立ち止まって考えるきっかけにもなります。

つまり、付箋紙は単なるメモではありません。
自分の仕事を見える化し、行動を管理するための道具なのです。

勉強でも同じことができます。
覚えたいこと、復習したいこと、調べたいことを付箋紙に書き、ノートや参考書に貼っておけば、終わったものからはがしていくことができます。
すると、「何が終わり、何が残っているのか」が一目で分かります。

私は長年、付箋紙を使い続けてきましたが、この「動かせる」というシンプルな特徴が、仕事の効率を大きく高めてくれました。

メモは書くだけではありません。
必要に応じて動かし、整理し、行動につなげてこそ、本当の価値が生まれるのです。

<第5章 メモは見返して初めて価値が生まれる>

メモは、書いただけで満足してはいけません。
本当に大切なのは、あとで見返すことです。

私は45年間仕事をする中で、時間があると手帳を開き、これまで書いたメモを読み返す習慣を続けてきました。

すると、不思議なことが起こります。
書いたときには気づかなかったことが見えてくるのです。

例えば、以前書いたアイデアが、今取り組んでいる仕事の解決策になったことが何度もありました。

別の日に書いたメモ同士がつながって、「この方法ならうまくいくかもしれない」と新しい発想が生まれることもありました。

メモは、その瞬間の記録で終わるものではありません。
時間をおいて見返すことで、新しい価値が生まれるのです。

勉強も同じです。
授業中や本を読んでいるときに書いたメモを、あとで読み返してみてください。
そのときは理解できなかった内容が、「そういうことだったのか」と腑に落ちることがあります。

新しく学んだ知識と結びついて、理解が一段深まることも少なくありません。
私は、メモは「考える材料」だと思っています。
材料がたくさん集まれば集まるほど、より良いアイデアや判断が生まれます。
反対に、書きっぱなしでは、その材料は引き出しの奥にしまわれたままです。

料理も、材料を買ってきただけでは完成しません。
材料を取り出し、組み合わせ、調理して初めて一つの料理になります。

メモも同じです。
見返し、整理し、考えることで、初めて知識や経験として自分の力になります。

私は手帳を読み返しながら、「この仕事はもっとこうすれば良かった」「この考え方は次にも使える」と振り返る時間を大切にしてきました。
この習慣のおかげで、同じ失敗を繰り返すことが減り、良かった方法は次の仕事へ生かせるようになりました。

つまり、メモは過去を記録するためのものではありません。
未来をより良くするための道具なのです。

書くことと同じくらい、見返すことを習慣にしてください。
その積み重ねが、あなたの仕事や勉強を確実に成長させてくれるはずです。

<第6章 メモは「未来の知識」を育てる種である>

ここまで、メモの本当の意味についてお話ししてきました。

メモは、忘れないためだけのものではありません。
頭の中を整理し、考えるための余白をつくり、仕事や勉強を前に進めるための大切な道具です。

しかし、私が45年間仕事をする中で実感したことがあります。
それは、メモは「書いて終わり」ではなく、「育ててこそ価値がある」ということです。

一枚のメモには、小さな気づきしか書かれていないかもしれません。
しかし、その小さな気づきが積み重なると、大きな知識になります。

ある日の会議で聞いた一言。
仕事中に思いついたアイデア。
本を読んで心に残った言葉。
お客様との会話で気づいたこと。

一つひとつは小さな点です。
でも、それらを見返し、考え、別のメモと結びつけていくと、点は線になります。
さらに、その線が何本もつながると、自分だけの知識や経験となり、仕事や人生を支える大きな財産になります。

私は、この積み重ねが人を成長させるのだと思っています。

勉強でも同じです。
授業中のメモや、本を読みながら書いた気づきは、そのままでは単なる断片的な情報です。
しかし、それを整理し、関連づけ、何度も見返すことで、「理解」へと変わっていきます。

だから私は、メモを「知識の完成形」とは考えていません。
メモは、未来の知識を育てるための「種」なのです。
そして、その種を最も効率よく育てる方法があります。

それが、私自身が通関士試験をわずか3か月で突破したときに実践したカード式ノート術です。
メモした情報を整理し、本当に理解できていないことだけを残し、何度も育てていく。
その方法によって、私は暗記に頼らない勉強を続けることができました。
次回以降にその具体的な方法を詳しくご紹介します。
あなたの「メモ」は、きっと「一生使える知識」へと変わっていくはずです。

こんな記事も書いていました。併せてご覧ください。

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