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店長にとって売上より大切なもの

店長の仕事とは何でしょうか。

そう聞かれたら、多くの人はこう答えるかもしれません。
「売上を上げること」

確かに間違いではありません。
会社は利益を出さなければ存続できませんし、店舗には売上目標があります。
店長はその達成を求められます。

私自身も長年、小売業の現場で働いてきましたが、毎月の予算、前年対比、客数、客単価など、常に数字と向き合ってきました。

店長という仕事は、数字との戦いである。
そんなふうに感じることも少なくありません。

しかし、現場で長く働けば働くほど、あることに気づきます。
それは、売上は大切だが、売上そのものを追いかけても売上は上がらないということです。

売上が伸びている店を見てみると、そこには共通点があります。
スタッフが生き生きと働いている。
お客様から信頼されている。
売場が整っている。
店内の雰囲気が良い。
そして店長自身にも余裕がある。

つまり、数字の前に「人」があるのです。

お客様が来店してくださるのも人。
商品を販売するのも人。
売場を作るのも人。
お店の評判を作るのも人。
売上を生み出しているのは数字ではなく、人の行動です。

だから私は、店長の仕事を一言で表すなら、
「数字づくり」ではなく「人づくり」だと思っています。

スタッフを育てる。
お客様との信頼を育てる。
働きやすい環境を育てる。
地域との関係を育てる。

そうして育まれた信頼や関係性の結果として、売上や利益が生まれるのです。

もちろん、私は売上を軽視しているわけではありません。
売上は重要です。
しかし、それは目的ではなく結果です。

木の実をたくさん収穫したいなら、実を引っ張るのではなく、土を耕し、水を与え、木を育てなければなりません。

店も同じです。
売上という実を育てるためには、人という土壌を大切にする必要があります。

今回は、私がこれまで書いてきた店長の仕事や顧客満足、従業員満足、売場づくりなどの記事の内容も振り返りながら、「店長にとって売上より大切なものとは何か」について考えてみたいと思います。 


<第1章>売上は結果であって目的ではない

店長という仕事をしていると、毎日のように数字を見ます。

今日の売上はいくらだったか。
予算に対して何%か。
前年と比べてどうか。
客数は増えたか。
客単価は上がったか。

会社からも数字を求められますし、店長自身も数字を意識しなければなりません。
だからいつの間にか、「売上を上げることが店長の仕事だ」と思うようになります。

しかし、本当にそうなのでしょうか。
私は長年現場で働いてきて、売上そのものを追いかけることには限界があると感じています。

なぜなら、売上はあくまで結果だからです。

例えば、売上は一般的に「客数 × 客単価」で表されます。
さらに考えてみると、
客数は「何人のお客様が来店したか」、
客単価は「一人のお客様がどれだけ購入したか」ということです。

つまり売上を作っているのは数字ではありません。
お客様の行動です。

では、お客様はなぜ来店するのでしょうか。
なぜ商品を購入するのでしょうか。
なぜまた来店してくださるのでしょうか。
そこには必ず理由があります。

欲しい商品があった。
接客が良かった。
店内が見やすかった。
安心して買い物ができた。
スタッフの対応が親切だった。

その一つひとつが積み重なった結果として売上になります。

逆に言えば、数字だけを見ていても売上の本当の原因は見えてきません。

売上が下がった時、多くの人は数字を見ます。
しかし本当に見るべきなのは現場です。

お客様は何に困っているのか。
スタッフは何に悩んでいるのか。
売場に問題はないか。
商品の魅力は伝わっているか。

数字は結果を教えてくれます。
しかし原因は教えてくれません。

原因はいつも現場にあります。

私の現役時代、売上が良い日も悪い日もありました。
しかし振り返ると、売上が良い店には共通点がありました。

スタッフ同士の雰囲気が良い。
売場が整っている。
お客様への気配りができている。
問題が起きてもすぐ改善できる。

つまり数字が良いから店が良いのではなく、店が良いから数字が良くなるのです。
ここを勘違いすると、店長の仕事は苦しくなります。

売上だけを見ていると、「もっと売れ」「もっと声を出せ」「もっと頑張れ」という指示が増えていきます。
しかし、それでは根本的な解決になりません。

木の実が少ないからといって、枝を引っ張っても実は増えません。
土を耕し、水を与え、木そのものを育てる必要があります。

店も同じです。
売上という実を増やしたいなら、売上を追いかけるのではなく、売上を生み出す環境を育てなければなりません。

スタッフが働きやすい環境。
お客様が買い物しやすい環境。
信頼が生まれる環境。
そうした土壌づくりこそが店長の本当の仕事です。

売上は大切です。
しかし、店長が本当に向き合うべきものは売上ではありません。
売上を生み出す原因です。

そしてその原因の中心には、いつも「人」がいます。
だから私は、店長の仕事は数字づくりではなく、人づくりだと思うのです。

<第2章>スタッフを大切にする店は強い

店長にとって売上より大切なものは何か。

そう聞かれたとき、私はまず「スタッフ」と答えます。

もちろん、お客様も大切です。
しかし、お客様に価値を届けているのは誰でしょうか。

商品を並べるのも、接客をするのも、レジを打つのも、売場を整えるのも、すべてスタッフです。

どれほど素晴らしい商品があっても、どれほど良い立地に店があっても、働く人がいなければお店は成り立ちません。

だから店長がまず大切にすべきなのは、一緒に働くスタッフなのです。

しかし、「スタッフを大切にする」と聞くと、少し誤解されることがあります。
優しくすること。
怒らないこと。
何でも許すこと。
そう考える人もいるかもしれません。
けれど、それは少し違います。

本当にスタッフを大切にするとは、その人の成長に責任を持つことだと思います。

人は、自分の成長を感じられるときに働きがいを感じます。

昨日できなかったことができるようになった。
お客様から感謝された。
後輩を教えられるようになった。
任される仕事が増えた。

そんな経験が積み重なることで、自信が生まれます。
そして仕事が面白くなります。

店長の仕事は、その成長を支えることです。

スタッフが失敗しないように管理することではありません。
失敗しても学べる環境を作ることです。

スタッフを動かすことではありません。
スタッフが自ら動けるように育てることです。

実際、強い店には共通点があります。
それは「店長が優秀」であることではありません。
「スタッフが育っている」ことです。

店長が休んでも店が回る。
急なトラブルにも現場で対応できる。
新人が入っても自然と教える文化がある。
そんな店は強いのです。

逆に、店長だけが頑張っている店は長続きしません。
店長が休めば店が止まる。
店長がいなければ判断できない。
スタッフは指示待ちになる。

一見すると店長が優秀に見えるかもしれませんが、それは組織としては危険な状態です。

店長一人の力には限界があります。
だからこそ、人を育てる必要があるのです。

私はこれまで多くの店長を見てきました。
その中で本当に優秀だと感じた店長は、自分が目立つ人ではありませんでした。
むしろスタッフを主役にする人でした。

スタッフの成功を喜ぶ。
スタッフの成長を褒める。
スタッフの話を聞く。
スタッフを信じて任せる。

そうした積み重ねによって、チームの信頼関係が生まれていました。

信頼は命令では作れません。
信頼は日々の関わりの中で育っていくものです。

そして信頼が生まれると、チームは強くなります。
お互いに助け合うようになります。
問題が起きても隠さなくなります。
困っている仲間に自然と手を差し伸べるようになります。

そんなチームは、お客様にも良い影響を与えます。
なぜなら、お店の雰囲気はスタッフの状態を映し出すからです。
ギスギスした職場の空気は、お客様にも伝わります。

反対に、スタッフが生き生きと働いている店は、お客様も居心地の良さを感じます。

だから私は、「従業員満足の先に顧客満足がある」と思っています。

スタッフを大切にすることは、スタッフのためだけではありません。
結果としてお客様のためにもなるのです。
そして、その先に売上や利益があります。

店長の仕事は、人を管理することではありません。
人を育てることです。

一人ひとりの可能性を引き出し、成長を支え、信頼関係を築いていくことです。
それこそが、店長にとって最も価値のある仕事ではないでしょうか。

<第3章>お客様を大切にするとは何か

店長にとって売上より大切なものは人である。
前章では、その中でもスタッフを大切にすることについて書きました。

しかし、お店はスタッフだけで成り立っているわけではありません。
お客様が来店してくださるからこそ、お店は存在できます。

だから店長は、お客様を大切にしなければなりません。
では、お客様を大切にするとはどういうことでしょうか。

笑顔で接客すること。
丁寧な言葉遣いをすること。
親切に対応すること。

もちろん、それらも大切です。
しかし私は、お客様を大切にすることの本質はもっとシンプルだと思っています。

それは、お客様が感じる困りごとを減らすことです。

私はお店の仕事を考えるとき、よく「5つの不」という言葉を思い浮かべます。
不安、不満、不快、不便、負担

この5つをいかに減らせるか。
それがお客様満足の本質ではないかと思うのです。

例えば、お客様はさまざまな不安を抱えています。
この商品は自分に合うだろうか。
失敗しないだろうか。
使い方は難しくないだろうか。
その不安を解消するのが接客です。

分かりやすい説明。
丁寧な案内。
安心できる言葉。
そうした積み重ねによって、お客様は安心して購入できるようになります。

また、不満もあります。
欲しい商品が見つからない。
スタッフに聞いても分からない。
待ち時間が長い。
こうした不満を減らすことも重要です。

さらに不快もあります。
店内が汚れている。
スタッフの態度が悪い。
レジ対応が雑である。
どれも売場にいる人間からすると些細なことかもしれません。
しかし、お客様にとっては店全体の印象を左右する出来事です。

不便もあります。
案内表示が分かりにくい。
商品の場所が分からない。
レジまで遠回りしなければならない。

そして負担もあります。
手続きが面倒。
説明が難しい。
何度も同じことを聞かれる。
こうした小さなストレスが積み重なると、お客様は静かに離れていきます。

反対に、5つの不が少ない店は居心地が良くなります。
欲しい商品が見つけやすい。
困ったときに相談できる。
安心して買い物できる。
気持ちよく帰れる。
そうした体験をしたお客様は、また来店してくださいます。

ここで大切なのは、お客様は商品だけを買っているわけではないということです。

お客様は「体験」を買っています。

同じ商品ならどこの店でも買える時代です。
インターネットでも買えます。

価格だけなら、もっと安い店もあるかもしれません。
それでも来店してくださるのは、その店に価値を感じているからです。

私はこれを「信頼」だと思っています。

信頼とは、
「この店なら大丈夫。」
「この店なら安心できる。」
「この店なら気持ちよく買い物できる。」という感覚です。

そして信頼は、一度の接客で生まれるものではありません。
毎日の積み重ねによって育っていくものです。

だから店長は、目先の売上だけを追いかけてはいけません。
無理に商品を勧める。
必要のないものまで販売する。
数字のためだけに行動する。
そうしたやり方は、一時的な売上にはなっても信頼は失います。

信頼を失えば、お客様は戻ってきません。

しかし信頼を積み重ねれば、お客様は何度も来店してくださいます。
やがてそのお客様は常連になり、さらにファンになってくださいます。
ファンとは、単に何度も来店する人ではありません。
その店を応援したいと思ってくださる人です。

多少遠くても来店してくださる。
友人や家族に紹介してくださる。
新しい商品を楽しみにしてくださる。
そんな存在です。

売上を支えているのは、こうしたファンの方々です。
そしてファンを作る方法は、とてもシンプルです。

お客様を一人の人間として大切にすること。
目の前の不安や不満に向き合うこと。
安心して買い物できる環境を作ること。
その積み重ねが信頼を生み、信頼がファンを生みます。

だから私は、お客様を大切にするとは、
「5つの不を取り除き、信頼を育てること」だと思っています。
売上は、その先に生まれる結果に過ぎないのです。 

<第4章>店の空気は店長が作っている

お客様を大切にすること。
スタッフを大切にすること。

ここまで読んでくださった方の中には、
「それは分かるけれど、具体的に店長は何をすればいいのか」
と思われる方もいるかもしれません。

私はその答えの一つが、店の空気を整えることだと思っています。

空気というと少し抽象的に聞こえるかもしれません。
しかし、お客様は店に入った瞬間から、その店の空気を感じ取っています。

入店した瞬間に感じる明るさ。
清潔感。
スタッフの表情。
挨拶の声。
売場の整頓状態。
商品の見やすさ。

こうしたものを、お客様は無意識のうちに感じています。
そして、「なんとなく居心地がいい」、
あるいは「なんとなく買い物しづらい」という印象を持つのです。

興味深いことに、お客様は必ずしも理由を言葉にできるわけではありません。
しかし感覚としては確実に受け取っています。

私はこれまでたくさんのお店を見てきましたが、繁盛している店には独特の空気があります。
スタッフが明るい。
売場が整っている。
商品が生き生きとして見える。
お客様が楽しそうに買い物をしている。

一方で、苦戦している店には別の空気があります。
挨拶が少ない。
売場が乱れている。
スタッフが疲れて見える。
お客様も急いで帰ってしまう。

もちろん売上の良し悪しには立地や商品力など様々な要因があります。
しかし、それでも私は店の空気が与える影響は非常に大きいと感じています。

そして、その空気を作っているのは誰か。
それが店長です。

店長は店の中で最も影響力のある存在です。
店長が笑顔で挨拶をする店では、スタッフも挨拶をするようになります。
店長が整理整頓を大切にする店では、売場もきれいになります。
店長がお客様を大切にする姿勢を見せれば、スタッフも同じように行動します。

逆もまた然りです。
店長が不機嫌なら、その空気は店全体に広がります。
店長が数字ばかり見ていれば、スタッフも数字しか見なくなります。
店長が人を大切にしなければ、人を大切にする文化は育ちません。

つまり店長は、自分が思っている以上に店の空気を作っているのです。

私は以前、「店長の仕事の4つのポイント」として、
店の外観
商品
スタッフ
顧客
について書きました。

今振り返ると、この4つはすべて空気づくりにつながっています。
入口はきれいか。
商品は魅力的に見えるか。
スタッフは気持ちよく働けているか。
お客様は快適に買い物できているか。

こうした一つひとつを整えることで、店全体の空気が整っていきます。
そして空気が整うと、お客様はまた来たいと思います。
スタッフも働き続けたいと思います。
結果として売上や利益につながっていくのです。

ここで大切なのは、店長が特別なことをする必要はないということです。
毎日の清掃。
商品の整理整頓。
スタッフへの声掛け。
お客様への挨拶。
感謝を伝えること。
そうした当たり前のことを当たり前に続ける。

それが店の空気を作ります。
そして、その積み重ねこそが店の文化になります。

文化は一日では作れません。
しかし毎日の行動によって少しずつ形作られていきます。

私は店長の仕事とは、売上を管理することよりも、店の状態を整えることだと思っています。
なぜなら、状態が整えば人が育ち、人が育てばお客様が集まり、お客様が集まれば売上は後からついてくるからです。

店長は数字を作る人ではありません。
人が気持ちよく働き、お客様が気持ちよく買い物できる場を作る人です。
その場の空気を整えること。
それこそが店長にしかできない、大切な仕事なのではないでしょうか。

<第5章>利益は人を大切にした結果である

ここまで私は、
「スタッフを大切にすること。」
「お客様を大切にすること。」
「店の空気を整えること。」について書いてきました。

「きれいごとではないか」と思う方もいるかもしれません。
会社は利益を出さなければ存続できません。
お店も利益がなければ続きません。
だから結局は数字が大事なのではないか。

確かにその通りです。
私は売上や利益が不要だと言っているわけではありません。

むしろ店長には、利益を残す責任があります。
利益がなければ、スタッフに給料を払えません。
新しい設備も導入できません。
商品も仕入れられません。
会社も存続できません。
お客様に価値を提供し続けることもできなくなります。
だから利益はとても大切です。

しかし、ここで考えたいのは、利益をどうやって生み出すのかということです。

利益を増やしたいと思ったとき、人はつい近道を探したくなります。
人件費を削る。
無理な販売をする。
必要以上の値引きをする。
スタッフに負担をかける。

短期的には数字が良く見えることもあります。
しかし、その代償は必ずどこかで現れます。
スタッフは疲弊します。
離職が増えます。
サービスの質が下がります。
お客様の満足度も下がります。

そして最終的には売上まで落ちてしまいます。

私はこれまで現場で、「数字は良いのに、なぜか雰囲気が悪い店」を何度も見てきました。
そのような店は、一見すると成功しているように見えます。
しかし長く続かないことが少なくありません。

なぜなら、人が犠牲になっているからです。
スタッフが疲れ切っている。
お客様への配慮が不足している。
店長自身も追い詰められている。

そんな状態では持続できません。
反対に、長く愛される店には共通点があります。

スタッフが定着している。
お客様との信頼関係がある。
地域から支持されている。
そして利益も安定している。

これは偶然ではありません。
人を大切にしているからです。

私は利益とは、人を大切にした結果として生まれるものだと思っています。

お客様に価値を提供する。
スタッフが成長する。
働きやすい環境を作る。
無駄を減らす。
改善を積み重ねる。
その結果として利益が残る。

これが本来の姿ではないでしょうか。

利益は目的であると同時に、結果でもあります。
利益だけを目的にすると、人が見えなくなります。

しかし人を大切にしながら利益を目指すと、長く続く店になります。

私は店長に必要なのは、
「利益を追う力」ではなく、
「利益を生み出せる店を作る力」だと思っています。

そのためには、
スタッフが辞めないこと、
お客様がまた来てくださること、
売場が整っていること、
改善が続いていること、こうした土台が必要です。

利益は突然生まれるものではありません。
毎日の積み重ねの中から生まれます。
そしてその積み重ねの中心には、いつも人がいます。

だから私は、利益を大切にすることと、人を大切にすることは矛盾しないと思っています。

むしろ本当に利益を残したいなら、人を大切にしなければなりません。

お客様を大切にする。
スタッフを大切にする。
その結果として利益が生まれる。
そしてその利益によって、お店は未来へ続いていく。

店長の役割とは、その良い循環を作ることなのです。 

<第6章>店長自身を大切にできなければ、人は大切にできない

ここまで私は、スタッフやお客様を大切にし、店の空気を整え、利益を残すことについて書いてきました。

しかし、実はもう一人、大切にしなければならない人がいます。
それは、店長自身です。

店長という仕事は、思っている以上に孤独です。

売上が悪ければ責任を問われる。
クレームがあれば対応する。
スタッフが辞めれば穴埋めをする。
トラブルが起きれば最後に判断する。

周囲から見ると店長は強く見えるかもしれません。
しかし実際には、多くの店長がプレッシャーを抱えながら働いています。

私自身もそうでした。
数字に追われる日々。
人手不足への不安。
スタッフ育成の悩み。
終わらない仕事。

店長になれば楽になるどころか、責任はむしろ増えていきます。

そして真面目な人ほど、「自分が頑張れば何とかなる」と思ってしまいます。

自分が休めば迷惑がかかる。
自分が我慢すればいい。
自分がやれば早い。
そんな思いから、気が付けばすべてを背負い込んでしまうのです。

しかし、それでは長く続きません。
人間だからです。
どれだけ優秀な店長でも疲れます。
悩みます。
落ち込むこともあります。
余裕を失うこともあります。

そして店長の状態は、そのまま店の状態に影響します。
店長がイライラしていれば、スタッフも緊張します。
店長に余裕がなければ、スタッフの話を聞けなくなります。
店長が疲れ切っていれば、お客様への気配りも難しくなります。

つまり店長自身の心の状態は、店全体に伝染するのです。

私はこれまで多くの店長を見てきましたが、良い店長ほど完璧ではありませんでした。
むしろ、助けを求めることができる。
人に任せることができる。
休むことができる。
そんな人でした。

店長は何でもできる人である必要はありません。
何でも一人でやる人でもありません。
チームの力を引き出す人です。

だからこそ、自分が倒れてはいけないのです。

飛行機では、緊急時に酸素マスクが降りてきたら、まず自分に装着してから子どもを助けるよう案内されます。
なぜなら、自分が意識を失えば誰も助けられなくなるからです。

店長も同じです。
自分自身が疲れ切っていては、スタッフを支えることはできません。
お客様を大切にすることもできません。
店を良くすることもできません。

だから店長には、休む勇気、任せる勇気、頼る勇気、が必要なのです。

これは決して甘えではありません。
マネジメントの一部です。
自分を整えることも仕事なのです。

睡眠を取る。
健康に気を配る。
気分転換をする。
家族との時間を持つ。
趣味を楽しむ。
そんな当たり前のことが、実は店長にとって非常に重要です。

心に余裕があると、人に優しくなれます。
視野が広がります。
冷静な判断ができます。
スタッフの変化にも気付けます。
お客様の声にも耳を傾けられます。
そして何より、仕事を楽しめるようになります。

私は店長という仕事は、人と向き合う仕事だと思っています。
だからこそ、人を大切にするためには、まず自分自身も大切にしなければなりません。

自分を犠牲にし続けることが美徳ではありません。
自分を整え、余裕を持ち、その余裕を周りの人に分け与えること。
それこそが、本当に強い店長の姿ではないでしょうか。

店長もまた、一人の人間です。
だから人を大切にするなら、自分自身も大切にする。
それを忘れてはいけないのだと思います。

<おわりに>店長の仕事とは何か

さて、改めて考えてみましょう。
店長の仕事とは、一体何なのでしょうか。

売上を上げることでしょうか。
利益を増やすことでしょうか。
もちろん、それらは大切です。
しかし、それだけなら店長でなくてもできるかもしれません。

データ分析が得意な人もいます。
販売技術に長けた人もいます。
数字だけを見れば、もっと効率的な方法はいくらでもあるでしょう。

それでも店長という役職が存在するのはなぜでしょうか。
私は、人がいるからだと思っています。

お店には人がいます。
働くスタッフがいます。
買い物に来てくださるお客様がいます。
取引先の方がいます。
地域の方がいます。
そして店長自身もいます。

店という場所は、商品や設備だけで成り立っているのではありません。
人と人との関わりによって成り立っています。
だから店長の仕事も、本質的には人に関わる仕事なのです。

私はこれまで、多くの店長を見てきました。
売上を上げるのが上手な人もいました。
指示を出すのが上手な人もいました。
仕事の処理が速い人もいました。
しかし、本当に周囲から信頼されている店長には共通点がありました。

それは、人を大切にしていたことです。

スタッフの話を聞く。
お客様の声に耳を傾ける。
感謝を伝える。
相手を尊重する。
困っている人を支える。
特別なことではありません。
けれど、その当たり前を続けられる人は決して多くありません。

だからこそ価値があるのです。

店長という仕事は、不思議な仕事です。
自分一人では何もできません。
どれだけ優秀でも、一人で売場を作り、一人で接客し、一人で店を運営することはできません。
必ず誰かの力を借ります。

だから店長の成果は、自分一人の力ではなく、周りの人との関わりの中で生まれます。

スタッフが成長する。
お客様が喜ぶ。
店の雰囲気が良くなる。
信頼が積み重なる。
そうした目に見えにくいものが積み重なった先に、売上や利益があります。

数字は大切です。
しかし数字だけでは店は続きません。
信頼が必要です。
人が必要です。
だから私は、「店長にとって売上より大切なものは何ですか」と聞かれたら、迷わずこう答えます。

「人です」
スタッフも人。
お客様も人。
そして店長自身も人。
人を大切にすること。
人を育てること。
人との信頼関係を築くこと。
それこそが店長の最も重要な仕事だと思っています。

売上は、その結果として生まれるものです。
もし今、数字に追われて苦しくなっている店長がいるなら、一度だけ立ち止まって考えてみてください。

今日、自分は誰かを大切にできただろうか。
スタッフの話を聞いただろうか。
お客様の不安を取り除けただろうか。
感謝を伝えただろうか。

その積み重ねこそが、お店を強くし、長く愛される店を作っていくのだと思います。

店長の仕事とは、数字を追いかけることではありません。
人を大切にすることです。
そして、その先にこそ、本当の売上があるのではないでしょうか。

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