見出し画像

介護は「決めつけ」しない。「仮説」が利用者の可能性を広げる

仮説でなく、決めつけしてしまう


「Aさんは、認知症が進行している」
「Bさんは、寂しい思いをしている」
「Cさんは、一人で外に出ると迷ってしまう」

介護現場では、こうした判断をすることがある。
しかし、それは本当に事実なのだろうか。

そのため、利用者の日常の様子を観察して「仮説」を立てる。
仮説とは、「~と思われる」という意味だ。
つまり、確定事項ではない。

しかし、介護職の中には、仮説を飛び越えて「決めつけ」してしまうことがある。 
 

******************************

決めつけでうまくいく介護はない


なぜ、決めつけは起きるのか。
それは、おそらく過去の経験があるからだろう。

私たちは、物事を自分の経験を基準に考える。
目の前の出来事に対して類似の記録を引き出し、判断材料にする。

「こういうときは、こうだった」
「こういうふうに対応したら、うまくいった」

これは誰でも行う、当たり前のことだ。

特に、一度うまくいった経験は強い。
つい、「この方法なら、今回もうまくいくはず」と勘違いしてしまう。
しかし、それが正しいとは限らない。

経験上、「決めつけ」で介護がうまくいったことはない。

むしろ、「前はこれでうまくいったのに、今回はなぜかうまくいかない」ということの方が多い。

それは、目の前にいる利用者が、前の人と同じではないからだ。 
 

******************************

介護は「仮説」で進めるもの


特に介護では、一人ひとり違う人間を相手にしている。
過去の経験と近い状況はあっても、全く同じということはない。

認知症について新しい知識を得たとしても、その知識が目の前の利用者に、そのまま当てはまるとは限らない。

知識も経験も大切だ。
しかし、それをそのまま答えにしてしまうと、「決めつけ」になる。
だから、介護は「仮説」で進める物だと思う。

仮説を立てて、試してみる。
利用者の反応を見て、また考える。
この繰り返しが大切だ。

「決めつけ」は思考を止めてしまう。
リスクを放置することになりかねない。

このようなことを伝えている私自身、よく「決めつけ」をしてしまう。
本を読んで覚えたての知識をもとに、意気揚々とスタッフに語ってしまうこともある。

ところが、しばらくして「違うな」と気づく。
利用者に期待しているのとは、違う反応が返ってくるからだ。
これまで、利用者を怒らせたり、介助に応じてもらえないこともある。

こうして、自分の間違いに気づいて反省する。
そして、改めて気づく。

介護で「決めつけ」は危険だと。
介護とは、「仮説」で進むべきものなのだと。 
 

******************************

「本当にそうなの?」と考えてみる


もし、「これは確定したことだ」とするならば、一度立ち止まってみる必要がある。

例えば、物事をうまく思い出せない増えているAさん。
「認知症が進行した」と考えることはできる。
しかし、それは正しいのか。
たまたま答えにくいことを立て続けに聞かれて、うまく返答できなかっただけかもしれない。別な話なら、思い出せるのではないか。

施設のレクに参加せず、居室でいつも一人きりなBさん。
「寂しい思いをしている」と考えることはできる。
しかし、本当にそう感じているのだろうか。
誰もが一緒にいることを望んでいるとは限らない。
一人暮らしが長くて、静かな場所で本を読んだり、景色を眺めているのが好きな人だっている。

Cさんは一人で外に出て迷う。
でも、それは「一人で外にだたら迷う人」なのだろうか。
歩き慣れていない場所に戸惑っているだけかもしれない。
馴染みのある道ならば、戸惑わないかもしれない。

このように色々な角度から見ていくと、介護職が「そうだ」と思っていたことも、実は一つの仮説にすぎないと分かる。
 

******************************

仮説は「介護の可能性」を広げる


もちろん、このような検証をしても、介護は結局のところ仮説どまりだ。
本当のことは、本人にしか分からないのだから。
いや、本人もよく分かっていないこともあるだろう。

だからといって、仮説が悪いということではない。

むしろ私は、仮説こそ「介護の可能性」を広げるものだと思っている。

決めつけすると「これしかない」と視野が狭くなる。
一方で、仮説ベースで考えると

「この状況では、できないだけかもしれない」
「本人にとって合う環境が、別にあるのでは」

と、考える余地が生まれる。

介護は、家や施設などの閉鎖的な状況で行われることが多い。
それもあってか、知らずしらずのうちに利用者を「決めつけ」し、行動を制限してしまうことがある。

そんなときは、一度立ち止まって「本当にそうなのか?」と考えてみる。
すると、今まで見えていなかった可能性が見えてくるかもしれない。

決めつけは、「これしかない」を作る。
仮説は、「もしかしたら」を残す。

介護に必要なのは、すべて正しく言い当てることではない。
「仮説」と検証を繰り返す。
その姿勢こそ、介護の可能性を広げる一助になるだろう。

ここまで読んでいただき、感謝します。
途中で読むのをやめた方へも、感謝します。

******************************
******************************

【作品紹介】
介護でイライラ、ストレス もう限界 45の悩みを仏教で整える
介護現場の人間関係に疲れている
利用者対応でイライラしてしまう
頑張っているのに気持ちが休まらない
そんな悩みを抱える介護職の方に向けて書いた一冊です。
以下のAmazonページで詳細や試し読みをご覧いただけます。
興味がありましたら、ぜひご確認ください。



いいなと思ったら応援しよう!