一枚読書 #16|闇に宿る日本的な美しさ|陰りが光を際立たせるという視点
▌SUMMARY:まとめ


右側から迫る「闇」を照らしている。
中央の椿の花は、ぼんやりと光で照らされながら、
背後に闇を羽織っている。
この「光と闇の融和」により生じた陰りが、
美しさや光そのものを際立たせる。
陰りが生じることによる「奥行き」が、
その”先”を空想させる感性を刺激する。
▌BOOK:読んだ本
『陰翳礼讃』
著者:谷崎 潤一郎
▌NOTE:気付き
▶ 陰りに目を向けてみる
「光」ではなく「陰り」を好み、
そこにある儚い美しさを愛でる。
それが、日本人が古来から育んできた
美の捉え方であり、表現方法だった。
例えば、
日本家屋の座敷や寺社仏閣の、
光が照らしきれない影の部分。
あるいは、お花見の際などには、
花そのものではなく、地面の影を。
お月見の揺れるススキ。
格子窓から差し込む日の模様。
そうした「闇」に目を向けることで、
これまでとは違う気づきや、
新しい美しさに出会えるのかもしれない。
▶ わびさびとは何か
日本には「わびさび」という概念がある。
言葉としては知っているが、どういうこと?
そう、ずっと不思議に思っていた。
Wikipediaには、こう書いてある。
わび・さび(侘《び》・寂《び》)は、慎ましく、質素なものの中に、奥深さや豊かさなど「趣」を感じる心、日本の美意識。美学の領域では、狭義に用いられて「美的性格」を規定する概念とみる場合と、広義に用いられて「理想概念」とみる場合とに大別されることもあるが、一般的に、陰性、質素で静かなものを基調とする。
結局どういうことだろう?
どうやら、「わびさび」のキーワードは、
「陰性」「深さ」「静けさ」のようだ。
例えば海外を引き合いに出すと、
私がこれまで見てきた外国の観光地は、
キラキラしていることが多かった様に感じる。
観光地そのものはそうでもなくても、
博物館や美術館に展示されているものは、
たくさんの宝石があしらわれていたり、
鮮やかに彩色されていたりする。
もちろん、これはこれで大好きだし、
それはそれは美しいと思う。
一方で、日本の芸術品には、
宝石や色の鮮やかさというよりも、
どこか落ち着いた印象がある。
本書で指摘されている様に、
気候や慣習、文化的背景の違いが、
こうした美しさの方向性の違いに
つながっているのかもしれない。
▶ 光と闇をあじわうということ
そのような考えを持ちつつ本書を読むと、
日本人が持つ特有の「美」に対する考え方が、
ストンと腑に落ちた気がする。
日本人にとっての美の本質は、
「光と闇の融和した静けさ」であり、
そして、それを五感であじわうこと
そういうことなのではないかと感じる。
光、つまり美しさそのものだけを見ず、
あえてそこから闇――
つまりその周りや余陰、奥行きに目を向ける。
そしてそれを、目だけではなく、
耳・鼻・手足といった全身を使ってあじわう。
そうすることで、
陰りによって、光=美しさが
より際立って感じられるのだと思う。
安直な例えだけど、料理をするときに、
あえて塩をひとつまみ入れることで
甘さが際立つ…みたいなことだろうか。
とにかく…闇を消して
美しさだけを見せるのではなく、
あえて闇を抱き、美しさを引き立てる。
この、美をそのまま見せない日本的感覚が、
わびさびの考え方の基になっていると思う。
▌Q&A:本書への問いかけ
WHY:なぜ日本美にとって”陰”が大切?
静けさを愛でる概念が日本にはあったから
気候的影響による住居の暗さがあったから
日照量の影響で際立たせ方の意識の違いがあったから
WHAT:西洋と違う日本美のポイントは何か?
陰り=闇を好むということ
闇を照らすのではなく、闇を抱くこと
闇のその”先”を空想させること
HOW:”陰”によりどんな変化が生まれる?
儚い美しさという概念
闇の存在により、一層光が際立つ
エッジがぼけることによる美しさの誕生
【問いかけの整理】
わびさびとは、派手さではなく「静けさや陰り」に美を見出す感覚
光だけでなく闇を含めることで、美しさはより深く際立つ
五感で陰影を味わうことで、新しい美しさに気づける
分かりやすい光ばかり求めてしまうけれど、
その陰にあるものにも、意味がある。
そう思えるだけで、少しだけ
世界の見え方がやわらぐ気がする。
自分なりの「光と闇のあじわい方」を、
ゆっくり育てていけたらいいなと思う。
ここまでお読みいただき、
本当にありがとうございました。
またいつでも見に来てくださいね。
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