一枚読書 #15|行動が彩る多様な世界|独自の世界に暮らす、生き物たちの話
▌SUMMARY:まとめ


あえて「限定した」世界を表す。
そこは「生き物の知覚に対する行動則=環世界」で
あざやかに彩られている。
環世界により得られた生存の確実性は、
自身の成長や子孫の繁栄につながっていく。
この行動則=環世界は、継承するもの以外にも、
学習や経験によって追加・更新されていく。
この生き物の個体ごとに異なる「行動則の彩り」が、
世界の豊かさを形成している。
▌BOOK:読んだ本
『生物から見た世界』
著者:ユクスキュル,クリサート
▌NOTE:気付き
「小さな虫なのに、よく生きていけるなぁ」
「どうやって周りを把握しているんだろう」
「なぜ蚊は、あんなに正確に飛べるんだろう」
そんな昔から持っていた疑問に対する、
生物学的な視点を知りたいと思い、
ふと、本書を読んでみた。
▶ 生き物はどうやって生きているのか
例えば、
・暗闇でも正確に飛び回るコウモリ
・遠くの花に一直線に飛んでいくミツバチ
・行列を崩さずに進み続けるアリ
自然の生き物を見て、
その正確無比の行動を
不思議に思ったことがある人は多いと思う。
人間でも難しそうなことを、
彼らは当たり前のようにやっている。
アリやハチの巣作り、役割分担、統率。
どれも無駄がなく、むしろ美しさすら感じる。
人間でも難しいだろうと思うことを、
簡単にやってのける。
脳がとても小さいにも関わらず。
なぜ、そんなことが可能なのか。
▶ 環世界という考え方
この本で紹介されていたのが
「環世界(Umwelt)」 という考え方だった。
環世界とは、生き物それぞれが持つ
“その生き物だけの世界の見え方”のことだ。
環世界(かんせかい、Umwelt)はヤーコプ・フォン・ユクスキュルが提唱した生物学の概念。環境世界とも訳される。
すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、それを主体として行動しているという考え。ユクスキュルによれば、普遍的な時間や空間(Umgebung、「環境」)も、動物主体にとってはそれぞれ独自の時間・空間として知覚されている。動物の行動は各動物で異なる知覚と作用の結果であり、それぞれに動物に特有の意味をもってなされる。ユクスキュルは、動物主体と客体との意味を持った相互関係を自然の「生命計画」と名づけて、これらの研究の深化を呼びかけた。
環世界の中では、
ある刺激(インプット)に対して、
対応する行動(アウトプット)が
ほぼ自動的に決まっている。
つまり、
「見えた → 判断した → 行動した」ではなく、
「見えた → すぐ動いた」となる。
これは、判断の時間を極限まで減らし、
最短で行動するための仕組み。
言い換えれば、
“生存すること”に特化した世界だ。
極端な例かもしれないが
すごく単純なプログラムみたいなものだから、
容量もさほど大きくないし、
これなら脳も圧迫しないのだろう。
人間でいうと、
脊髄反射に近いのかもしれない。
熱いものに触れたとき、
考える前に手を引っ込める。
それと同じように多くの生き物は、
「考えずに動く」ことで生き延びている。
この環世界は、
生まれつき備わっている
生得的なものだけでなく、後から学習し
更新されていく学習的なものもある。
つまり生き物は、
環世界を、受け継ぎ、学び、
そして変化させることを通して、
世界の見え方そのものを、
進化させながら生きている。
▶ 世界はひとつではない
この考え方を知ってから、
生き物の不思議な行動が
少し違って見えるようになった。
例えば、
・アリがマジックで引いた線の上をたどる
・ひよこが最初に見たものを親だと思う
・犬が同じ場所の匂いを何度も嗅ぎ続ける
どれも一見、不思議に見える。
なぜこんな行動を?と思ってしまう。
でもそれは、その生き物にとっては
“世界を正しく認識した結果の行動”
なのかもしれないし、
“生存に特化した環世界の誤動作”
なのかもしれない。
本書ではこういった不思議な行動を
「魔術的な行動」と表現していた。
そのような魔術的な行動は、
行動の豊かさよりも生存の確実性を優先した
その生き物の環世界における、
ある意味最適な反応なのだと思う。
そう考えると、
私たち人間同士の見ている世界も、
絶対的なものではないのかもしれない。
人はそれぞれ、
違う感覚で、
違う基準で、
違う意味づけをして、
違う”環世界”を持っている。
わたしたちも、同じ世界を見ているようで、
もしかすると、それぞれが少しずつ
違う世界を生きているのかもしれない。
この本は、生き物の話でありながら、
「世界の見え方とは何か」という
意外にも深い問いを投げかける一冊だった。
▌Q&A:本書への問いかけ
WHY:なぜ、環世界が確実性を増すのか?
多数の環=行動則が作用を制御するから
必要十分な環で豊かさよりも確実な行動を作っているから
自身の知覚世界と作用世界を限定しているから
WHAT:環世界のポイントは?
学習で、機能環を追加・更新できること
対象物への意味づけ=作用のトーンを与えられること
自然設計に組み込まれていること
HOW:環世界の事例はどのようなものがある?
”なじみの道”ができる
生まれてすぐに息ができる
親鳥が色の違うヒナを攻撃する
【問いかけの整理】
生き物はそれぞれ、独自の世界(環世界)で生きている
行動は考えるのではなく、生存に最適化された反応で決まる
人間の見ている世界も、絶対ではなく主観的なもの
生き物の行動を通して、
自分の見ている世界を疑ってみる。
そんな体験ができたことが、
とても大きな収穫でした。
ここまでお読みいただき、
本当にありがとうございました。
またいつでも見に来てくださいね。
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