【前編】2025年改訂 耐震診断|「あと少し評点が足りない」を救う?算定比較
2025年の建築基準法改正では、垂れ壁・腰壁といった「準耐力壁等」の評価が見直され、『2025年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法』(一般財団法人 日本建築防災協会)において、有開口壁の評価方法に改正建築基準法の方法が追加されました。
このシリーズでは、在来軸組構法の一般診断における新旧の算定方法と、実際の評点への影響を前後編で確認していきます。
【前編】算定比較 ←今回の記事
【後編】モデル検証
木造住宅の耐震診断では、「あと少し評点が足りない」という場面にしばしば出会います。
プラン変更も補強も難しく、わずかな差に悩まされるケースも少なくありません。
現場では、こうした“惜しいケース”のお話を伺うことがあり、どこか改善の余地はないだろうかと考えてきました。
耐震診断ソフト HOUSE-DOC の開発スタッフと話してみると、垂れ壁・腰壁が「評点に影響が出る可能性がある」と教えてくれました。
この点に注目し、垂れ壁・腰壁を改めて見てみることにしました。
まずは、在来軸組構法の一般診断における新基準の算定方法を整理し、従来の方法とどこが異なるのかを確認していきます。
今回は、新旧の算定式を比較しながら、どの部分が評点の変化につながり得るのかを見ていきます。
垂れ壁・腰壁の評価が変わると、評点が変わる
耐震診断ソフト HOUSE-DOC の一般診断では、各階・各方向の評点が算出され、それをもとに判定が行われます。

この評点は次の式で求められます。

edQu:当該階、当該方向の保有する耐力 (kN)
Qr :当該階の必要耐力 (kN)
垂れ壁・腰壁の評価の違いで最も影響を受けるのは、この 保有する耐力(edQu) です。

edQu:当該階、当該方向の保有する耐力 (kN)
Qu :壁の耐力(kN)
eKfl :耐力要素の配置等による低減係数
dK :劣化度による低減係数
ここで使われる壁の耐力(Qu)は、無開口壁と有開口壁の耐力の合算です。つまり、有開口壁の評価方法が変わると、評点にも影響が出るということになります。
従来の算定方法(在来軸組構法・一般診断)
従来の有開口壁の耐力(Qwo)は、”開口の種類”によって一律に壁基準耐力を決める方式でした。
窓型:0.6(kN/m)
掃き出し型:0.3(kN/m)
垂れ壁や腰壁の高さは考慮されず、開口の種類と有開口壁長だけで耐力が決まる。そんなシンプルな仕組みです。

Qwo:有開口壁の耐力
Fw:窓型 0.6 、掃き出し型 0.3 (kN/m)
L :開口壁長(m)

実務では「もう少し評価できそうなのに…」と感じる場面もあったのではないでしょうか。
新基準の算定方法(在来軸組構法・一般診断)
2025年改訂版では、有開口壁(垂れ壁・腰壁)の評価方法が大きく変わりました。従来のように開口の種類だけで決める方法とは別に、
材料の強さ(壁基準耐力)
開口の形状(面材高さ・横架材間内法寸法の比率)
を考慮する方法が追加されました。
この変更を見たとき、評点はどれほど変わるのだろう、と確かめたくなりました。
Step1. 有開口壁の「壁基準耐力(Fwo)」を求める式

Fwo:有開口壁の壁基準耐力
Fw :垂れ壁・腰壁の壁基準耐力
(構造用合板なら5.2(kN/m)、石膏ボードなら1.1(kN/m)など)
0.6 :垂れ壁・腰壁としての低減係数
H1+H2:開口部上下にある面材の高さの合計(m)
H :横架材間内法寸法(m)

従来のように「窓型か掃き出しか」だけで決まるのではなく、面材の強さを評価できるようになった点も大きな変化です。
Step2.「有開口壁の耐力(Qwo)」を求める式

Qwo:有開口壁の耐力
Fwo :ステップ1で求めた有開口壁の壁基準耐力
L :開口壁長(m)
Kj :柱接合部による低減係数
新・旧の算定方法を比較する

新旧の算定方法を表で整理すると、有開口壁の面材と高さを考慮する算定式の追加が大きな違いであることが分かります。
この違いが、実際の評点にどの程度影響するのか。
後編では、具体的な建物モデルを使って検証していきます。
実際のプランに当てはめると、評点はどれくらい変わるのか、気になるところです。
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耐震診断ソフト HOUSE-DOC では、2025年改訂版に対応すべく次バージョンを開発中です。
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