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【後編】2025年改訂 耐震診断|「あと少し評点が足りない」を救う?モデル検証

2025年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法』(一般財団法人 日本建築防災協会)では、垂れ壁・腰壁といった有開口壁の評価方法が見直されました。
在来軸組構法の一般診断を例にして、前編では、新旧算定式の違いを整理しました。後編では、その算定式を建物モデルに当てはめ、評点がどの程度変わるのかを確かめていきます。
【前編】算定比較
【後編】モデル検証 ←今回の記事

今回は、耐震診断ソフト HOUSE-DOC を用いて、実際の在来軸組構法の一般診断に近い形で検証していきます。

一般診断に用いる建物モデルは、南面開口の典型例を選びました。
ここでは、2F X方向の一般診断における評点を、新旧基準で比較します。
以下の伏図をもとに、手計算で確認していきます。

伏図・3Dモデルウィンドウ(HOUSE-DOC)
一般診断する建物モデルを入力した、伏図と3Dモデルです。
2F伏図ウィンドウ(HOUSE-DOC)
2Fの伏図を見ながら手計算していきます。

1.従来の方法で計算してみる

まずは、HOUSE-DOC Ver.7 による従来の一般診断の計算書を確認します。旧基準では、垂れ壁・腰壁は形状に関わらず一律の値で評価されます。

  • 窓型:0.6(kN/m)

  • 掃き出し型:0.3(kN/m)

有開口壁の耐力Qe(計算書)
開口部が窓型/掃き出し型によって基準耐力が決められています

「位置」は、出力項目「1/4 範囲」で確認することができます。

左図:2F 1/4範囲(計算書)、右図:2F 伏図
左図:1/4範囲、右図:伏図(HOUSE-DOC 画面)

従来の基準で算出した 2F X方向 の評点は 0.640
判定は「倒壊する可能性が高い」という、厳しい結果となります。

上部構造の評価(計算書)

2.2025年改訂版の算定式を適用してみる

ここからは、新基準の算定方法を用いて、手計算で評点を求めます。

部位ごとに算定式を選択できる

今回のモデルでは、「位置:a」と「位置:b」の垂れ壁・腰壁は、有開口壁の面材と高さによる算定の基準を満たします。

垂れ壁・腰壁の基準(有開口壁の面材と高さによる算定)
・配置:
両側に耐力評価できる無開口壁がある
・壁基準耐力:垂れ壁・腰壁の壁基準耐力が、無開口壁の壁基準耐力以下である
・面材の高さ:36cm以上

左図:2F 1/4範囲(計算書)、右図:2F 伏図
部位ごとに算定式を選択します

一方、旧基準で有開口壁として扱えていた「位置:中央」の垂れ壁は、新しい算定の条件を満たしません。こうした場合は、有開口壁長による算定方法を用いることにします。

有開口壁の耐力Qwoは、①有開口壁の面材と高さによる算定方法または、②有開口壁長による算定方法を用いて求めるものとし、有開口壁の部位毎に算定方法を選択してもよい。

『2025年改訂版木造住宅の耐震診断と補強方法基準と解説編』 p.59
(一般財団法人 日本建築防災協会/国土交通大臣指定耐震改修支援センター)

それでは、それぞれの位置で適用する算定式が決まりましたので、計算していきましょう。

Step1. 有開口壁の壁基準耐力(Fwo)を求める

算定式は前編の「Step1」を参照
「位置:a」「位置:b」の壁基準耐力を求めます。

位置a:Fwo=1.171、位置b:Fwo=0.482

Step2.有開口壁の耐力(Qe)に換算する

(算定式は前編の「Step2」を参照)
各位置の耐力を合算して 2F X方向 の有開口壁の耐力(Qe)を求めます。

2F X方向 Qe=8.115

「位置:中央」は、開口幅が 3m を超える箇所を 3m として計算します。

Step3.壁の耐力(Qu)を算定する

無開口壁と有開口壁の耐力を合算します。

2F X方向 Qu=24.217

x無開口壁の耐力(16.102)は計算書の値を使用しています。

2F X方向のQw=16.102

Step4.保有する耐力(edQu)を算定する

(算定式は前編を参照)

edQu20.756

edQu = 24.217 ✕ 1.0000 ✕ 0.8571 ≒ 20.756

配置低減係数(1.0000)と劣化低減係数(0.8571)は計算書の値を使用しています。

2F X方向 eKfl=1.0000、dK=0.8571

Step5.上部構造評点を算定する

(算定式は前編を参照)

評点 = 0.726

評点 = 20.756 / 28.589 ≒ 0.726

必要耐力( 28.589 ) は計算書の値を使用しています。 

2F Qr=28.589

評点は【0.640 → 0.726】へ向上!

評点が 0.726 となり、判定も、「倒壊の可能性が高い」から「倒壊する可能性がある」へと改善が見られました。

まとめ:「開口部の形状を評価」することで見えてきたもの

それぞれの位置の耐力(旧基準 → 新基準)を比較します。
位置:a(窓型)      2.184 → 4.037(kN)
位置:中央(掃き出し型)1.446 → 1.446(kN)
位置:b(掃き出し型)   1.638 → 2.632(kN)

面材と高さによる算定基準を満たす位置では、1.6 ~ 1.8倍ほど向上しました。新基準によって垂れ壁・腰壁の「効果」がより正確に捉えられるようになったと言えるのではないでしょうか。

なお、新基準における注意点としては、部位ごとに算定式を選択(併用)できる点だと思います。
今回の検証を行う当初、新基準による有開口壁の算定は、面材と高さによる算定式だけだと思い込んでいました。それに気づいた開発メンバーが、「旧基準の有開口壁長による算定も、部位ごとに選択できる」と教えてくれて、正しく計算し直すことができました。改めて、基準を理解することの難しさを感じることとなりました。

以上で、「2025年改訂版・有開口壁の効果」の検証を終わります。
いかがでしたでしょうか。
診断結果があと少し届かないときには、有開口壁の評価を見直してみると、改善の糸口が見えるかもしれません。

お知らせ

手計算では煩雑な新基準の算定式ですが、木造耐震診断ソフト HOUSE-DOC では、次バージョンで対応予定です。
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