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文化摩擦を設計で解く ─ 銀座マナーブック制作記録②

仕事場の記憶 Vol.15—「両者が困っている」という構図は、多くの摩擦現場に共通している。


このシリーズは、私が長年立ち続けてきた“現場”の記憶です。
変化の激しい時代の中で、自分がこれまでどんな現場に立ち、どんな熱狂を作ってきた人間なのか。その足跡を具体的に残すために、この「仕事場の記憶」を綴っています。
光と音の温度、人の表情、空気の重さ――言葉では残らないものを記録しています。


まず、聞くことから始めた


分解すると決めた以上、
まずやるべきことは決まっていた。
想像ではなく、事実を集めることだ。

いきなり冊子の構成を考えたわけではない。
最初にやったのは、聞くことだった。

銀座側の店頭スタッフ、百貨店、個人店。
そして、実際に来街している中国・台湾の方々。

机の上で想像するのではなく、
現場の声を集めるところから始めた。


銀座側の声


ヒアリングを始めると、
困りごとはすぐに溢れ出てきた。

「中国語ができるスタッフがいない」
「接客中に横入りされる」
「張り紙を見ない」
「順番を守らない」
「トイレの非常ベルを押してしまう」
「通路でスーツケースを広げる」

(実際のヒアリング記録より/2015年7月)

飲食店からは、さらに具体的な声があった。

「連絡なしのキャンセル」
「1人1コースではなくシェアされる」
「チャージ制度の認識違い」
「勘定の説明が難しい」

(実際のヒアリング記録より/2015年7月)

ここで重要なのは、
“怒り”よりも“疲労”が強かったことだ。

売上は上がっている。
しかし、日本人客が減っているという危機感もある。

(実際のヒアリング記録より/2015年7月)

単純な排除ではない。
受け入れたい。しかし摩擦がある。

この温度が、銀座だった。


観光客側の声


一方で、中国や台湾人へのヒアリングでは、
まったく違う景色が見えた。

若い世代はマナーを理解している。
表示やアイコンを見れば対応できる。
問題は世代差と情報差だった。

(在日中国人・台湾人 聞き取り記録より/2015年7月 )

さらに、

「トイレだけ借りたい → 分からない・時間がないから」
「並ばない → 時間がないから」
「タバコを吸う → 喫煙所が分からないから」

(ガイド聞き取り記録より/2015年7月 )

つまり、多くは“文化衝突”というより
情報不足と時間不足だった。


そして気づいたこと


銀座側は困っている。
観光客側も、実は困っている。

問題は「誰が悪いか」ではない。
問題は、情報が届いていないことだった。

ここで、次に進める。
では、どう整理するか。

国で分類するのか。
世代で分けるのか。
善悪で分けるのか。

私は、別の軸を選んだ。
分解する前に、まず聞く。
それが、この仕事の出発点だった。

聞くことは、感情を冷ます。
だが、それだけでは足りない。
次に必要だったのは、構造だった。

次章③へ


文化摩擦は放置すれば分断になる。
設計すれば、資産になる。

画や台本に限らず、
構造や判断軸を整理する必要がある現場があれば、
プロフィール欄の記事をご覧ください。


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この文章の背景にある、仕事と記憶の出発点については、
こちらにまとめています。

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浅川幸三 | クリエイティブプロデューサー 共感でも、違和感でも。 何かが残ったなら、それで本望です。 サポートは次の一行のために。