文化摩擦を設計で解く ─ 銀座マナーブック制作記録②
仕事場の記憶 Vol.15—「両者が困っている」という構図は、多くの摩擦現場に共通している。
このシリーズは、私が長年立ち続けてきた“現場”の記憶です。
変化の激しい時代の中で、自分がこれまでどんな現場に立ち、どんな熱狂を作ってきた人間なのか。その足跡を具体的に残すために、この「仕事場の記憶」を綴っています。
光と音の温度、人の表情、空気の重さ――言葉では残らないものを記録しています。
まず、聞くことから始めた
分解すると決めた以上、
まずやるべきことは決まっていた。
想像ではなく、事実を集めることだ。
いきなり冊子の構成を考えたわけではない。
最初にやったのは、聞くことだった。
銀座側の店頭スタッフ、百貨店、個人店。
そして、実際に来街している中国・台湾の方々。
机の上で想像するのではなく、
現場の声を集めるところから始めた。
銀座側の声
ヒアリングを始めると、
困りごとはすぐに溢れ出てきた。
「中国語ができるスタッフがいない」
「接客中に横入りされる」
「張り紙を見ない」
「順番を守らない」
「トイレの非常ベルを押してしまう」
「通路でスーツケースを広げる」
飲食店からは、さらに具体的な声があった。
「連絡なしのキャンセル」
「1人1コースではなくシェアされる」
「チャージ制度の認識違い」
「勘定の説明が難しい」
ここで重要なのは、
“怒り”よりも“疲労”が強かったことだ。
売上は上がっている。
しかし、日本人客が減っているという危機感もある。
単純な排除ではない。
受け入れたい。しかし摩擦がある。
この温度が、銀座だった。
観光客側の声
一方で、中国や台湾人へのヒアリングでは、
まったく違う景色が見えた。
若い世代はマナーを理解している。
表示やアイコンを見れば対応できる。
問題は世代差と情報差だった。
さらに、
「トイレだけ借りたい → 分からない・時間がないから」
「並ばない → 時間がないから」
「タバコを吸う → 喫煙所が分からないから」
つまり、多くは“文化衝突”というより
情報不足と時間不足だった。
そして気づいたこと
銀座側は困っている。
観光客側も、実は困っている。
問題は「誰が悪いか」ではない。
問題は、情報が届いていないことだった。
ここで、次に進める。
では、どう整理するか。
国で分類するのか。
世代で分けるのか。
善悪で分けるのか。
私は、別の軸を選んだ。
分解する前に、まず聞く。
それが、この仕事の出発点だった。
聞くことは、感情を冷ます。
だが、それだけでは足りない。
次に必要だったのは、構造だった。
文化摩擦は放置すれば分断になる。
設計すれば、資産になる。
画や台本に限らず、
構造や判断軸を整理する必要がある現場があれば、
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この文章の背景にある、仕事と記憶の出発点については、
こちらにまとめています。
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