文化摩擦を設計で解く ─ 銀座マナーブック制作記録③
仕事場の記憶 Vol.16—問題を“国”ではなく“行為”で分解するという設計。
このシリーズは、私が長年立ち続けてきた“現場”の記憶です。
変化の激しい時代の中で、自分がこれまでどんな現場に立ち、どんな熱狂を作ってきた人間なのか。その足跡を具体的に残すために、この「仕事場の記憶」を綴っています。
光と音の温度、人の表情、空気の重さ――言葉では残らないものを記録しています。
問題を“国”ではなく“行為”で分解する
聞き取りを終えた段階で、声は十分に集まっていた。
だが、声のままでは設計にならない。
次に必要だったのは、分類だった。
最初に決めたのは、
国籍で整理しないということだった。
「中国人の問題」「台湾人の問題」という整理は、
分かりやすい。だが、粗い。
同じ中国語圏でも世代差は大きい。
個人旅行者と団体客では行動が違う。
訪問回数によっても理解度は異なる。
国で分類すると境界が生まれる。
行為で分類すると接点が見える。
私たちは後者を選んだ。
ヒアリング内容を、行為単位に分解した。
・トイレの使用
・喫煙
・写真撮影
・順番
・店内での飲食
・決済方法
・免税手続き
・言語の壁
これらはすべて、国籍ではなく“場面”で発生していた。
問題は人ではなく、接点だった。
さらに、各行為をもう一段整理する。
それは、
情報不足によるものか
文化差によるものか
業務設計の不備か
意図的な違反か
この切り分けである。
例えば、トイレの誤操作。
これは多くの場合、情報不足だった。
表示の理解不足、ボタンの意味の誤解。
一方、横入り問題は単純ではない。
優先順位の文化差、急ぎの事情、集団心理。
単純な善悪で割り切れない。
行為ごとに、背景が違う。
だからこそ、行為で分解する必要があった。
問題は“マナー”ではなく接点設計
ここでようやく、問題は“マナー”から離れる。
それは、接点設計の問題になる。
どこで誤解が生まれるのか。
どこで衝突が起きるのか。
どの接点に情報を置けば摩擦は減るのか。
分解とは、対立を冷却し、
設計可能な形に変える作業である。
だが、分解しただけでは足りない。
すべての問題に同じ力をかけることはできない。
次に必要だったのは、優先順位だった。
文化摩擦は放置すれば分断になる。
設計すれば、資産になる。
企画や台本に限らず、
構造や判断軸を整理する必要がある現場があれば、
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