10.アツコの街のアトリエ
朝の森。
まだ薄暗い木漏れ日の中で、アツコは枝や落ち葉を手に取り、形を整えていた。
手際はよく、迷いはない。
素材を選び、形を整えるその姿は、森の住人たちにとって頼もしいものだ。
朝の静けさに溶け込む彼女の作業は、ほんのひととき、森の時間をやわらかくする。
◆
昼下がり、アツコは街のアトリエにいた。
静かな路地の奥、小さな店の中。
木の香りと布の匂いが混ざる空間に、
仕上げ途中のものがいくつも並んでいる。
アツコはカウンターの向こうで品物を並べながら、訪れる街の人たちに一つずつ丁寧に説明していく。
「こちらは、森で集めた素材を使って手縫いしたポーチです。丈夫で、使うほどに味が出ますよ」
小さな子どもが興味深げに手に取ると、
アツコはやわらかく微笑み、使い方を教えた。
「こうやって紐を結ぶと、中身が落ちにくいの」
子どもは嬉しそうに頷き、隣で見ていた母親も同じように微笑む。
その横で、通りすがりの客が足を止めた。
「森で採れた素材……ですか。
いい組み合わせですね。仕立ても丁寧だ」
アツコは少し照れたように笑う。
「ありがとうございます。森での暮らしの中で見つけた、小さな工夫を形にしているんです」
作業台の上で、アツコは小さなパーツを手に取り、ポーチに取り付ける。
同じ動きで、また次のひとつを仕上げていく。
棚に並ぶ小さなものを見ていると、
森での時間が、そのまま残っている気がした。

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