🦋03.あの日の約束の続き
森の小道に、やわらかな光が落ちていた。
前に来たときより、少しだけ足取りが軽い。
(……外で会うのは、初めてですわね)
お嬢様は、胸の前で小さく息を整えた。
前回は、部屋に来てもらった。
散らかったままの部屋で、紅茶を淹れて、クッキーをつまんで。それだけのことなのに、胸の奥に、あたたかい余韻が残った。
今日は、その続き。
「おーい!」
先に見つけたのは、メイの方だった。
手を振りながら、軽やかに近づいてくる。
「待った? ごめんね、ちょっと寄り道してて」
「い、いえ。わたくしも、今来たところですわ」
並んで歩き出すと、森の道は自然と街へつながっていく。木立の間を抜けるたび、空気が少しずつ変わる。
「ね、今日はどこ行く?」
「メイさんが、前に言っていた……あの、お店に……」
「あ、あそこね。いいよ、じゃあそこ行こ」
メイが少し前を歩く。
振り返りながら、窓辺を指さす。
「ここさ、パンもあるし、甘いのもあるんだよ」
「まあ……素敵ですわね」
店先に並ぶ色とりどりの焼き菓子。
前に部屋で見た、あの可愛いクッキーを思い出す。
(あのときの“今度”が、今日なのね)

買い物袋を提げて、また歩く。
今度は、さっきより少し近い距離で。
「ねえ」
メイが、何気ない調子で言った。
「なんかさ、こうやって会うの不思議だよね」
お嬢様は一瞬、言葉を探すように視線を落とした。
「不思議……と言うのかしら?
むしろ、とても楽しいですわ……」
「ならよかった」
その一言が、自然に胸に落ちた。
石畳の道を、二人で並んで進む。
カレンは、少しずつ外の世界に馴染みはじめていた。
この森をもう少し歩く⬇︎
👒カレンの屋敷時代
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