🍳03.お嬢様はケチャップの前で絶望する
朝目を覚ますと、窓から入る光がやけに明るかった。
「今日は洗濯日和ですわね」
そう言いながら、朝食の支度をしていたその時だった。お気に入りのワンピースに、赤いしぶきが一直線に飛んだ。
「キャーッ! なんてことー!」
ドアがバンッと開き、
テキパキが飛び込んでくる。
「お嬢様!どうなさいま……あら」
一歩遅れて、シレットが状況を見る。
「……ケチャップですね」
うつむくカレンを見て、
テキパキはやさしく声をかけた。
「大丈夫よ、泣かないで。こういう時はね、
汚れに合った落とし方があるんです」
シレットが静かに続ける。
「油と色素、二段構え。
厄介……ですが、対応可能」
シレットは食器用洗剤を手に取った。
布にやさしくなじませ、つまみ洗い。
「こすらず、裏から流します」
水を流すと、赤がじわりとにじむ。
テキパキが言う。
「順番が逆だと、定着してしまうんです」
最後に、酸素系漂白剤。
ぬるま湯で、説明書どおりに。
ほんの数分後。
赤いシミは、ほとんど消えていた。
「うそ……消えた……!」
カレンは目を見開く。
「……ちゃんと理屈があるのね」
「はい。汚れは感情ではなく、物質です」
🧺 テキパキ&シレットの一言メモ

シミ抜きの三原則
①早く対処する
②裏から押し出す
③強くこすらない
ケチャップのような汚れは
油+色素の混合タイプ。
基本の手順は
1. 常温〜ぬるま湯で裏から押し出す
2. 食器用洗剤でやさしくつまみ洗い
3. 必要なら酸素系漂白剤
この順番を守れば、
ほとんどのシミは落とせます。
テキパキ
「シミは“状態の変化”。時間との勝負です!」
シレット
「洗濯は理屈。分類すれば恐るるに足らず」

翌朝。乾いたワンピースを見つめながら、ふと思い出す。
クローゼットからブラウスを取り出すと、洗面器にぬるま湯を溜めた。
「ええと、裏から……。漂白の説明書は……」
シミは、ゆっくり薄くなる。
「……わたくしにも、できた」
屋敷では、誰かがやってくれていた。
今は、自分の手で少しずつ覚えていく。
「洗濯は……わかれば怖くありませんわね」
服の白さが、ほんの少しだけ誇らしく見えた。
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