燕
緑の上のいくつもの足跡。
誰よりも大きく、
芝が折れるほどだけど、
ステップを踏み、歌い踊る君を
みんなは愛した。
たとえ春の風が吹こうとも、
夏の強い日差しが降ろうとも、
秋風が寂しさを募らせても、
君は空に向かって、
帽子を投げた。
この場所が好きだと、
いつか遠くへ、
行かなければならないことを、
わかっていたんだ。
でもみんなのそばにいたかった。
だけど、
足は重たくなっていった。
大好きな緑が、
うすくなっていくことに、
何かを感じていたのかもしれない。
車から投げだしたいつも浮かせていた足が、
引きずるほどなのに、
僕らは気づけなかった。
でもそれが望み。
疲れているんじゃない。
そんな姿を見せちゃいけない…、
君はそう思っていた。
緑の上で、
歌い、踊り、
大きな足跡をつけて、
愛するみんなや仲間の笑顔を、
もう少しだけ。
そんな願いがあったとわかる。
だけど君の時計は止まり始めていた。
せめてみんなの前でおどける姿を、
いつまでも覚えていてほしかったんだ。
とうとうその時が来た。
さよならは言えない君だから、
黙っていってしまった。
空に投げていた帽子は置かれていた。
だけど、
みんなとおそろいの
背中にある番号は大事に抱えて、
そして、飛んだ。
君は空から、
自分がつけた大きな足跡を。
愛したみんなを。
きっと見ている。
さよならは聞こえない。
スケッチブックに、
そんな文字はないんだから。
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