8秒間の∞~奇跡の流れ星~
ことりは、3年間の片想いを経て、一樹との交際が始まった。
一樹は、8という数字が好きだった。
「∞みたいやろ?」
と、よく笑っていた。
だから付き合った記念日も、
勝手に8月8日に決められた。
普段の二人は、よく揉める。ズレる。喧嘩をする。
そしてまた仲直りをして燃え上がる。
まさに『ジェットコースター型カップル』なのだ。
そして、この日は、初めてのお泊まり旅行。
「8月8日、空けといて!
水着あるか? 泊まるからね!」
サプライズが好きな一樹は、いつも詳しくは教えてくれない。
でも、記念日。
ことりは、少し期待をし、ワクワクしていた。
しかし、太ってしまって、着れる水着がなかったので、慌てて買いに行った。
お泊まりセットの準備もした。
そして、旅行の1週間前、
またしても、『ジェットコースター急降下』
怒った一樹は
「もう別れる。
旅行キャンセルしとくから。」 と。
着々と準備をし、楽しみにしていることりも、
「分かった。」 と強がった。
しかし翌日
「ことりちゃん…。
やっぱり、キャンセル料もったいないなぁ…。
とりあえず、旅行行ってから別れよか🥺」
ことりは思った。
なぜ、別れる前提なのか…。
不思議な人だな…。
そして、前日。
台風の為、土砂降りの大雨。
行き先は『海』とだけ、聞いている。
2人は必死で天気予報と睨めっこ。
しかし、もうキャンセルはきかない。
とりあえず、向かう事になり、
当日の朝、ことりは車の中で食べる、おにぎりを握った。
「初めての旅行。
雨でも台風でも、なんでも嬉しい😍」
いつものように
ことりは助手席から
「一樹~!今日はどこ行くのかなぁ?」
「知ら~ん😗」
動画を撮りながら、出発した。
そして、行き着いたのは
日本海の『夕日ヶ浦』の海岸だった。
ここは、一樹が子供の頃から、家族で来ている場所だった。
二人とも昔から、日本海でキャンプをして育った。
海の匂いが好き。
夕日が好き。
波の音が好き。
「あっ。同じや。」
そんな小さな共通点が、
ことりには、とても嬉しかった。
そして、駐車場に車を停めると、次第に雨が弱くなり、晴れ間が見えてきた。
天気予報では、警報になっている。
そこで、一樹が
「おっ!これはいけるかも!
買い物行くで!」
と、海鮮市場に行き、ことりの大好きな、
サザエやホタテ、エビにイカにアワビまで買った。
海岸に戻ると、台風どころか、快晴。
「やっぱり、私たちが揃うと宇宙まで味方してくれる。」
2人は、その奇跡に本気で感動した。
そして、沢山の荷物を下ろす。
タープを立て、椅子に小さなテーブル。そしてBBQセット。
別れると言いながら、このサプライズはズルい。
ほんとに分からない人だ。
綺麗な海岸でBBQ。
ゆったりとした、贅沢な時間。
ことりはしみじみ感じた。
それは、今までずっと、子供や孫がいる中でのキャンプだったので、常に神経を尖らせていたからだ。
お腹もいっぱいになり、
海岸にあるブランコに乗って、写真や動画を撮りながら、いい大人がこれ以上ないほどはしゃぎ回った。
新品の水着に着替え、現地のスーパーで買った高すぎる浮き輪を抱えて、波打ち際でチャプチャプと戯れる。周りから見ればただの50代の男女だが、あの時の私たちは間違いなく、恋をしたばかりの少年少女だった。
そして、海を満喫し、一樹が時計を見て
「そろそろ行こうか!」
と、予約してくれていたホテルへ向かった。
なんと、船の形にした建物。
2階の1番前の部屋。【海景・船首潮見台付】しかも露天風呂まであった。
お風呂に入り、涼んでいると
「ことりちゃん、そろそろやで。おいで。」
「何が?」
「日の入り」
「また時計見てる…。」
この人が時間を気にするときは、必ず何かが起こる。

慌ててデッキに出ると、タイタニックの名シーンのような船の先端。
ことりは当然のように、両手を横に広げて立った。
「タイタニックしよ~!」
一樹は照れながら後ろから手をまわした。
そして、幻想的な丹後の夕焼け。
静かに夕日が沈んでいくのを、2人で眺めた。
「一樹ありがとう。だから、時間見てたんやね。」
ことりは感極まった、涙がポロリとこぼれた。
温泉の大浴場。その露天風呂から観る景色がまた、壮大で感動。
その後、個室での贅沢な夕食。
ワインを飲みながら、順番に出てくる、料理に感動することり。
「一樹、ほんまにありがとう。
人生でこんな日がくると思わんかった。」
「まぁ、たまには贅沢もいいかな。記念日やからね。」
そして、2人は夜の海岸を散歩した。
星が煌めく夜空を眺めていたそのとき、

「あっ!流れ星やー!」と、ことりが指をさした。
その声を聞いた一樹が、慌てて空を見上げた。
「あ、ほんまやー!綺麗やなぁ。」
このやり取りをしている間も、その流れ星は消えなかった。
8秒間の、長い長い流れ星。
「えええええ!
こんな事ある?」
「凄くない?
やっぱり奇跡が起きたね。」
と2人は、見つめ合い、目をうるうるさせながら、言った。
「運命だね。」
二人とも、それ以上何も言わなかった。
その言葉だけで十分だった。
願い事なんて、
思い浮かばなかった。
だって、
目の前に、
願いそのものがいたから。
そうして、幸せな旅行が終わった。
あの日、
8秒間、空を流れ続けた、流れ星。
翌日には、
家の近くで、ふたつに分かれた、長い流れ星を見た。
あんな奇跡を、
一緒に見上げられた人は、
人生で、きっと一人だけ。
私たちは、その日。
8秒間の∞を見た。

だから一樹。
「最後の旅行」は、キャンセルということでお願いします。笑
【他の作品もよろしければ🥰🌸】
(感動シリーズをまとめてみました💞)
