生きる選択・食の選択を自覚しているか|面白すぎた本紹介
生まれて初めて死を覚悟した。
これは本の冒頭である。
"みかんとひよどり (角川文庫)" by 近藤 史恵
遭難と出会い
この本は、死にかけている状況から始まる。
山で犬と遭難しかけているのだ。
遭難しかけているとき、ある猟師と出会い、猟でとった肉をもらう。
主人公は、フランスで修業して日本でレストランを転々としている。
そこで、ジビエ好きなオーナーに見つけて貰い、そこでシェフをしている。
だが、店には客が来ない。
黒字の月の方が少なくなっている。
私たちは食を選択している
生き方の選択。
食の選択。
私たちは選択している。
・スーパーで肉を買う。
・猟師から肉を買う。何が違うのか、
山には動物がいる。
それらの動物の一部は、増えすぎて殺処分されたり、
人里に出てきて殺処分されたりする。
それらの動物は命を失うだけで、
ありがたがれることはない。
ただ捨てられる。
猟師はどうか。
命をいただき、皮、肉、内臓もいただく。
直接手を下すのは残酷だという人もいる。
一方でスーパーで肉を買っている間に、何匹の動物が殺処分されているか。
一日に捕獲される動物は2984頭
年間捕獲数(頭)
イノシシ 555,800
ニホンジカ 526,100
クマ類 7,200一日2984頭捕獲されている。
*犬猫は含めていない。
捕獲数及び被害等の状況 || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省]
2026/01/16 参照
上の数字は殺処分とは違う数字である。
だが、少なくとも人間に捕獲されている動物が
これほど多いということの指標にはなる。
私たちの生き方の選択
レストランのオーナーはバイセクシャルを選択している。
猟師は、生き物の命を直接いただくことを選択している。
主人公は悩む。レストランの売れ行きが悪いことをどうするか。自分の料理は心を動かすかどうか。
生き方についても悩んでいる。いろんな生き方を選択している人と会い、選択を知り、また悩む。
地産地消、フードマイレージ、殺処分
聞いたことはあるが、大して意識していない。
現実味を感じるのが難しい問題である。
この本は、これらの問題と選択という大きなテーマをフランス料理という食文化でつなぎ合わせる。
つなぐだけではなく、それらを熟成させている。
すごく面白い。
そして、すごくおいしそう。
小説は読者にかける負担がすごい
小説を読むというのは読者にとても負担をかける。
次に何が続くかわからない文字列を、数時間かけて対峙する。集中力もいるし、それだけの時間を作ることも必要。
読者は常に、本をを読み続けるか、やめるかという判断をしている。
この負担があるのだが、
だんだん明らかになっていく状況、
過去の出来事、
対人関係、
が、気になって仕方がない。
読む負担なんかどうでもいい、
そんなこと考える暇もないくらい目が文字を次の語を求めている。
近藤さんの本は何かを含んでいる。
優しくしっとりとしていて、
かつ面白い。
ぜひ読んでみてほしい。
あとがき
私は、近藤さんの名前に見覚えがあると思っていた。
『ときどき旅に出るカフェ』という本を高校の時に読んだことがあった。
とてもあたたかく、しっとりしている独特の雰囲気の本で、
料理もとてもおいしそう。
ついつい一日で読み切ってしまった。
近藤さんの魅力は、
しっとりとしてあたたかいが、
大きなメッセージも含まれている点であると思う。
読んでいて、メッセージに気付き、
自然に日常生活とつながり問いかけの答えを考えている。
このような著者を私は他に知らない。
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
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