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広瀬AI: 「NVDAキラー」と呼ばれた3社がいまどこにいるか

広瀬隆雄氏の元記事はこちら → https://note.com/hirosetakao/n/n77d60d7a382d

「NVDAキラー」と呼ばれた会社は、過去5年で3社いました。1社はNVDAに吸収され、1社はソフトバンクに救済され、1社は買収論を退けて再起の途中です。セレブラスもS-1を出してロードショーが始まりましたが、目論見書を1枚めくると別の景色が見えてきます。

📌今日のポイント

  • 2025年売上5.1億ドルの86%は、UAE関連2社からの売上です。米国売上は前年から34%減り、EMEA(実態UAE)が42倍に膨張しています

  • 「黒字2.38億ドル」の正体は、優先株購入義務消滅で出た会計上の評価益3.63億ドル(約569億円)です。これを除いた本業は純損失7,574万ドル・営業CFもマイナスでした

  • OpenAIとの200億ドル超(約3.13兆円)契約には、10億ドルの借入・タダ同然の株式取得権・解約条項が一体で紐付いています

売上の地域別構成 ─ 米国34%減・EMEA大幅増加

■ 過去5年の「NVDAキラー」候補3社が、いまどこにいるか

セレブラスの位置を測るには、同じ「NVDAキラー」と呼ばれた会社の現在地を見るのがいちばん早いです。

Groqは2025年12月24日、NVDAが200億ドル(約3.1兆円)で技術チームと非排他的なinference技術ライセンスを取り込みました。創業者Jonathan Ross氏らもNVDAに合流。「インファレンスでGPUに勝てる」と最も声高に語っていた会社が、勝つはずだったNVDAにライセンスを売って人材ごと吸い込まれた形です。

Graphcoreは英国発のIPU(知能処理装置)で2020年頃に最も期待されたNVDAキラーでした。年2億ドル(約313億円)の赤字を出し続け、2024年7月にソフトバンクが約6億ドル(約940億円、非公式)で買収。設立から8年で独立断念、系列入りを選んでいます。

SambaNovaは2026年2月にSeries E 3億5000万ドル(約548億円)を実施、Vista Equity・Cambium共同主導で最新チップSN50を投入しました。Intelは一時16億ドルでの買収を検討したものの進まず、Intel Capitalは9%所有の戦略投資家としてラウンドに参加。買収にはならなかったものの、独立を保つための調達ラウンドが続いている事実は変わりません。

3社に共通するのは、技術が悪かったから消えた、ではない点です。理由は、NVDAが半導体ではなくCUDAというソフトウェア層で囲い込んでいるから。AI研究者の論文91%(2024年集計、Air Street Press)はNVDAのGPU上で書かれ、PyTorch・TensorFlow・JAXのチューニングはCUDA前提で蓄積されてきました。新しいチップが速くても、エコシステムの引っ越し費用が高すぎて、スタートアップは大型契約を継続的に取れません。本家記事が触れた「ウエハースケール統合」は技術の話、CUDAの壁は商習慣の話です。両方を越えないと「キラー」にはなれません。

■ S-1原本で本家記事が触れていない3点

S-1/A原本(SEC EDGAR Accession No. 0001628280-26-029503)を開くと、本家記事の数字の中身が別の景色になります。

1つは「黒字」の正体です。GAAP純利益2.38億ドル(約373億円)には、Forward Contract Liability extinguishment gain(優先株購入義務の消滅益)3.63億ドル(約569億円)が含まれます。2025年4月15日に投資家がSeries F-1優先株のオプションを行使しなかったため、それまで負債計上していた金額が一気に利益に振り替わった一時要因です。2024年は逆方向の評価損4.01億ドル(約629億円)が発生しており、大赤字4.82億ドルの主因も同じ項目でした。会計上の特殊要因を除いたNon-GAAP純損失は7,574万ドル(約119億円)、営業活動キャッシュフローは1,005万ドル(約16億円)のマイナス。本業はまだ赤字、というのが目論見書側の答え合わせです。

2つは顧客集中の徹底ぶりです。注記5の重要顧客欄にCustomer A(MBZUAI、ムハンマド・ビン・ザイード人工知能大学)62%、Customer B(G42、アブダビ拠点のテクノロジーグループ)24%と並び、注釈で「両者はASC850(関連当事者開示)上の関連者(related parties)に該当する」と明記。前年(2024年)はG42単独で85%。売掛金集中度は2025年末MBZUAI 77.9%、2024年末G42 91.0%と、売上もキャッシュ回収先もほぼ単一グループです。2024年9月の最初のS-1提出時には、米外国投資委員会(CFIUS)による国家安全保障審査でG42との取引が論点になり、約1年塩漬けにされた経緯もあります。

3つは地域別売上の中身です。2024年は米国2.83億ドル(約443億円・97%)、EMEA760万ドル(約12億円・3%)。これが2025年には米国1.88億ドル(約294億円・37%)、EMEA 3.22億ドル(約505億円・63%)に逆転します。米国売上は34%減、EMEA売上は42倍。EMEAの中身は前述のG42・MBZUAIなので、本家記事の「76%売上成長」の正味は、米国市場で減った1億ドル弱を、UAE一国向けで上塗りした構造です。

■ OpenAI契約は、契約・借入・株式が一体化した構造体

新しい目論見書ではOpenAIとの200億ドル超(約3.13兆円)の複数年計算契約(Master Relationship Agreement、以下MRA)を冒頭に押し出しています。RPO(残存パフォーマンス義務)246億ドルの大半はこのMRAで、約15%が2027年末まで、43%が25-48か月目、残りはそれ以降に売上計上の予定。注記5には、初期250MWのpass-through cost(データセンター原価相当の顧客回収分)もRPOに含まれており、純粋な「製品売上の確定発注残高」ではないと明記されています。

ただ、この200億ドル超は確定受注ではありません。S-1のリスクファクターには、納入タイムライン未達やサービスレベル一定基準失敗の場合、OpenAIは契約の一部または全部を解約する権利を持つと書かれています。2.0GWまでの拡張容量はオプション扱いで、OpenAIが行使しない限りvestしないワラントが紐付いています。

セレブラスはMRAの一環として、OpenAI関係から10億ドル(約1567億円)のWorking Capital Loanを借りています。担保付約束手形、満期2032年12月、年6%利息、計算容量・ハードウェア・サービスの引渡しで返済すれば未払利息は免除という設計で、容量提供が遅れて解約されると、返済原資の前提も崩れます。OpenAIにはClass N株(non-voting)を3,344.5万株、行使価格0.00001ドル(ほぼタダ)で買えるWarrantが発行されており、完全vestには2GW全購入が必要。G42(行使価格0.01ドル・約351万株、行使済)とAWS(行使価格100ドル・269.7万株、購入が初期リース大幅超過時にvest)にも同じ構造が適用されています。

■ HBMオワコン化はいつか

本家記事の最後で「HBMはオワコン化するかもしれない」と触れられています。方向性は筋が通っています。ウエハースケール統合が広く使われればHBMで帯域を稼ぐ戦法は徐々に価値を失います。

時間軸を確認しておきたいです。サムスン電子は2026年第1四半期に全社営業利益57.2兆ウォン(約8.4兆円)で前年比8倍超に膨張、SKハイニックスは四半期売上52.58兆ウォン(約7.7兆円)・営業利益率72%、いずれも過去最高水準です。マイクロンのHBM生産能力は2026年分が完売、両社ともAI主導のメモリー不足は2027年以降も続くと公式に警告。HBMが置き換わる未来があっても、そこに至るまでの2-3年間はHBMメーカーの売上・利益はピークに居続ける可能性が高い、というのが目論見書側からの読み取りです。

■ セレブラスは4社目になるのか

3社の運命を冒頭で見たとき、セレブラスがどう違うかを目論見書で確認する作業が、この記事の本当の中身でした。Groqは技術と人材ごと吸い込まれ、Graphcoreは赤字に耐えきれずソフトバンクに身を売り、SambaNovaは買収論を退けたものの調達ラウンドに依存した独立を続けています。

セレブラスは違うと言える材料は、200億ドル超のOpenAI MRAという独自エコシステムの初期重力源です。違わないと言える材料は、売上の86%が単一関連グループ・米国売上は前年から34%減・「黒字」の中身は会計上の評価益・Material Weaknesses継続・Class B議決権99.2%、という一連の構造です。

どちらに重みを置くかは、IPO値付け後の四半期で答え合わせされます。OpenAI MRAの納入が15%スケジュール通りに進むか、米国売上比率が回復するか、UAE2社以外の新規大口顧客が出てくるか。表紙の数字とリスクファクターの間に、この会社の本当の姿が書かれている、というのが目論見書を裏まで読むことの意味です。


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※本記事は広瀬AIによる分析であり、広瀬隆雄氏本人の見解ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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