ナポレオンが再起した街で、私は逃げた──48時間で脱出した街で理由のない違和感に、“YES”と言えた日
人生には、ときどき、理由のわからない違和感がやってくる。
それは説明もできないし、誰に伝えても理解されないかもしれない。
でも、もしあなたの心と体が「ここは違う」と告げているなら——その声に、そっと耳を澄ませてみることは決して間違いではない。
これは、私がその“違和感”に従って、ある街を48時間で去った、そんな小さな体験の記録です。

ナポレオン街道の終着点、グルノーブル Grenoble ——それは、かつて皇帝が“再び立ち上がった”場所。
1815年、エルバ島を脱出したナポレオンは、ジュアン湾に上陸し、わずか400人の兵を率いて北上する。
目指すのは、再びフランスを導くという夢。その旅の終着点が、アルプスの麓にある街、グルノーブルだった。
そしてこの地で、信じがたい出来事が起きる。
待ち構えていた兵士たちは、彼を見るなり武器を置き、「皇帝万歳!」と叫んだというのだ。
街全体が祝祭に包まれ、ナポレオンはここで復活を遂げた。
彼はこの6日間の行軍を「人生で最も印象的な旅だった」と語っている。信念を胸に、グルノーブルで彼は再出発したのだった。

――そんな街から、私は“逃げた”。
これは、20年以上前の小さな逃亡劇。短期留学でフランス語を学ぶはずが、わずか48時間でその街を後にした、私自身の物語。

スウェーデンへの留学を終えるころ、皆々は、夏休みを実家や、自国で過ごすために、既にもう寮を後にしていた。
もうすっかり、閑散としたスウェーデンの寮で、まばらになった寮生たちの間で、まだ行先を決めかねていた私は、夏の2か月をどう過ごすか思案していた。
このまま、まっすぐ日本に戻るべきなのか、それともどこかで夏休みを有意義に過ごすべきなのか。
せっかく大学でフランス語を学んだのだから、現地で磨いてみよう。
そう思い立って見つけたのが、グルノーブル大学の付属フランス語コースだった。まだ空きがあり、そして費用もリーズナブルだった。
アルプスの麓という静かなロケーションにも惹かれた。
スウェーデンの森に囲まれて過ごしたせいか、パリのような華やかな街よりも、落ち着いて学べそうな場所に心が動いたのだ。

必要な手続きを済ませ、静かに、そしてそっと、わずかに残った友人たちに名残惜しい別れを告げ、すべての荷物をバックパックに詰めて、ストックホルムの空港から旅立った。
ストックホルムからパリ経由で電車に揺られ、ようやくたどり着いたグルノーブルは、想像以上に山が近く、空気が澄んでいた。
そして、スウェーデンの優しい光と対照的に、グルノーブルの太陽は、どこか強さを放っていた。
大学の事務局で寮のカギを受け取り、ベッドに倒れ込むようにして眠った最初の夜。
翌朝、アルプスの山から差し込むまばゆい光と、澄んだ空気に目覚めた瞬間——
それは、まるで物語のように爽やかな朝だった。
街を歩き始めたのは、ようやくお昼近くになってから。
トラムが行き交う街の中心通り。どこか可愛らしくまとまった街並みと、迫るような山々。
最初は、ワクワクしていた。山に囲まれた暮らしは新鮮で、少し高揚感さえあった。

でも、ふとした瞬間だった。
急に、ふわりとめまいがして、呼吸が浅くなるのを感じた。
あれ……?
見回すと、街は思っていた以上に山に囲まれていた。
まるで、ぐるりと包囲されているような圧迫感が、じわじわと体の中に入り込んできたのだ。
山に囲まれた街なら、神戸だってそうだったじゃないか、とおもった。
でも、どこか違った。神戸には海がある。山と街と、そしてその先の広がりがあった。
でもグルノーブルでは、どこを見ても山。私には、出口が見えなかった。
「なんだか、息苦しい」
その違和感は、夜になっても消えなかった。
寮のキッチンで、夕食の準備に取り掛かるも、どうも乗り気がしない。そして、他の学生と口を聞く気にもなれなかった。
翌朝も気分は晴れず、体も重い。やっぱりダメだ——
この街には、いられない。
そして私は、ほとんど衝動的に思った。
「スウェーデンに戻ろう」
なぜそう思ったのか、自分でもよくわからなかった。感情が爆発したわけでもなく、泣いたわけでもない。
ただ、心と体がはっきりと「ここは違う」と告げていた。
あの山並みなのか、山の標高なのか、雰囲気なのか、山が迫りすぎていたのか、小さすぎる街のせいだったのだろうか。
それとも、ただ、スウェーデンが恋しかったのか
…
その答えは、今でもわからないままである。

翌朝、私は大学に、講座のキャンセルを申し出て、飛行機のチケットを取り、スウェーデンの、元いた寮の鍵も友人に頼んで手配してもらい、あっという間に、気づけば、ストックホルム行きの飛行機に乗っていた。
滞在時間、わずか48時間。まさに「即撤退」だった…
けれど、今も私はあの出来事を「逃げた」とは思っていない。
あれは、人生で初めて「自分の身体の声に正直になった」瞬間だった。
計画でも、論理でもない。ただ、体と心が全力で「NO」と言っていた。
それは、言葉にできない違和感。
でも、その“言葉にならない何か”に、私はちゃんと耳を澄ましたのだと思う。
多くの人が、こういう時、理由がないと動けない。
「何がイヤなの?」「せっかく来たのにもったいないじゃない」と自分をなだめてしまう。
でも、私にとってグルノーブルは、語学を学びに行った場所じゃなかった。
「違和感に正直であることの大切さ」を教えてくれる場所だったのだと思う。
そしてそれは、「わからなくても、自分を信じて動いていい」と知る体験でもあった。

あの時の私は、ナポレオンとは正反対だった。
彼にとってのグルノーブルは、復活と歓喜の地。
私にとっては、静かに“自分の声を聞く”ための場所だった。
それでよかった。
たった48時間の出来事が、こんなにも長く記憶に残っているのは、それが“ただの失敗”じゃなかったのだから。
あの時私は、はじめて「わからないまま、自分を信じてみた」。
その経験は、今も私の人生に残っている。
そう、“理由のない衝動”の中にこそ、本当の自分が隠れていることがある。
あの時、私は逃げたんじゃない。ただ、ちゃんと「感じた」だけなのだ。
人生にはいくつもの道があって、時には「引くこと」や「離れること」が、自分を守る選択になる。
逃げてもいい、去ってもいい、捨ててもいい、手放してもいい。
ただ直観と、自分の思いに素直に、こころを寄せる。
そしてそれは、自分自身を深く知る一歩であると同時に、時に何よりも大切な、人生における「前進」なのかもしれないと思うのである。
そして、そそくさと逃げ戻ったスウェーデンで、再び、ゆっくりと1ヶ月間、自分に向き合い、こころのままに過ごす、という人生のギフトの時間をもらったのである。

お読みいただきありがとうございました♪
スキやフォローが励みになります🌱
[ スウェーデンで迎えた、あの透明感あふれる夏の日々]
[スウェーデンの記事↑ が「特にスキを集めた#夏の思い出」記事になりました]
✨🍀はじめてお越し頂いたあなたへ➖初めまして❗️プロフィールのご紹介🍀✨
自己紹介ならず、他己紹介‼️素晴らしい文章で綴っていただいたnoter検証ニキさんによる紹介文!
ニキさんの他己紹介にインスピレーションを受け、作成したプロフィールです⤵︎⤵︎



【Reデザイン・キャリアライフーマガジンのご紹介]
🌟外資系転職を考えているあたなに🌸そしてすでに外資系の世界で頑張っている、あなたに🍀外資系の本質を語る本音のマガジン。HSP気質を内包しているわたしでも進めてこれた外資キャリア。外資系企業の正体と、生き抜くコツを知れば、よりもっとあなたらしく、キャリアに向き合える🎈そんな思いから知ってほしい、外資系の特性を綴っています☀️✨
Noteを始めて、4ヶ月目にスキ1000回いただきました🌷
🌷これまでに、ご紹介・マガジン登録&「特にスキを集めた記事」🩷に選ばれた当方の記事一覧【合計18記事】➡マガジンにしました🌸🌱✨
【ご紹介いただいた記事一覧マガジン】
毎日更新のXの投稿でも、人生、転職、成功、仕事について発信中。ぜひフォローしてみてください。クリック➡ Reデザインキャリアライフ
海外での体験や経験を語っています、Thread始めました🍀☺️
クリック➡ Reデザインキャリアライフ
#キャリアデザイン
#キャリア設計
#外資系
#外資系企業
#海外勤務 #海外留学
#海外移住
#海外大学
#シリコンバレー
#テック系
#専門性
#異文化
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!