【生存戦略】猫の毛は、私の戦装束である。――「猫の毛?つけてるんですよ。」
私はいつも、猫の毛と共に現場に行く。
いや、正確に言うと、服に猫の毛がついている。
もっと正確に言うと、もう諦めている。
猫と暮らしている人ならわかると思うけれど、猫の毛はどこからともなく飛んでくる。
服につく。
布団につく。
カバンにつく。
なぜか、洗濯したはずの服にもつく。
猫の毛は、物理法則を無視している節があると思う。

そして私は、そのまま仕事に行く。
すると時々、勇気を出してそれを教えてくれる人がいる。
「背中に、毛がついてるよ」
そう言われた時、私はだいたいこう返す。
「そうそう、つけてるんですよ!おしゃれでしょう?」
もちろん、本気で装備しているわけではない。
朝、鏡の前で「今日の毛並みはこれで決まり!」
とコーディネートしているわけでもない。
でも、そう返すと、たいてい場の空気が少しゆるむ。
「あ、そうなんだ」
「いや、取れよ…」
「猫?」
「ええ、二匹の息子がいます。」
そんな感じで、会話がちょっと弾む。

ビジュ的に女子トーク採用!笑
猫の毛がついていることは、一般的には、だらしないことなのかもしれない。
恥ずかしがる人もいる。
身だしなみとしては、たぶん不正解だ。
でも私は、完璧な人間のふりをして現場に立つより、
猫の毛をつけたまま「私は、こういう人間です」と立っているほうが、
自分には合っている気がしている。
人間っていうのは、無意識のうちにいつも警戒している。
この人は怖い人か。
ちゃんとしている人か。
自分を見下してくる人か。
小さなことで機嫌を悪くする人か。
どこまで踏み込んでいい人か。
たぶん、他人のそういうところを見てしまう。
だから、猫の毛がついていることを指摘されても、
こちらが慌てないでいると、相手の中で何かが少しほどけるみたい。
この人は、そんなことで怒らない。
この人は、完璧ぶらない。
この人は、少しくらい抜けているところを見せても大丈夫な人かも。
猫の毛が、そういう小さな合図になる。
もちろん、だらしなさを誇りたいわけではない。
清潔感を捨てたいわけでもない。
現場に泥だらけのまま突撃して「これが私の生き様です!!」
と言いたいわけでもない。
結果的にそうなっていたとしても。笑
ただ、私は「隙のない人間」に見られることを、そこまで重要視していない。
むしろ、少し隙があるくらいのほうが、人との間に余白ができることがある。

猫の毛は、ただの毛である。
でも私にとっては、社会に出る時の小さな戦装束でもある。
ほんの少し、「おもしろい間抜け」のバフをかけてくれる。
鎧のように硬いものではない。
むしろ、やわらかい。
軽い。
すぐ飛ぶ。
服につくと目立つ。
白黒の猫なら、何色を着ても目立つ。
それでも、猫の毛をつけたまま仕事に行く私は、どこかでこう思っている。
私は完璧な人間としてここにいるわけではない。
猫に支配され、毛をつけられ、それでも普通に働いている人間としてここにいる。
だから、もし私の背中に毛がついていたら、遠慮なく教えてほしい。
私はこう答える。
「つけてるんですよ。あなたもおひとつ、いかがですか?」

それは言い訳ではない。
相手の武装を解除するための、私の最大の防御である。
ちなみにこれで、
「言い訳すんな」と怒られたことはありません🤣

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