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【自然/Music Video】soma noe | 置かない花が、愛だった。

この度、ちび創作大賞に参加させていただくことにしました。

テーマは「自然」。

そこで、カワムラさんにご許可をいただいた上で、過去に書いた記事へ加筆修正し、この物語を再掲させていただきます。


5月か、6月。
この時期のどこかが、うちの子たちの誕生日だ。

拾ってきた子たちだから、正確な日付はわからない。

けれど私は、毎年この季節になると少し思う。

生まれてきてくれてありがとう。
うちに来てくれてありがとう。

全身を撫で回して、吸いまくって、
はむはむしたいくらいに、感謝している。


そんな私が、ペットショップに立ち寄って買うものは、
いつものごはん。

レジ横のショーケースに、小さな可愛らしいケーキが飾ってあるのが見えた。

動物用の、誕生日ケーキ。

人間のように祝えたら、どんなに楽しいだろう。
少し、想像してみた。

この子たちは、どんな顔をするだろう。

少し匂いをかいで、ごちそうさまムーブをするだろうか。
それとも、少し舐めてみてくれたりするだろうか。

一緒に写真を撮ったら、良い記念になる。
家族に送ったら、みんな笑ってくれる。

私は、きっと嬉しくなる。

そう思った。


でも、そこで足が止まった。

猫は、人間じゃない。

あの子たちは、なんで今日だけ「違うごはん」なのか知らない。

もし気に入ったとしたら。
明日からも出てくると期待させてしまうかもしれない。

場合によっては、

「あのとき出してくれた、あの美味しいものを食べさせて」

とでも言うように、いつものごはんを拒否してしまうかもしれない。

そこまで考えて、ふと気づいた。

人間の祝い方で楽しくなるのは、たぶん、私だけだった。


猫のごはんストライキは、命に関わる。
たった1日食べないだけでも、私は怖い。

数日食べない状態が続けば、命に関わる病気につながることがあるからだ。

肝リピドーシス。

最悪の場合、死に至ることもある。
特に太り気味の子は危ない。

3日から7日ほど食欲不振が続いただけでも、
かなり危ないかもしれない。


うちの子たちは、幸い標準体型だ。

それでも、ごはんストライキを起こされたとき、
私は泣きながら強制給餌をした。

お願いだから、食べて。
お願い。
死なないで

そう祈りながら。

見た目はピンピンしている。
いつも通りだ。

でも、見えないところで、
じわじわ進行しているかもしれない…

その恐怖が、私の中に強く刻まれた。


食の好き嫌いは、猫にとって命がけの行為なんだ。
餓死するより前に、肝臓が詰まる。

人間の「今日はごちそう」や「今日は特別」は、
猫にとって同じ意味にはならない。


猫は、私たちとは生きる基準が違う。

人間から見たら、小さなワガママに見えるその行動が、
どこにつながってしまうのか、
この子たちは知らない。

その先が、虹の橋つながるかもしれないというのに。
猫にとっては、「今は食べたくない」という方が大事なんだ。


 遠い未来を見ながら行動できるのは、人間だけだ。

自分が太ったらどうなるか。
食べなかったらどうなるか。

今日の選択が、明日の体にどう影響するのか。

猫には、わからない。

だから私は、猫を人間扱いしない。

猫を、猫のまま愛する。


けれど私は、ひとつ懺悔しなければならないことがある。

私は、この子たちに去勢手術を受けさせた。
その生の形を、私の判断で変えた。

もちろん、これは必要なことだったと思っている。

オス猫は、成長すると生まれ育った縄張りから出ようとすることがある。
室内飼いなら、外へ脱走するかもしれない。

発情期に何もできないことは、猫にとって大きなストレスになる。
病気のリスクを下げられる場合もある。

だから私は、手術を選んだ。


でも、それを全部「猫のため」だけにしたくはない。

それはたしかに、私の都合でもあった。

大人になると、臭いの強い分泌物で家中マーキングしてしまうかもしれない。
一人暮らしで、それはなかなかにきつい。

これは、紛れもなく私の都合だ。


去勢手術は必要な選択だったと思っている。

けれど、命を預かる側の都合を、
全部きれいに「猫のため」という言葉で包んでしまうのは、
私の中では何かが違う。

私は、もうすでにこの子たちの自然を変えている。

だからこそ。

せめてこれ以上、私が喜ぶためだけに、
自然な彼らの形を歪めたくないと思った。


ひとつ、自分に誓っていることがある。

「うちの子は、大丈夫」

と思わないこと。


日本では、動物は「物」として扱われる。
人間を傷つけたとき、処分されるのは彼らの方だ。
うちの子は大人しいから、優しいから大丈夫、という保証はどこにもない。


動物は、人間の乗り物の仕組みを知らない。
道路に飛び出したとき、車は急に止まれない。
動物のようには避けてくれないことを、この子たちは知らない。
今怖いから、走る。


動物にはそれぞれ、毒になるものが違う。

人間にとっての健康食品も、綺麗な花も、心地よい香りも、
彼らにとっては虹への架け橋になることがある。
良かれと思ってしたことが、命を奪うかもしれない。


だから、私は、
この子たちに「人間の感情」を当てはめない。
「人間の常識」を当てはめない。

猫なら、どうするか。
猫の体は、どう壊れてしまうか。

最悪の事態を想定して動くことにしている。


たとえば、人間にとっての癒しが、
猫にとって危険になることがある。

心身を整えるためのアロマや精油。
健康食品だと思っている、アボカド。
美味しい果物のひとつ、ぶどう。
疲れた時の癒し、チョコレート。
私は飲まないけれど、アルコール。

魚介なら大丈夫に見えても、食べさせない方がいいものもある。
たとえばイカは、危険物として挙げられる。

そして、美しいユリ。

その花も、葉も、花粉も、
花瓶の水さえ危険だと言われる。

観葉植物にも危険は多い。

ポインセチア、ポトス、アイビー、シクラメン。

今挙げたものは、ほんの一部だ。


「天然由来」なら優しい。
「人間に良いもの」なら動物にも良い。

ペットショップに売っているなら大丈夫。

……本当に?

私は、そう問い直すようにしている。

人間の店で売られるものは、
人間を喜ばせるために売られているものもあるんだ。

もちろん、全部がそうとは言わない。


聞き方によっては、AIも信用ならない。

以前、アルカリ電解水を猫の毛に直接かけて……という、とんでもない回答をされたこともある。

情報は、自分で精査しなければならない。


だから私は、いつものごはんを買い続ける。
療法食だから、という理由もあるけど。

部屋で香りのあるものを使わない。
観葉植物は置かない。
おやつもあげない。

もちろん、他にもいろいろある。

人から見れば、つまらない意地悪な飼い主に見えるかもしれない。

でも、私は、私が喜ぶためだけの愛し方はしないと決めた。

この子たちが、この子たちにとって自然なままで過ごせるように。


猫の体を見て。
猫の怖がり方を想像して。
猫の壊れ方をちゃんと知って。

猫のまま、ここにいられるように。
私がこの子たちを、守れるように。


これは、可愛さに負けてしまう飼い主さんを責めるものではない。

私だって負けそうになる。

可愛い姿を見たい。
喜んでほしい。
特別なことをしてあげたい。

その気持ちは、私の中にもある。

だからこそ、立ち止まりたい。

もし、獣医さんに注意されていることを、

「かわいそうだから」

となかなか実行できないとき。

「少しくらいなら」

と迷ってしまうとき。

「こんなに喜ぶなら」

と手を伸ばしかけるとき。

この話が、ほんの少しだけ立ち止まるきっかけになったらいい。

甘やかすだけが愛じゃないと、私は思う。
猫のために「しない」と決めること。

これも、立派な愛だ。

めちゃくちゃ地味だけど。

これは、ひとりよがりにならないための、私への応援歌。


※猫に危険な食品・植物・精油などについては、必ず獣医師や動物病院、信頼できる専門機関の情報を確認してください。誤食した可能性がある場合は、自己判断で様子見せず、動物病院へ相談してください。AIの回答だけで判断しないことも大事だと思っています。


歌詞(訳)

soma, soma
(あなたが、あなたのまま)
noe ni ai
(そっと大切にする愛)
置かない花も
愛だった

きれいな棚に
並ぶやさしさ
「大切な家族へ」
やわらかな文字

甘いごほうび
香りのしずく
小さな服と
祝いの灯り

どれもあなたを
想っていると
わかっているのに
立ち止まる

してあげることが
愛に見えても
しないと決めた手が
守る夜もある

soma, soma
(あなたが、あなたのままでいられるように)
noe ni ai
(あなたの形を守る愛)
差し出さないケーキも
愛だった

猫は人間じゃないと
言ってしまうのは
冷たいことでは
ないはずなんだ

猫の体を
猫の怖さを
猫の壊れ方を
ちゃんと知りたいんだ

花を置かない
香りを焚かない
似合うより先に
息がしやすいように

してあげることが
愛に見えても
しないと決めた手が
守る夜もある

soma, soma
(あなたの形を壊さないように)
neko ni ai
(猫の形のままで愛したい)
猫は猫のまま
愛していたい

soma, soma
(私の愛の形を押し付けずに)
noe ni ai
(そっと大切にする)
置かない花が
愛だった


応募作品としての記事はここまでです。
この作品は、こちらの企画に参加しています。
お時間ありましたら、他の方の作品もご覧ください!

このお題は、山奥AI研究所さんよりいただきました。


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