七福神シリーズ|祈紙(いのりがみ)編 【大黒天と逆転の自撮り棒】
配信停止、結婚中止!? お調子者の大失敗が招いた、最高の「福」の形。
チリーン、
チリーン、チリーン。
祈紙(いのりがみ)が、大黒天の手元に。
「ガハハ!これはまた威勢の良い、騒がしい祈りじゃな。己の失態を嘆きつつも、愛する者を守りたいという熱意だけは本物よのぅ」
大黒天は大きな袋を背負い直し、小槌を片手にその紙を掴み取った。
祈紙(いのりがみ)は、願いの重さをそのまま色に映す。
手元に届いた色は、熟した柿のような、元気いっぱいの「照柿色(てりがきいろ)」。
お調子者だけど憎めない、陽気で一生懸命な男の祈りの色だ。
(三十代 動画配信業 ほしくんの祈紙)
最悪の「ライブ配信」
ほしくんの動画配信は大人気!
面白ネタからライフハックまで、軽快なトークと器用さでファンを魅了している。
そんなほしくんには、結婚したい看護師の彼女がいた。
30歳。収入も安定し、決意を固めた二人は、いざ彼女のご実家へ。
「相棒、今日はスーツだよな?」
AIのGちゃんに相談し、爽やかなネクタイを締めて準備万端!……のはずだった。
「はい、皆さんこんにちはー!今日は人生最大の山場、彼女の実家に突撃しまーす!」
つい、いつもの癖で自撮り棒を回し始めてしまった。
そのまま玄関を開け、「こんにちわー!」と撮影継続。
それを見たご両親は、顔を真っ赤にして大激怒!
「娘はやらん! 撮影など言語道断、今すぐ出ていけぇーっ!」
カラスも呆れる夕暮れ
「はぁー……やっちまった……」
夕方の公園。カラスの「カァー」という鳴き声が、自分を馬鹿にしているように聞こえる。
ネクタイを外し、とぼとぼと帰る道すがら、小さな神社に立ち寄った。
「神様、俺はどうしてこうお調子者なんだろう。でも、彼女と一緒に生きたいのは本気なんだ……」
チリーン、
チリーン、チリーン。
高い空の上、大黒天はニヤリと笑って小槌を振った。
「良いか、ほしくんよ。失敗は成功の母、そして笑いは福の門じゃ。そのお調子者っぷり、悪くないぞ」
二度目のチャイム、予想外の結末
次の週末、彼女から連絡が来た。
「お父さんがもう一度来いって。ただし、撮影は絶対に無しだよ!」
急いで彼女の実家へ向かう。
焦りすぎて、スーツも、ネクタイも、手土産すら忘れてしまった!
「ごめんください!」
出迎えに出てきたご両親を前に、ほしくんは玄関でいきなり土下座をした。
「先週は大変失礼いたしました! 申し訳ございません! でも、娘さんと結婚させてください!」
心臓の音がうるさい。
返事がない。
……?
そっと顔を上げると、そこには意外すぎる光景があった。
「……お父さん?」
なんと、無表情だったお父さんが、ほしくんの自撮り棒を手に、至近距離で彼を撮影していたのだ。
「……おい。今の土下座、もう一度やってみろ。ピントがズレた」
「えぇーっ!?」
高い空の上、大黒天は腹を抱えて大笑い。
「ガハハ! 似た者同士、これなら賑やかな家庭になるわい。末永く、お幸せにな!」
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