雑文「好きな作家?」
好きな作家について書こうと思ったのだが、実のところ、胸を張って「〇〇が好きです」と言えるような作家はぼくにはいない。作品単位でこれが好きだと言うことはできる。けれども、作家その人を好きだと言うことは難しい。※本ページはプロモーションが含まれています。

どういうことだろうか。簡単だ。ある作家の作品群には、ぼくの好きなタイプの作品が含まれると同時に、そうではない作品も含まれるからである。まあ、ぼくの感性や忍耐力が乏しいだけかもしれないけれど。
例えば、一條次郎が典型だ。デビュー作の『レプリカたちの夜』はぼくにとって、これ以上ない最高のエンターテイメント小説である。だが以降の長編の、例えば『ざんねんなスパイ』や『チェレンコフの眠り』は正直あまり好きではなかった。冗長な悪ふざけが延々と続いているように感じてしまい、途中で読むのを止めてしまった。もちろん、そこが魅力だと感じる読者がいることはわかる。
村上春樹もそうだ。『風の歌を聴け』や『羊をめぐる冒険』なんかは結構好きだが、以降の作品にはどうしても食指が動かない。「羊」でもう全部言ってない?と思ってしまうからだ。
他にもそういった作家・作品はたくさんある。安部公房『壁』、片岡義男『一日じゅう空を見ていた』、堀辰雄『美しい村』、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』……。
だから、ひとりの作家を継続的に追って、「好きな作家は〇〇です」と胸を張れる人がうらやましい。すごいことだと思う。
とはいえ、ぼくももうアラサー。ここから急に「ひとりの作家を深く追えるような人間」に変貌することはあるまい。こういう性格なのだと開き直って、好きな作品を雑多に読んでいくほかはないだろう。
☞紹介した本はこちら:『レプリカたちの夜』『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『壁』『一日じゅう空を見ていた』『美しい村』『グレート・ギャツビー』
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