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今月読んだ児童文学を語る【2026年5月】



続きです。

今月はほぼずっと村上春樹の長篇 ↑ を読んでいたため、児童文学はほとんど読めていません。さすがに春樹を児童文学に含めだしたら何でもありになってしまいますからね……(中学時代に読むひとはたくさんいるだろうし、春樹を読む小学生もいなくはないでしょうけれど、それはあらゆる本にいえることなので)





いとうみく『いちかちゃん』

中田いくみ絵、2024年、くもん出版

1月からずっと読んでいる、いとうみくさんの幼年童話シリーズ。

「うっかりやさん」の小学2年生いちかちゃん。
ニューロダイバーシティや発達障害という単語を使わずに、いちかちゃんと一緒に過ごすいとこの男の子の目線から、多様な個性をもつ子どもたちがそれぞれに関わりながら生きていくことについて描く。
狐の嫁入りの微ファンタジー要素があって驚きました。
中田いくみさんのやさしい線の絵も素敵でした!



石川宏千花『メイド イン 十四歳』

2020年、講談社

『むかしのことで、後悔してることってある?』
パンダは笑って答える。
『山のように。でも、遠く離れたいまは、その山もまた、美しい』 

p.153

1月に読んだ『保健室には魔女が必要』などが素晴らしかった石川宏千花さんの作品も集中的に読んでいきたいと思っています。

本作は、中2のクラスに〈透明人間〉が引っ越してきた!?という奇天烈なストーリー……ではあるんですが、そうした設定の下で描こうとしているのは奇異なマイノリティへのマジョリティの暴力的な振る舞いについて、です。かなり真面目なテーマだけど、「ナチュラルボーン優等生」の主人公のキャラが良くて、説教臭さは少ないのがさすがです。

女子全般が嫌いなわけではない。世紀末の荒野をひとりで生きぬくすがたが想像できる孤高の似合う女子なら、いつだってウェルカムだ。残念ながら、そんな女子には出会ったことがないだけで。

p.9

文章がずっと素晴らしいし、とても真剣に反差別を児童文学でぶちあげていながらも、同時にポップさとコミカルさを忘れずに楽しんで読めるようになっていました。
被差別者の属性ではなく、差別者の意識によって差別は作られる、ということをこんなにもエンタメに落とし込めるのはすごい。

「物語」を必要としながらも現実を生き抜いていく子どもたちの姿を肯定しているさまが私は好きです。


石川宏千花『電子仕掛けのラビリンス』

2024年、理論社

『メイド イン 十四歳』がよかったのでもう一冊石川宏千花さんの作品を読みました。

スマホ依存×グルーミングの恐ろしさ啓発小説……といえばいいのでしょうか。かなりこわい内容で、好みには合いませんでした。

ネット依存や見知らぬ他人(大人)からのグルーミングに気をつけよう!という啓発モノなんだとしたら、夏子とエリの少女漫画チックなヘテロロマンス要素が不必要に思えました。こんな胸キュンの出会いができるんならネット依存したり怪しい人についていったりしても構わない!と読者が思いかねないから。そういう点で、なんだか中途半端な作品だと感じました。

「NHKオンライン内ネットコミュニケーション小説として発表」されたらしいです。そういう背景が影響してるのかな。




~~ここから絵本~~

先月に続き、五味太郎『絵本をよんでみる』にて語られていた名作絵本を中心に読んでいきました。


ディック・ブルーナ『ゆきのひの うさこちゃん』

オランダ、1963年(邦訳1964年、いしいももこ)、福音館書店

ブルーナの「うさこちゃん」シリーズを数冊読んでみました。
圧倒的に簡素で抽象化した絵と、いしいももこさんのやや気取った翻訳調の言葉づかいがたまりません。

『ゆきのひの うさこちゃん』では、まず、ゆきのひのうさこちゃんの衣装がかわいい。
そして、色数が極端に少ないのが印象的でした。空や地面の青が服(コート)にまで。耳まで覆うぼうしと、マフラーと靴が同じ色。
この色彩感覚にあこがれます。



アーノルド・ローベル『ふくろうくん』

アメリカ、1975年(邦訳1976年、三木卓)、文化出版局

『きみはともだち』のアーノルド・ローベル。もちろん『きみはともだち』も読み返して、五味太郎が言う通り、これは単純に牧歌的なふたりの友愛(BL)モノとして読めないなぁ でも名作だなぁと思いましたが、わたしがより好きなのは『ふくろうくん』。

究極のひとり遊び、ひとり芝居、ひとり舞台。
すさまじいです。
絵本の三人称の語りの存在形式についても考えてしまいます。



ユリー・シュルヴィッツ『よあけ』

ポーランド, アメリカ、1974年(邦訳初版 1977年)、福音館書店

すごすぎました。絵本ってすごい。
イラストの枠の、青と赤の混じり合って揺れているような輪郭がすきです。

絵の連続でも最低限「物語」として成立しそうなところに、文を添えることでなにが生まれているのか、絵本をたくさん読んで考えたいと思いました。



‌いわさきちひろ『ぽちのきたうみ』

1974年、至光社

きしゃの車窓の見開きがすごいし、海の見開きは言うまでもありません。波ってそうやって表現できたんだぁ~となりました。
配色も凡人には信じられない。紙質・印刷も素晴らしかったです。



トミー・ウンゲラー『やばっ!』

フランス、2019年(邦訳2025年)、好学社

『絵本をよんでみる』では『キスなんてだいきらい』が紹介されており、そのハードボイルド感に喰らっちまいました。(『すてきな三にんぐみ』も読み返したいです)

そんなトミー・ウンゲラーの遺作『やばっ!』。

「せかいにのこっているのは たぶん、ぼくだけ。」
「このせかいで なにができるか?」

きわめて抽象的な近未来?近代?都市のなかを「ぼく」が影に導かれて放浪する。この不思議な世界設定には村上春樹っぽさも感じました(ちょうど読んでいたので)。

というかその表紙を担当している佐々木マキっぽさ?

テキストの影演出や色表現など、タイポグラフィ的にも少し面白い
ゲーム化できそうだとも思いました。

要するに何を言っている作品なのか……という嫌らしい見方をすれば、社会派の、これからの世界を生きなければならない子供たちへ、世界の過酷さ・恐ろしさを伝えながら、そのなかでなんとかしぶとく生きていく姿を描いてみせているのかなぁ。Non Stop! と。
戦争経験や、戦中・戦後の急速な近代化なども背景にありそう。



五味太郎『まだまだまだまだ』

2021年、偕成社

タイトル演出さすがにかっこよすぎる。これはぜひ自分で読んで体感してみてほしいです。

途中から着いてきてる犬も、気付けば2周目を促すいいギミックになっていました。

デビュー作「道」からそうだけれど、五味太郎は近代都市を描く作家でもあるんだよな~と思いました。絵本を描き始める前は工業デザイン畑のひとだったわけですし。『そして犬は走ってゆきます』とかも、その姿勢がよく表れていてめちゃカッコいいです。


五味太郎『ビビビビビ』

1994年、偕成社

工業デザイナーとしての五味太郎の素養が、絵本作家の五味太郎と見事に調和を果している傑作だと思います。マジでかっこいい。






海外文学モチベが復活してきていて、ゲームをやるのにも忙しく、6月はもっと少なくなりそうです。しゃーないっすね~


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