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#66【愛おしき最下位の息子】息子の話⑤

よーい、ドン

幼稚園の運動会が始まった


障害物競走のスタートラインに並ぶ息子は
不安をにじませた表情をしていた

合図と同時に、みんなが一斉に走り出す
その中で息子も、一生懸命に走りだした

障害物競争
第一の関門は
【大きな網をくぐる】

息子は、一番にそこへたどり着いた

「わっ、早い」
そう思った瞬間
なぜか網の前で立ち止まる息子

後からやってきた園児たちが
もぞもぞと網の下を潜り抜けていくのを
じっと見守っている

……ん? どうした?

一人、また一人とくぐっていくのを
ちゃんと見届けてから

続いて息子が急いで網をくぐる

第ニの関門は
【平均台】

これまた網の時と同じ
息子は、平均台の前でピタリと足を止めた

順番待ちでもないのに
他の子が登るのを、静かに見守っている

そして
誰もいなくなってから
よいしょ、と登る

その姿があまりにもマイペースで
思わず、可愛くて笑ってしまった

スタートは一番だつたのに
気づけばゴールは
堂々の最下位

隣にいたママ友が

「もう、しんちゃんっていっつも
どんくさいんやから
 何してんのよー」


と、呆れたように笑いながら言った

私はその言葉を適当に聞き流しながら、
砂埃の向こうで私に手を振りながら笑う
小さな息子を見つめていた

『一番にならなくていいよー』
抱きしめて心の中でつぶやいた

ちゃんと見て
ちゃんと待って
ちゃんと譲ることを選んだ
ただ、それだけのことなのに

そんな息子が
どうしようもなく愛おしかった

次回
#67 【「愛」が「負の連鎖」に化ける時】息子の話⑥

はじめてのnote】

【オバハンの独り言】

【二億円】を使った母の話

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