#67【「愛」が「負の連鎖」に化ける時】息子の話⑥
「生まれてきてくれて、ありがとう」
息子の産声を聞いたあの瞬間
確かにそう思っていたのに…
生まれてきてくれた瞬間の感謝を
私はいつから忘れてしまったのだろう
シングルマザーとして生きる中で
私は「やさしい母」であることを諦めてしまっていた
父親のような厳しさのみで…
そして青春なんて時間が全くなかった私には
息子が成長するにつれ
同級生の青春を謳歌している生活が眩しく見え
胸の奥に空虚感まで芽生えていた
気づけば、息子に向ける眼差しは
母の温もりを失い
『強くあれ』と願う
父のような厳しさに支配されていたように思う
私はいつの間にか
息子との向き合い方を見失っていた
⸻
息子は、手のかからない子供だった
どちらかと言えば
優しくて、穏やかで
家に友達がたくさん来た日
お菓子を出すと
わっと一斉に手が伸びる
息子の手が伸びた時には
お菓子はひとつも無い
悲しそうな顔をするけど
それでも
喚き散らすこともなければ
人のお菓子をぶんどることもしない
ただ、少しだけ困ったような顔をして
静かに手を引っ込める
そんな、のんびりした平和主義者
少し困るところをあげるなら
切り替えが遅いこと
一度拗ねると、びっくりするくらい長い
なかなかの頑固者で
ノリも、正直あまり良くないので
なかなか切り替えられない
まぁ、言い方を変えれば
【ブレない、クールな男】だ
⸻
初めてできた、たった一人の大切な家族
小さな頃は
過保護なくらい溺愛していた
あんなに、親からの干渉を嫌っていたはずなのに
気づけば私は、祖母と同じような顔をして
彼の人生に土足で踏み込んでいた
成長するにつれ
無性の愛で包みこむ優しさを忘れ
ただただ「厳しさ」だけで
一人の人間として尊重することを忘れ
自分の所有物のように扱ってしまう
自分が受けた傷の深さを知っているはずなのに
一番愛する者に同じ思いをさせていた

次回
ちょっと休憩【思春期娘と母の暴走―バレンタインデー】オバハンの独り言―29
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