#68【息子の未来を私の不安で塗りつぶしていた―14歳の涙】息子の話⑦
あまりにも口うるさく
厳しかった「私」のそばで
息子はきっと
戸惑いながらも我慢を覚え
少しずつ自分の気持ちを押し込めながら
静かに折り合いをつけていたのだと思う
そんな彼も
思春期という嵐の季節に入っていった
習い事を無理に押しつけた記憶はなく
小学校、中学校と
野球に熱中し、たくさんの友人がいて
男友達と遊んでる姿がなんとも微笑ましかった
── ただ
母である私は
少し「近すぎた」のかもしれない
毎日、細かなことまで気になってしまい
つい口を出してしまう
とにかく些細な事でも気になり心配してしまう
心配して
ただそっと気にかけるのならよかったのに
私は父親のように
「だからこうなるんや」
「こんな事したらあかん!」
と頭ごなしに叱ってしまう
多感な彼にとっては
かなり窮屈だったと思う
中学生のある夜
ドラマ『ROOKIES(ルーキーズ)』を
見終えた彼が
目に涙を流しながら呟いた
「俺、教師になる」
思春期の尖った時期でありながら
物語に感動し
まっすぐ夢を語るその姿に
私は胸が温かくなった
本当は
あの純粋な一面が
抱きしめたいほど、とても愛おしかった
けれど当時の私は
「しっかり一人で育てやな」
「私が守らな」
「父親の変わりをしやな!」
そんな思いが先に立って
気づけば
大切なものを見落としていた
息子は
特別手のかかる子ではなかったのに…
この頃、息子は
一年下の友達がいじめられていると知れば
いじめっ子たちを全員呼び出して
「そんなことしたらあかん」
と、必死で言い聞かせていた
むしろ
人の気持ちを汲み取れる
やさしい子だったのに
その穏やかな心に
私は知らず知らずのうちに
土足で踏み込み、波を立ててしまっていた
不良になる要素なんて無いのに
昔のやさぐれていた自分を重ねて
「この子も不良になったらどうしよう」
と勝手に怯え厳しく接していた
あの夜
涙を浮かべながら夢を語った
14歳の息子を思い出すたび
胸が痛み、同時に
かけがえのない時間だったとも思う
私も、正しく導かれた記憶よりも
「信じてもらえた」という記憶の方が
長く心に残っているくせに…
⸻今では、息子と滅多に会うことはない
10代で家を出た息子
気づけば私は、ずいぶん早く子育てを終えていた
久しぶりに顔を合わせても
お互い何を話せばいいのか分からず
どこか照れくさく
少しぎこちない空気が流れている
そして、すっかり大人になった息子を前にしても
私の心配性は、なかなか手放せないままでいる
今だに
つい先回りをして口を出し
頭ごなしにキツく言ってしまう自分がいる
分かっているのに…
そしてまたそんな自分を責め、落ち込む
何度も何度も何度も
同じ繰り返しをしている
⸻
いつも
静かに息子を見守っていたいと思っているのに…
口を出す代わりに、信じるという選択を
少しずつでも、できる母親になりたい
そう自分に言い聞かせながら
今日も息子のことを想っている
大切な息子と
あたたかい関係でいられるようになりたい
それが私の生きている理由
なのかもしれない
息子の幸せを願い
優しく見守れる母になる為に
自分を見つめ直していく
ごめんやけど…
こんな未熟な母ですが
もう少しだけ、長い目で見ていてください

次回
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