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#64【48時間の果てに―産声のない誕生】息子の話③

「パチン」
子宮口で、バルーンが弾けた

その直後
分娩着とベッドのシーツが
びしゃっと濡れる

一瞬だけ
痛みがふっと和らいだ

けれど
子宮口は、まだ3センチしか開いていない

再び
二つ目のバルーンが挿入される


「メリ、メリ」
「ミシ、ミシ、ミシ」

体の奥から響く
聞き慣れない
なんとも言えない不気味な音

陣痛が始まってから
すでに40時間が過ぎていた

気が遠くなるような痛みの中で
私は、意識を失いかけていた

身長158センチ、元々体重43キロの私の体に
2週間も予定日を過ぎた息子が
狭い子宮の中で、苦しそうに体を丸めている

⸻そして また

「パチン」
二度目のバルーンも弾けた

薄れてゆく意識の中で
どうしようもない絶望に
飲み込まれていった

あまりの激痛に
分娩台に、いつ移動したのか
はっきりとは覚えていない

ようやく子宮口が開き
いよいよ出産が近づく

陣痛が始まってから
すでに48時間が経っていた

息子は大丈夫なのか
不安でいっぱいだった

午前7時
分娩台の上で待つ私のもとに
ようやく医師が到着した

「会陰切開しますからね」

その声に
返事をする余裕もない

お腹と腰の痛みが勝り
切開のメスが入ったことすら
ほとんど分からなかった

⸻その瞬間

待ちに待った息子が
この世に生まれた

黒々とした髪がフサフサと生えている
3800g近くある
大きな赤ちゃん

やっと会えた――

でも、息子の顔は真っ青で
産声も上げていない

その瞬間
医師と看護師たちが
一斉に動き出した

私は息子を抱くこともできず
ただ見送ることしかできないまま
息子は看護師さんに抱かれ分娩室から出された

胸の奥が
すっと冷えていくのを感じた

どうか、どうか、お願いですから
無事でいてください
それだけを
何度も何度も心の中で繰り返していた

次回
#65 【廊下に消えた赤子と、取り残された私】息子の話④

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