声をかけなかった。小学校から社会人1年目まで一緒だった、彼に。🌿
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数日前。
子どもの小学校の、夏祭りだった。
娘の手を引いて、屋台のあいだを歩いていたとき。
ふと、目線が、合った。
一瞬だった。
でも、私には、わかった。
彼だ、と。
小学校から、中学、高校の練習試合、
大学、そして——社会人1年目まで。
人生のいちばん長い時間を、隣で過ごした、彼だった。
🏫 ある時までは、いちばんの友達だった

正直に書くと、彼のことは、大好きだった。
小学校の頃は、
ドッジボールの大会に、一緒に出た。
お互いの家を、行ったり来たりした。
中学は、二人ともテニス部。
彼がキャプテンで、
私は団体メンバーの一人だった。
高校は別々だったけれど、近場だったから、
練習試合もしたし、外で一緒にテニスを習ったりもした。
大学は、隣の県。
これは、本当にたまたま、
同じところを受けて、二人とも受かった。
進路相談なんて、した覚えもない。
それなのに、また一緒だった。
昼食も、よく二人で食べた。
——ここまでは、いい話だ。
幼なじみが、ずっと同じ道を歩いてきた。
ドラマみたいな、まっすぐな友情の話。
でも、関係が変わったのは、ここからだった。
🌫️ 国家試験と、同じ職場
大学の最後。
私は、国家試験に落ちた。
彼は、受かった。
それでも、社会人のスタートは、また一緒だった。
彼が、私に合わせて、同じ職場を選んでくれたのだ。
今思えば、その気持ちも、わかる。
一人で社会に出るより、友達がいたほうが、心強い。
切磋琢磨できる。
きっと、そう思ってくれたのだろう。
二人とも、採用された。
でも、その職場での1年が。
私にとって、人を信じられなくなるには、十分すぎる時間になった。
🥀 助けは、こなかった

私の1年目は、アシスタントとして、
かなりのパワハラを受けた。
その話は、別の記事に書いた。
だから、ここでは詳しく書かない。
ただ、当時の私は、毎日、削られていた。
そして、隣には、彼がいた。
同じ職場に、彼がいた。
でも、助けは、こなかった。
彼も、1年目だ。
余裕なんて、ないに決まっている。
それは、頭ではわかっていた。
でも、心のどこかで、待っていたのだと思う。
いちばん長く、私を知っている彼なら、と。
彼は、たぶん、わかっていた。
私を助ければ、その火の粉が、
自分にも降りかかることを。
だから、動かなかった。
私は、彼の真意を、知らないまま、その職場を退職した。
📱 7年前、一度だけ、答え合わせをした
その後、一度だけ、
彼と会ったことがある。
今から、7年前。
私の子どもが、まだ0歳か1歳の頃だ。
久しぶりに会おう、と。
彼から、一度だけ、LINEで誘われた。
私は、すごく、迷った。
でも——会うだけなら、いいか、と。
そして、会った彼は、あの1年のことを、こう話した。
あの時、どうしても、僕には助けることなんかできなかった。ごめん。でも、自分を守るためでもあったんだ。あの主任、あんな感じやろ?
——私が、ずっと感じていたことと、ほぼ同じ答えだった。
不思議と、少し、安堵した。
ああ、やっぱり、そうだったのか、と。
彼は、彼で、必死だっただけなんだ、と。
わだかまりは、たしかに、ほどけた。
でも。
🍃 それでも、「あの頃の彼」では、なかった
ふっきれた、はずだった。
答え合わせも、できた。
彼を、責める気持ちも、もうない。
それなのに。
目の前にいる彼は、もう、
子どもの頃に一緒に遊んだ「彼」では、なかった。
うまく、言えない。
嫌いになった、わけじゃない。
恨んでいる、わけでもない。
ただ、あの、家を行き来して、
ドッジボールに一緒に出た、あの彼は。
私の中で、もう、いない。
その事実だけが、静かに、残っていた。
彼は、そのあとOT5年目あたりで退職して、
別のところで働いていると聞いた。
私が知っているのは、そこまでだ。
それ以降のことは、何も知らない。
👨👧 そして、夏祭りで、目が合った
だから、数日前。
夏祭りで、目線が一瞬合ったとき。
私は、3分ほど、迷った。
声をかけようか。どうしようか。
たぶん、彼も、気づいていたと思う。
彼も、子どもと一緒だった。
もしかしたら、うちの娘の、
一学年下の子かもしれない。
7年前に会ったとき、結婚したばかりだと言っていた。
逆算すれば、じゅうぶん、ありえる話だ。
でも、私は、声をかけなかった。
理由は、いくつかある。
7年ぶりで、確信が持てなかったこと。
お互い、娘と一緒だったこと。
そして——ここは、小学校の夏祭りで、
主役は、娘だということ。
私は、ただ、娘についてまわるだけの、脇役だ。
でも、いちばん奥にあった理由は、たぶん、これだ。
私はもう、彼を、友人だとは思っていないのかもしれない。
🎪 泣かずに出てきた、お化け屋敷

声をかけなかったあと。
私の中には、正直、なんとも言えない感情が残った。
これでよかった、という納得。
でも、ほんの少しの、寂しさのようなもの。
その両方が、混ざり合った、うまく言葉にできない気持ち。
でも、私は、それを、心の中にだけ、そっとしまった。
だって、今日は、娘のイベントなのだ。
私の、過去の話じゃない。
そう思って、また、娘の手を引いて、歩き出した。
そういえば。
去年、あんなに「怖い、怖い」と泣いて出てきた、
お化け屋敷。
今年は、私と一緒に入って、泣かずに、出てこられた。
たった一年で、娘は、
こんなにも、前に進んでいる。
——私が、7年前の出来事を、
まだ、心のどこかで抱えているあいだに。
🌙 おわりに——戻さない、という選び方
昔は、思っていた。
すれ違った関係は、いつか、
ちゃんと元に戻すものだ、と。
わだかまりは、解いて。誤解は、ほどいて。
また、あの頃みたいに。
でも、今は、少し違う。
答え合わせは、できた。
彼を、許すこともできた。
それでも、元の関係には、戻らない。
戻らなくて、いい。
無理に戻さず、そっと、心の棚に、しまっておく。
そういう関係の、しまい方も、あるのだと思う。
声をかけなかったことを、
私は、後悔していない。
でも、まったく何も感じなかった、
と言えば、嘘になる。
その、割り切れなさも、ぜんぶ抱えたまま。
私は今日も、娘の手を引いて、前に歩いていく。
彼が彼の人生を、歩いているように。
あなたにも、答え合わせは済んだのに、
それでも元には戻らない関係が、ありませんか?
そして、その割り切れなさを、無理に解決せず、
そっと心にしまっておくことが、
あってもいいのかもしれません。
プロフィール 🙋♂️

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