シュンガイトとフラーレン
今、執筆中の本にシュンガイトがあるんですが、
マニアックな話は書ききれないし、書いてもつまらんと思うので、息抜き代わりにここに書いておきます(笑)
シュンガイトを私たちがミネラルショーや天然石ショップで見かけるようになったのは、2000年代の終わりから2010年頃にかけてです。それ以前は、鉱物コレクターが「ロシアのカレリア地方で採れる珍しい炭素質の岩石」としてピンポイントで持っているくらいのマイナーな存在でした。
市場に火がついたきっかけには、明確な理由がいくつかあります。
① フラーレン発見の衝撃(1990年代後半〜)
1992年にシュンガイトから天然のフラーレンが発見されて、1996年にフラーレンの発見者がノーベル化学賞をとりました。
この科学的なニュースが数年遅れでスピリチュアルやウェルネスの業界に浸透していったのです。
「ノーベル賞級の成分が入った奇跡の石があるらしいぞ!」ってね。
② 『The Crystal Bible(クリスタル・バイブル)』などの影響
天然石のバイブルとして世界中で読まれているジュディ・ホール氏の著書などで、2000年代以降にシュンガイトが紹介されたことで知名度が爆発しました。
さらに2014年にはフランスのレジーナ・マルティノ氏がシュンガイトと電磁波(EMF)に関する専門本を出版したことで、ヨーロッパを中心に「電磁波対策の石」として一般の市場へ一気に普及していきました。
それ以前のシュンガイトはどう扱われていた?
じゃあ、それ以前はどうだったかというと、鉱物市場ではなく「ロシア国内の歴史的な療養・医療」と「地味な工業用資材」の枠組みにいたんです。
18世紀(ピョートル大帝の時代):ロシア国内での温泉・医療
1700年代初頭、ロシアのピョートル大帝がカレリア地方のシュンガイト層から湧き出る水を「病気に効く」として、兵士の治療や自身の静養のためにロシア初のスパ(療養所)を作りました。
この頃からロシア国内では「健康に良い黒い石」として有名だったけれど、これはあくまでローカルな医療・伝承の扱いだったんです。
19世紀末(1879年):学術的な命名
科学的に「シュンガイト(Shungite)」と名付けられたのは1879年のこと。この時は「炭素率98%以上の黒くて光沢のある奇妙な物質(今のエリート・シュンガイト)」に対して名前がつけられました。
20世紀(ソ連時代):ゴリゴリの工業資材
ソ連時代、シュンガイトは完全に「産業用の鉱物資源」だったんです。
黒い絵の具の顔料(印刷用インク)
鉄工所での鋳型やメタルの還元剤
建物の断熱材や、ロシアの巨大な建築(聖イサアク大聖堂など)の装飾用の黒い建材
大規模な「水ろ過システムのフィルター」
ソ連時代は民間人がブレスレットにして身につけるような情緒ある扱いじゃなくて、重機で掘り起こして工場で使う「炭素資源」だったんです。
・・・で、シュンガイトって何?
シュンガイトは「鉱物」ではなくて、いろんな成分が混ざり合ってできた「岩石(炭素質の堆積岩)」に分類されます。
主成分は炭素なのですが、地球のマグマや海底の泥が混ざり合ってできた複雑な石だから、炭素以外にもたくさんの元素や鉱物が含まれています。
1. シュンガイトの基本構造(ベースは炭素)
シュンガイトの大部分は「非晶質炭素」という、規則正しい結晶構造を持たない炭素でできています(ダイヤモンドやグラファイトとはまた違う状態)。
この炭素の純度によって、シュンガイトは大きく2つのタイプに分かれます。
エリート・シュンガイト(ノーブル・シュンガイト)
全体の90%〜98%が炭素でできている、希少なタイプ。
見た目はメタリックでギラギラしていて、ガラスみたいに割れるのが特徴。フラーレンがより多く含まれているのもこっち。
レギュラー・シュンガイト
一般的に流通している黒い石で、炭素の割合は30%〜60%くらい。残りの40%〜70%に、これから紹介するいろんな鉱物や成分がギュッと詰まっています。
2. 炭素以外に含まれている物質?
レギュラー・シュンガイトを科学的に分析すると、地球の地殻を構成するような主要な元素がずらりと並びます。
① ケイ酸塩鉱物(石英や長石など)
一番多く混ざっているのがシリカ(二酸化ケイ素 )。
つまり、水晶(石英)と同じ成分。これが全体の20%〜50%近くを占めているから、ただの炭素の塊(炭)よりもずっと硬くて、ずっしりした「岩石」の質感になります。
② 金属元素とその他の鉱物
シュンガイトの成分表を見ると、まるでサプリメントか鉱山の縮図みたいにいろんな金属元素が入っているのがわかります。
③アルミニウム
粘土質の成分として多く含まれます。
④酸化・硫化鉄
シュンガイトの表面に、たまに金色っぽい筋や斑点が見えることがありますが、それは黄鉄鉱(鉄の硫化物)。
⑤カリウム・カルシウム・マグネシウム
これらも酸化物の形で数%ずつ含まれていて、シュンガイト水(鉱物水)を作ったときに微量に溶け出すミネラル成分の元になっています。
⑥微量元素(トレースエレメント)
チタン、マンガン、ニッケル、クロム、バナジウムなども、ごくごく微量(0.01%レベル)だけど含まれていることが確認されています。
フラーレンのロマン
まず「フラーレン(Fullerene)」というのは、炭素原子がサッカーボールみたいな球状に結合した、特殊な分子構造のことです。

1985年に実験室で人工的に合成されて、発見した科学者が1996年にノーベル化学賞をとるほどの大発見でした。
当時は「自然界には存在しない、人工だけのもの」って思われていたんです。
ところが1992年、ロシアの極北カレリア地方でしか採れない20億年前の古~い岩石「シュンガイト」の中から、天然のフラーレンが世界で初めて発見されたのです。
これには科学界も「マジかよ!」って大騒ぎになりました。
強力な抗酸化作用:
フラーレンはその独特な形のおかげで、老化や病気の原因になる「活性酸素」をスポンジみたいに吸い取って無害化する、ものすごい抗酸化力を持っています。
水との相性:
シュンガイトを水に入れると、このフラーレンの性質が微量に溶け出して水をきれいにしたり、お肌に良い効果を与えたりするって言われていて、ロシアでは昔から医療や浄水に使われてきた歴史があります(前述)。
※ただし、科学的な分析だとシュンガイトに含まれるフラーレンの量はごくわずか(0.001%以下など)と言われていて、「たっぷり入っている」というよりは「奇跡的に含まれている」というレベルなのです。
でも、天然で持っていること自体が地球上で唯一無二なんです。
また、シュンガイトに含まれるフラーレンには「隕石由来説」ってものがあります。
そんな特別の石が、なぜロシアの特定の場所にだけ大量にあるのか?
・・・・・そこで出てきたのが「隕石(あるいは彗星)の衝突によってもたらされた」っていう隕石由来説なんです。
そう言われるのには、いくつか面白い理由があって・・・
① 20億年前には「元になる材料」がなかった?
地球上の石炭やグラファイト(黒鉛)といった炭素の塊は、大昔の植物や生き物の死骸が積み重なってできるのが普通なんです。
でも、シュンガイトができた20億年前の地球には、そんな巨大な植物や森林なんてまだ存在していなかった(いたのは原始的なバクテリアくらい)。「じゃあ、この大量の炭素はどこから湧いて出たんだ?」という疑問から、宇宙から降ってきたという説が生まれたんです。
② 宇宙にはフラーレンが存在する
近年の宇宙観測で、星が寿命を迎えるときの周囲のガスや、宇宙空間を漂うチリの中にフラーレンの光のサインが見つかっているのです。
つまり、「フラーレンは宇宙で作られる分子でもある」ってことが証明されたのです。
③ 「フェイトン(Phaeton)」伝説
ちょっとSFチックな説としては、かつて火星と木星の間にあったとされる仮説上の未確認惑星「フェイトン」が爆発して、その破片(炭素ベースの生命がいたとされる惑星のコア)が地球に隕石として激突した、それがシュンガイトになったんだ!っていうロマンチックな説を唱える研究者もいます(こういうの、好き(笑))。
まさにシュンガイトが「エイリアン・ストーン(宇宙人の石)」って呼ばれる所以はここにあります。
地質学的な「現在の結論」
現在の最有力な科学的定説は、隕石ではなく「地球のドロドロした大昔の環境」で作られたという説(地生物学的な説)です。
20億年前の浅い海や湖に、栄養豊富な火山活動の成分が流れ込んで、微細な微生物(藻類など)が爆発的に大繁殖した。その死骸が海底にギッシリ積もって、その後の激しい地熱と超高圧によって、グラファイトの一歩手前の「シュンガイト炭素」に変化した……というのが今の科学の見方。
科学的な現実としては地球生まれの可能性が高いのですが、「もしかしたら20億年前に宇宙から降ってきた奇跡の塊なのかも…」って想像させてくれるところが、シュンガイトの最大の魅力ですね。
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