『それいけ!平安部』を読んだら、1日1回「いみじ!」と言いたくなる――令和にあえての平安文化入門
令和を生きてる皆さん!
毎日、「いみじ!」って言ってますか?
言ってない!?
――そんなあなたは、ぜひこの記事を読んでみてください。
古語で使われる「いみじ(甚し)」という言葉は、
現代語の「ヤバい」に近いと言われています。
文脈によって、プラスでもマイナスでも、どちらの意味にもなり、
「非常にひどい」や「素晴らしい」など、程度が著しいことを表す――
まさに、今の「ヤバい」と同じ感覚ですね。
「いみじ」、まじヤバい。
今につながる平安時代
私は、日本史が好き、
特に「文化史」が大好きという希少種です。
どの時代も、それぞれ魅力がありますが、「日本文化」という観点で、特に好きな時代を3つ選ぶなら、
縄文時代、平安時代、江戸時代 となります。
「平安時代」の何が面白いって、この頃からようやく国風文化として、日本独自の文化が発展していった……というだけでなく、同時に、今につながる多種多様なジャンルが形成されていったところです。
その様子は、小規模ながら、生物進化の「カンブリア大爆発」のようです。
平安初期に「現存する日本最古の物語」・「世界最古のSF」といわれる『竹取物語』が作られ、そこから、あっという間に、文学の種類がどんどん広がっていきました。
そして、日本三大随筆のひとつ『枕草子』が登場。
ついには、「世界最古の長編小説」・「日本の古典文学の最高峰」と位置づけられる『源氏物語』が出現する。
もちろん、日常会話の中でやりとりされたという「和歌」、そこから生まれた「百人一首」も忘れちゃいけません。
これ、全部、平安時代なんです。
ようやく「ひらがな」や「カタカナ」が作られた頃とは思えない発展ぶりですよね。
「今につながる」というのも重要なポイント。
X(旧Twitter)で、このような投稿がバズってました。
marie@izakayamarichan
「文学おぼえらんない」って言う娘に
「蜻蛉日記はモテおばさんの武勇伝
更科日記は源氏物語のオタ活記録
伊勢物語はイケメンなりひら君のショートショート
土佐日記はネカマの旅行ブログ」
ってすごい雑な解説したら
「え、嫌いじゃない…」
って引っ掛かった。
「更科日記」は正確には「更級日記」ですが、
そんなことは大した問題ではありません。
これ全部、平安時代に書かれた作品なんですね。
こんな風に、平安時代を今につながるものとして「面白がる」ことができたら——
それを叶えてくれるのが、宮島未奈さんの小説、
『それいけ!平安部』です。
平安の心を学ぶ
宮島未奈さんは、本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りに行く』の作者です。
私を含む成瀬ファンが第3作を心待ちにする中で出版されたのが、本書『それいけ!平安部』なんですね。
「平安時代」が大好きな主人公が、高校で「平安部」を作る物語です。
目的は「平安の心を学ぶ」ため。
そんな話が面白いのかって?
それが超絶に面白いんです!
——間違えました。
想像を超えて「いみじ」なんです!!
では、具体的に「平安部」で何をやるのか。
百人一首か、蹴鞠か、光源氏のコスプレか?
それ、全部やります(笑)。
「平安部」に集まった仲間たちが、それぞれの個性やちょっとした悩みを抱えつつ、ゆるやかに、でも真剣に活動を重ねていく。
その過程こそが物語の核。
青春ってこういう瞬間の積み重ねなんだなぁ、としみじみ感じる一冊です。
特に良かったところ
1. キャラクターの魅力
主人公は「平安大好き」という名のエネルギーの塊ですが、「成瀬」ともまた違う魅力にあふれています。
語り手は「巻き込まれ型ヒロイン」で、自分のキャラの薄さに悩みつつ、しっかり存在感を示しています。
他の3人もそれぞれに個性的。
5人の部員それぞれがバックグラウンドや苦手・好きなものを持っていて、「部活を通して変わっていく姿」が丁寧に描かれているんですね。
もっとも「数合わせ」的だったキャラクターが、実は一番熱かった、
という展開も、個人的にツボでした。
2. 読中・読後感の爽やかさ
現代の高校生活を描きながらも、いじめや裏切りといったドロドロ要素はほとんどなく、気分よく安心して読めます。
途中、主人公の昔の知り合いが出てくるシーンで、ほんのちょっとだけ暗雲が顔を見せますが、すぐに「平安部メンバーの一体感」でもって完全に上書きされるので大丈夫(笑)。
それから……
いや、あまり書きすぎると、クライマックスの一番ぐっとくるシーンが台無しになりますので、このあたりにしておきますね。
とにかく、読みながら「楽しい」。
読み終えたあと「楽しかった」。
そんな言葉が自然に出てきます。
そして、もっともっと平安部の活動が見たい!
なんなら、自分も平安部のメンバーとして部活動したい!
そんな気持ちにさせてくれる小説です。
3. 「温故知新」すぎるテーマ
これまで、「百人一首」や「源氏物語」を単独で扱った小説やマンガはありましたが、本書は「平安部」という枠組みで、令和時代に平安文化を丸ごと持ち込むフォーマットを作り出したのが新鮮です。
歴史好き、古典好きはもちろん、苦手な人でも「え、こんな面白がり方があったのか!」と気づかされます。
「地元の博物館に行く」という一見地味な活動も、平安部の面々と一緒に行くことで、博物館の魅力を再発見できるでしょう。
自分も、地元の博物館に行ってみたくなるかもしれません。
私が一番心をつかまれたのは「雲中供養菩薩像トランプ」。
その存在をまったく知らなかった人も、読み終わったときには猛烈に欲しくなっているはず!
……いえ、私の話です。
「雲中供養菩薩像トランプ」
平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩52体が全て印刷されたトランプ。
ジョーカーは鳳凰になっている。
平等院のミュージアムショップで購入できる。
読みながら気になったこと
ダメ出し的な話ではありません。
単純に、私が気になったという小ネタです。
各章の扉に、部員のイラストが順番に出てくるんですが、
途中、第三章あたりで、章のサブタイトルが、イラストの人物のセリフであることに気づき、ちょっと嬉しくなったんですね。
……と同時に「じゃ、第六章はどうなるの?」
「まさか、顧問の先生登場?」と気になったわけです。
いや、顧問の先生も、すっごくいい味出してるんですよ。
しかも、この物語で、一番成長したのは顧問の先生。
そう言っても過言ではないくらい(笑)。
でも、部員のイラストとセリフで構成された扉ページに、
最後の最後に「顧問の先生」が出てきたら、それはなんか違うなっていう気持ちもありました。
さて、第六章のタイトルは「それいけ!平安部」。
そのイラストは……?
実際に読んで、お確かめください。
こんな人におすすめです!
これから高校生になる人へ:新しい部活に入る「楽しみ」・「不安」。そのどちらの気持ちにも答えてくれる、最高の部活動小説です。
受験勉強で古典に疲れている人へ:「平安=テスト範囲」ではなく「平安=マジいみじ!」になる小説です。
かつての学生だった大人へ:「あの頃、もしこんな部があったら」と懐かしく想像しながら読める一冊です。
ちょっと疲れている社会人へ:ドロドロした展開がなく、登場人物が素直でまっすぐ。心のリフレッシュ剤としてぜひどうぞ!
最後に
「平安部」、これもシリーズ化されそうですね。
次はどんな平安ネタが登場するのか、今から楽しみです。
でも、そろそろ、成瀬の続編も読みたい。
作者様、よろしくお願いします。
ちなみに、小学館のサイトで、平安部の「6人目の部員」を募集してましたが、今からでも行けますか?
え?
私で120万6人目!?
……ですよねー。(嬉し悲しガックリ)
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
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