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自分の運転で、生きていく~大人になった私から、あの日、車の後部座席で眠っていた私へ

気がつけば、私は人生という車の「運転席」に座っていました。

小さな頃は、誰かが運転する車の後部座席で、
ただ外の景色を眺めていればよかったのです。

親や先生が決めたルートを進み、私はそれに身をまかせていれば、
たとえ眠っていたとしても、目的地にたどり着いていました。

私は、いつの間にか大人になり、
後部座席から、「運転席」へと移動していました。

今、私は知っています。

「生きていくということは、
 自分のルートを、自分自身の運転で進むことなのだ」
と。


ある名言より

「安心って言うのは、車の後部座席で眠ることさ。
前の席には両親がいて、心配事はなにもない。

でもね、ある時、その安心は消え去ってしまうんだ。
君が前の席にいかなきゃならなくなるんだよ。

そしてもういない両親の代わりに、
君が誰かを安心させる側になるんだ。」

これは、スヌーピーの友達、チャーリー・ブラウンのセリフとして広く知られている言葉です。

でも、実際の原作『PEANUTS』(チャールズ M.シュルツ)には、
そのものズバリの台詞はありません。

正確にはこうです。

Peppermint Patty: "What do you think security is, Chuck?"
ペパーミント・パティ:
「安心って何だと思う、チャック?」


Charlie Brown: "Security? Security is sleeping in the back seat of the car when you're a little kid, and you've been somewhere with your Mom an Dad, and it's night and you're riding home in the car. You can sleep in the back seat. You don't have to worry about anything. Your Mom and Dad are in the front seat, and they do all the worrying...they take care of everything."
チャーリー・ブラウン:
「安心?安心ってのは車の後ろの座席で眠ることさ!
君は小さな子供で、お母さんやお父さんといっしょにどこかへ遠出したとする。あたりはもう夜だ。君たちは車でうちへ帰るところさ、その時君は後ろの座席で眠れる。君は何にも心配なくていい。お母さんとお父さんは前の座席にいる。そして心配ごとは全部引き受けてくれる。何もかも面倒をみてくれる。」


Peppermint Patty: "That's real neat!"
ペパーミント・パティ:
「本当にすてきね!」


Charlie Brown: "But it doesn't last! Suddenly you're grown up, and it can never be that way again! Suddenly it's over, and you'll never get to sleep in the back seat again! Never!"
チャーリー・ブラウン:
「でもこれはいつまでも続かないよ! 突然君は大人になる。
そしてもう二度とこういう具合にはいかなくなるのさ。突然それは終わりになる。
君は二度と後ろの座席で眠れなくなる。もう決して眠れないのさ!」


Peppermint Patty: "Never?"
ペパーミント・パティ:
「決して?」


Charlie Brown: "Absolutely never!"
チャーリー・ブラウン:
「絶対にだ!」


Peppermint Patty: "Hold my hand, Chuck!"
ペパーミント・パティ:
「私の手をしっかりにぎって、チャック!」


これはこれで、とてもいいですよね。

最後、不安になったパティが、
「手をにぎって」と訴えるところまで、完璧な流れです。

ネットで流布している「非公式の名言」には、
原作にはない、次の言葉が付け加えられていたんですね。

「君が前の席にいかなきゃならなくなるんだよ。
 そしてもういない両親の代わりに、
 君が誰かを安心させる側になるんだ。」
――

でも、私は思うのです。

この、非公式に「追加された部分」こそが、
この名言の「核」なのではないか、と。


気づくのは前の席に座った後

子ども時代、「後部座席の安心」がどんなものだったか……。

私たちはその時にはわかりません。

ただ、当たり前に、座っていただけ、眠っていただけ。
そして、ただ、運ばれていただけ。

それがどれほど大きな「安心」だったか、
どれほど守られていたのか、
それに気づくのは「もう前の席に座ったあと」なのです。

ふと気づけば、前の席に誰もいない。
ハンドルを握っているのは、自分――

地図もない夜道を、不安と責任を乗せて進んでいく。

眠っている誰かの顔を見ながら、
かつて、自分もこうして運ばれていたことを思い出す。

そのとき初めて、
「後部座席の記憶」が、胸の奥からあふれ出す。

安心して眠っていた日々。
何も考えずに、ただ“そこにいるだけ”でよかった時間。

前の席にいる人たちは、私の知らないところで、
私のために心配し、気を張り、
道を選び続けてくれていたのだと――

ようやく、わかる。

ようやく。

――そして今、私は「運転席」に座り、
「後部座席」を守る側になっています。

もうあの席には戻れません。
あの眠りは、もう二度と訪れないでしょう……。

でも、人生って、そういうものですよね。

あの日、安心して眠ることができた子どもだった私が、
今は誰かにとっての「安心」の、前の席に座っている。

そのことに、ただ静かに、感謝したいのです。


大人になるということは

自分の人生の運転席にいるということは、
すべてを自分で決めるということです。

どこに向かうか。
どの道を選ぶか。
いつ曲がるか。
どのくらいのスピードで走るか。

誰かが「こっちに行けば?」とアドバイスしてくれることはあっても、
実際にハンドルを切るのは自分。

ブレーキを踏むのも、アクセルを踏むのも、自分。

そして、何より――
事故を起こしてしまっても、その責任を取るのは自分自身なのです。

大人になるということは、
「車の鍵」を手渡されることなのかもしれません。

「さあ、好きなところへ行きなさい」と。

でも実際には、目的地も地図も、ナビも与えられません。

「君は今日から運転席だ」と誰かに面と向かって言われていたなら、
きっと、途方に暮れていたことでしょう。

誰かが、人生を“良い場所”まで連れて行ってくれることなんて、
ないのです。

運転するのは、自分自身。

後部座席に座っていたあの頃のような、
「運ばれていく人生」は、もう終わったのです。


自分で選んだルートを進む

人生というドライブには、一本道などありません。

無数の交差点があり、右に行けば海、左に行けば山、
まっすぐ行けば渋滞に巻き込まれる――

そんな選択の連続です。

しかもやっかいなことに、どの道を選んでも、
「正解かどうかは後になってみないとわからない」のです。

だから、私は今、自分にこう言い聞かせています。

「まずは、自分で選んだ道を、自分の速度で走ってみよう」と。

ナビはありませんが、地図は少しずつ頭の中に描かれていきます。

道に迷ったときは、いったん停まって、深呼吸して、
道端の景色を見渡してみる。

それもまた、自分で運転する人生の楽しみの一つです。

今でも、後部座席が恋しくなることはあります。
「誰か代わりに運転してくれないかな」と思う日もあります。

でも、やっぱり、
自分でハンドルを握っているからこそ見える景色もあるのです。

失敗も寄り道も、全部、自分の運転の一部。

そんなふうに思えるようになってきた今日この頃。

自分で選んだルートを、自分で進んでいく。

人生のハンドルを握るというのは、そういうことなのだと思います。


あとがき

このエッセイを書き終えて、
あらためて感謝したい人たちがいます。

まず、かつて私を後部座席で安心して眠らせてくれていた両親へ。
その安心は、当時の私にとってあまりに自然すぎて、
気づくことさえできませんでした。
でも、今ならわかります。
あの時間が、どれほど大きな贈り物だったのかを。

そして今、私が“前の席”にいることを当たり前にしてくれている家族へ。
守るべき誰かがいるということが、
自分の弱さを抱えながらも、前を向かせてくれています。

さらに、チャーリー・ブラウンとその原作の言葉たちに。
(もちろん、作者のシュルツ氏にも!)

そして、原作とは少し違うけれど、
あの“非公式の名言”を編み出し、広めてくれた、名も知らぬ誰かに!

あの言葉が、私の記憶を呼び起こしてくれました。

誰かが言葉を紡ぎ直し、それが別の誰かの人生にそっと灯りをともす。
その連鎖のなかで、私もまた、こうして文章を書いています。

そして願わくば、このエッセイもまた、
誰かの人生に灯りをともすことができますように――


たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
「なんかいいかも」と感じていただけたら、
スキやフォローで合図を送ってもらえると、とても励みになります。
どうぞ、よろしくお願いします。


<スヌーピーの名言を元にしたnote>

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