ありがとう【#シロクマ文芸部】
ありがとう、先輩。つい先ほどまで感謝していた。教えてもらった『お金配り』のサイトに登録したおかげで推し活資金として二十万円を手に入れることができたからだ。
そしていま、突然百万円が振り込まれ、非通知設定の電話が着信している。
『タンタン タタタン タタンタン』
5回ほど鳴って切れた。
『ポンッ』
SNSの通知音が鳴った。スマホを見ると『でろ』とだけ表示されていた。
『タンタン タタタン タタンタン』
非通知設定の電話が着信している。3回ほど鳴って切れた。
『ポンッ』
SNSの通知音が鳴った。スマホを見るとタクヤのフルネームが表示されていた。
『タンタン タタタン タタンタン』
思わずスマホを落としてしまった。慌てて拾おうとしたがなかなかうまく拾えない。手が震えている…
「も、もしもし…」
「いるんなら、さっさと出ろやっ!」
「す、すみません」
「百万、振り込まれたやろ」
「は、はい」
「今すぐおろして持ってこい」
「い、いまですか?」
「そう言ったやろ」
「はいっ。この前のファミレスですか?」
「いつも降りてる駅の改札口で待っとけ」
「いつもって、御茶ノ水橋口ですか?」
「そうや」
それだけ言うと電話は切れてしまった。なんなんだ?この前とは打って変わって怖い声で。また間違って振り込まれたから怒っているんだろう。きっとサンタ男はボンボンで親からお金を振り込んでもらっているに違いない。
タクヤは無理矢理そう思うことにして、銀行のATMの前に立った。ATMを操作しようとしたとき、ステッカーが目に留まった。
『振り込め詐欺にご注意!』
(ドーン ドーン ドーン ドンド ドンドン)
(ドーン ドーン ドーン ドンド ドンドン)
脳内でティンパニが鳴り始めた。
(【警戒】)
ATMの画面が次々に赤色へと変わり、警告音が鳴り響いている。
(パターン青!サギです!)
(AT……ド、どうなっているんだ…)
(急いで…)
(ちがう…)
(急いで…)
(ちがう…)
「急いで…」
(ちがう、ちがう、ちがうっ!ちがうって言ってるじゃないですか!)
「あのぉ」
「は、はい…」
「急いでもらえませんか?皆さん並んでますので」
「は、はい…」
タクヤは百万円をおろすと小走りに銀行を出た。
振り込め詐欺なんて誰が引っかかるんだ?そう思っていた。銀行口座アプリで今回と前回の振込人を確認してみた。異なる人物だった。共通しているのはいかにも昭和らしい女性の名前だった。
タクヤの銀行口座が振り込め詐欺に使われている。そう思うほかなかった…
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