誕生日_03【シロクマ文芸部】【オートリバース】
(誕生日にドラクエ3を買ってもらおうかなぁ)
休み時間に本を読むふりをしながら、そう考えていた。ドラクエ3からはデータがバックアップできるようになるらしい。ドラクエ2で『復活の呪文』を間違えてやり直すことがなくなると思うと、すごい進歩だ。
ただ、予約をしても発売日当日に買えるかどうかはわからない。ドラクエ2のときは、お父さんと一緒に朝早くに並んで、ギリギリで買うことができたのだが…
『わーっしょい!わーっしょい!』
廊下がやけに騒がしかった。僕のクラスでは奇妙な遊びが流行っていた。それは『胴上げ』と呼ばれていた。奴らは廊下の左右に一列に並んで、その間を歩いた生徒を捕まえて胴上げするのだ。
くだらない。
僕は休み時間にトイレへ行くときは、そこを通らないように廊下で待っていて、授業が始まるタイミングで教室に入ることにしていた。
その日も廊下で待っていて、そろそろ教室に戻ろうとしていた。
「お前ら、何やってんだっ!」
恐ろしい体育教師が怒鳴り声をあげて近づいてきた。ちょうど奴らが誰かを胴上げをしているところだった。
「誰だ、こんなくだらないことを考えた奴はっ!」
「…黒田です」
奴らは全員、僕の顔を見ている。視線が痛い。関係のない僕は無視して教室に入ろうとした。
「おい、待て。お前が黒田か?」
「えっ?」
「職員室まで来いっ!」
「えっ、ちょっと…」
体育教師に首根っこを捕まれた。廊下にいる奴らを見ると、憐れむような顔や、にやっとした顔など様々だった。職員室に入ると、今度は先生たちの視線が痛かった。
「なんであんなことしたんだっ!」
「知りません…」
「なに?」
「僕じゃありません…」
「しらばっくれてんじゃねぇ!みんなオマエだと言ってたぞっ」
「…」
僕は何も言えなくなってしまった。頭の中で最近よく聞く曲を再生しながら、嵐が過ぎるのを黙って待つことにした。
8月の風を 両手で抱きしめたら
イマジネーション 飛び立つのサヴァンナへ
輝く銀色のセスナは ふたりを乗せ
遥かな国境を 今超えるよ
飛行機に乗って外国にでも行ったら、繰り返される毎日から抜け出せるのだろうか?
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
毎週ありがとうございます。
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