ドイツ一人旅_悟りの境地_14_02【海外旅行】
1999年冬 14日目 ラウターブルンネン ~ ユングフラウヨッホ
Nさんは留学経験があり英語はネイティブに近かった。
「英語を話せるなんてすごいな。羨ましいよ」
「ねえ、ヨーロッパの人達が陰で日本人に向かって何て言うてるか知ってる?」
「どういうこと?」
「知らなくて、ええこともあるんよ」
初めは意図がよくわからなかったが、話しているうちにだんだんわかってきた。Nさんの英語はネイティブに近い。それを知らない周囲のヨーロッパの人達は単に日本人が歩いていると思い込み、どうせ言葉が通じないのだからと人種差別的な言葉で陰口を叩いているそうだ。
『知らぬが仏』とはこのことで僕は全く気づいていなかった。というよりは考えてもみなかった。
「旅行するだけなら、英語なんて話せんでもええのよ」
悟りを開いたかのようにつぶやいた。きっと留学中に色々と嫌な目にあったのだろう。Nさんのどこか投げやりな態度は、無知な人のそれではなく、何かを超越してしまい諦めの境地に入ってしまった様に感じた。
登山鉄道はクライネ・シャディック駅に到着し、ここで乗り換えることになる。これまで乗ってきた登山鉄道にはスキー板を載せる車両が連結されていた。スキーヤーはここで下車し、滑り降りていく。
ユングフラウの麓の山は全てがスキー場といっても過言ではなかった。見渡す限りがスキー場でみんなゆったりと滑っていた。
ここで滑れたら気持ちいいだろうな、とスキーの誘惑にかられたが、まずは山頂を目指すことにした。
次の話 (表示されない場合は次回更新までお待ちください)


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