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shigekumasaku
誕生日【#シロクマ文芸部】
誕生日に常連のお客様からボールペンを頂いた。とても手に馴染んでいて、オーダーを取るときに書きやすく、エプロンのポケットへの収まりもいい。
来年の誕生日で三十路になることを考えるとため息が出そうになるが、いくつになっても誕生日にプレゼントを貰えることは、なんだかんだと言っても嬉しいものだ。
マスターからは映画のチケットを頂いた。しかも2枚。いたずらっぽく微笑みながら手渡してくれた。
この前、話題になった映画のことを覚えていてくれたのだろう。ちょっと変わった映画なので友人は誘いづらく、ましてや一緒に見に行ってくれる彼氏はいなかった。
常連のお客様を誘ったら一緒に行ってくれるだろうか? 誕生日にボールペンを頂いたお礼だと伝えたら自然だろうか?
「いらっしゃいませ!」
「優衣さん、こんばんは」
「和彰くん、こちらの席へどうぞ」
「ありがとうございます」
和彰くんは3年くらい前から週に何回か喫茶店『ロイヒテン』に足を運んでくれる常連のお客様だった。マスターが和彰くんと呼んでいるので、私もいつの間にか名前で呼ぶようになっていた。和彰くんも私のことを名前で呼んでくれている。
「今日は何にしますか?」
「ナポリタン、お願いします。あれ?」
「どうかしました?」
「暑いんですか?耳が真っ赤ですよ」
「えっ!あれっ?そうかな?急に寒くなったから暖房を入れたせいかもね」
「そうでしたか」
「マ、マスター。温度を下げてください」
「はい」
マスターはいたずらっぽく微笑みながらエアコンの設定温度を下げた。
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