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詩と暮らす【#シロクマ文芸部】

詩と暮らす日を夢見てタクヤはバイトに明け暮れていた。詩はいわゆる地下アイドルのメンバーの一員だった。たまたま見かけた動画で一目惚れして、その日から推し活が始まった。

それまで無料視聴していたライブ配信で思い切って千円を投げ銭したところ、なんと詩から名前を呼ばれてお礼まで言われた。もう、それだけで舞い上がってしまった。それから、徐々に課金が増えていき、バイト代の全てを推し活に捧げるようになっていた。

バイト先はファストフード店で時給の高い深夜帯のシフトに積極的に入っていた。更に割り増しでワンオペを対応することもあった。その影響もあってか大学の授業はほとんど寝てばかりいたため、単位はギリギリの状態だった。

それでも推し活を止めることはできなかった。バイトの稼ぎが少ないときは消費者金融に手をだそうかと思ったこともあったが、さすがに踏みとどまっていた。もっと手っ取り早く稼げる方法はないだろうかと日々思案していた。

今日は他のメンバーを推している大学の先輩と一緒にライブに行った。ライブで見る詩は眩しく、それこそ気を失うような恍惚な気分になれた。

ライブの帰りに先輩と夕飯を食べることにした。牛すじシチューかけハンバーグが評判の洋食店があるので行ってみないかと誘われたのだった。

さすが人気店だけあって行列ができていたが15分ほどで店内に入ることができた。運ばれてきた牛すじシチューかけハンバーグは評判通り美味しかった。とくに牛すじシチューが絶品で一緒に頼んだパンを浸して食べると、このうえない幸せを感じることができた。

ふと隣のテーブルを見るとアラサーカップルが手を繋いでお互い見つめあっていた。なにを洋食店でいちゃついているんだと思いながらも、いつか詩と一緒に…

「…るよ」

「えっ?すみません。考え事してて」
「今日はおごるよって言ったんだよ」

「マジっすか?おごってくれるんすか」
「タクヤもさ。お金配り。フォローしなよ」

(つづく)



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