25億回の振動、心臓の音階は「ソ」だった|西洋医学と東洋医学、両方で体を見たら面白かった話

この世の中に、震えていないものはほとんどない。

人間も、建物も、地面も、空気も。
形のあるものだけではなく、音も、熱も、鼓動も。
絶えず揺れながら動いている。

私は昔から、そういう「震え」に強く惹かれてきた。


📖 数万円の本と、見えない読者

以前、ドイツの振動医学に興味を持ったことがある。

振動医学は、東洋医学の経絡やツボの考え方を、西洋の物理学で使う「周波数」という言葉で読み替えようとした発想らしい。

その関連書籍は数万円した。
それでも私は迷わず買った。
OCRをかけて、スクリーンリーダーで一ページずつ読んだ。

科学的な評価が定まっているとは言いがたい分野だと思う。
それでも私は、その発想そのものには強く惹かれた。

たぶんそれは、目が見えない私にとって、 「振動」がただの比喩ではない からだ。

私は空気の震えを感じる。
曇りの日と晴れの日では、空気の質感が違う。

地面をたたいた白杖の音が、放射状に広がる日もある。
まっすぐ正面にのびていく日もある。
周囲に余計なものがないと、音の振動は遠くまで届く。

見えない私にとって、振動は世界を知るための言語だ。

だから、体のこともまた「振動するもの」として考える視点に、どこか腑に落ちるものがあった。


⚕️ 測る医学と、整える医学

西洋医学は、体を測る。
脈拍、心電図、血圧、呼吸数。
数字にして、変化を追い、異常を見つけていく。

一方で東洋医学は、体を整える。
気や血のめぐり、冷えや熱、張りや滞り。
まだ言葉になりきらない変化を見ていく。

どちらが正しいというより、 見ている角度が違う のだと思う。

西洋医学が拍動としてとらえるものを、東洋医学は響きとして見ていた。
そう考えると、同じ体でも急に奥行きが出てくる。


💓 25億回、止まらない

たとえば心臓だ。

西洋医学で見れば、心臓は休みなく拍動を続ける臓器だ。
電気信号に従って収縮と拡張をくり返し、血液を全身に送り出している。

当たり前すぎて忘れがちだけれど、これだけでも十分にすごい。

1分間に60回、脈を打つとする。
1時間で3600回。
1日で86400回。
1年でおよそ3150万回。

80年生きると、およそ25億回になる。

25億回。
休憩なしで、止まることなく。

生まれた瞬間から最期の一拍まで、心臓は黙って働き続けている。
これほど真面目な臓器を、私たちはふだん意識すらしない。


🎵 心臓の音は「ソ」

でも東洋医学の側から見ると、心臓はただのポンプではない。

五行思想には「五音」という考え方があって、臓器に音が対応している。

肝はミ。
心はソ。
脾はド。
肺はレ。
腎はラ。

現代の音階にそのまま重ねるのは乱暴かもしれない。
けれど、心臓には「ソ」が割り当てられている。

心は「火」に属し、音は「ソ」。

私はこれを知ったとき、妙に納得した。

心臓は、静かな臓器ではない。
ずっと鳴っている。
ずっと揺れている。
ずっと体の中心で、自分の存在を知らせ続けている。

西洋医学の言葉で言えば拍動。
東洋医学の言葉で言えば響き。

言い方は違うのに、どちらも心臓を「止まらないもの」として見ているのが面白い。


25億回の鼓動を、もし音として考えたらどうだろう。

この世でいちばん長い「ソ」の音が、80年かけて鳴り続けている。

そう思うと、心臓はただ血を送る臓器ではない。
自分という人間を内側から支えている楽器のようにも思えてくる。


前回はハートの「形」の話を書いた。
今回は、心臓の「震え」の話を書いた。

形は目に見える。
でも振動は、目には見えない。

見えないけれど、確かにそこにある。
止まることなく、今日も体の中で鳴っている。


見えない映像クリエイターが作った動画

白杖の先に目がついていたら何が見えるのか、点字ブロックをたどる安心感と途切れた瞬間の不安をAIで映像化した動画です。記事で書いた「振動は世界を知るための言語」を、映像で体感できます。

https://www.youtube.com/watch?v=5kRf-MucXY8


📎 お時間があれば、こちらの記事もお手にとっていただけると嬉しいです

前回は心臓の「形」について書きました。今回の「震え」と合わせてどうぞ。

ハートは心臓の形じゃない|西洋医学と東洋医学、両方で体を見たら面白かった話

体の真ん中にある「軸」を、西洋と東洋の両方から見た話です。

西洋医学と東洋医学、両方で体を見たら面白かった話 体の軸編

東洋医学の「気」を、ドラゴンボールで読み解いた回です。五行が気になった方はこちらもぜひ。

オラに元気を分けてくれ 耳で聴いたら気づいてしまった 東洋医学とドラゴンボールの話


#エッセイ #視覚障害 #全盲クリエイター #身体についてのひとりごと #東洋医学 #セルフケア

いいなと思ったら応援しよう!