西洋医学と東洋医学、両方で体を見たら面白かった話 花むずむず編
3月になった。
鼻がむずむずする季節だ。
今この瞬間、鼻に手をやっている人もいるかもしれない。
その「手をやる」という動作を、西洋医学と東洋医学の両方から眺めてみた。
すると、まったく違う理論が、同じ場所にたどり着いていた。
私にはこの話に、少しだけ特別な理由がある。
触れることでしか世界を知れない体で生きているからだ。
その話は、後で。
🤧 あなたは今、鼻を触っていませんか
くしゃみが出そうで出ない。
鼻の奥がむずむずする。
ティッシュの箱が手放せない。
この季節の風物詩だ。
しかし、ここで一つ聞きたい。
花粉症の人は、花粉が飛んでいない部屋の中でも、なぜか鼻に手がいく。
そんな経験はないだろうか。
花粉がなくても、知らず知らずのうちに鼻のあたりを触っている。
あれは、何なのか。
「ただの癖でしょ」と言われればそれまでだ。
でもどうやら、あの無意識には理由がありそうだ。
🔬 西洋医学で見る「鼻むずむず」
まず西洋医学の話から。
花粉が鼻の粘膜に付くと、体は「敵が来た」と判断する。
IgE抗体という見張り役が、肥満細胞という倉庫番に合図を送る。
そしてヒスタミンが放出される。
このヒスタミンが三叉神経を刺激する。
三叉神経とは、顔の感覚を脳に届ける神経だ。
ポイントはここだ。
三叉神経の第2枝は、ちょうど鼻の脇を通っている。
だから鼻がむずむずし、くしゃみが出て、鼻水が流れる。
全部、この神経とヒスタミンの連携プレーだ。
ちなみに、ヒスタミンは鼻だけでなく、脳の覚醒にも関わっている。
花粉症の薬を飲むと眠くなるのは、ヒスタミンを抑えるからだ。
鼻の症状を止めるついでに、脳の「起きていよう」という信号まで弱めてしまう。
鼻を止めたら眠くなる。体はつながっている。
🌿 東洋医学で見る「鼻むずむず」
ここからが本題だ。
東洋医学には「五行」という考え方がある。
自然界のあらゆるものを、木・火・土・金・水の5つに分類する。
季節も、臓器も、感情も、この5つのどこかに属する。
「金」に属するのは、秋、肺、大腸、鼻、そして悲しみ。
少し面白いのは、「金」の感情が悲しみや憂いであることだ。
秋になるとなんとなく物悲しくなる。
あの感覚を、東洋医学は千年以上前から「肺と同じ気の乱れ」として捉えていた。
鼻も肺も悲しみも、同じ「金」に属する。
体と心を分けないこの発想が、東洋医学の面白いところだ。
さて、ここで大事なポイントがある。
肺と大腸が同じ「金」のグループに入っていることだ。
西洋医学では、肺と大腸はまったく別のシステムとして扱われる。
しかし東洋医学では、この2つは表と裏の関係にある。
そして、大腸の経絡(気の通り道)がある。
手の人差し指から始まり、腕を上がり、肩を越え、顔に至る。
終着点は、鼻の脇だ。
そこにあるツボの名前が、 迎香(げいこう) 。
「香りを迎える」と書く。
鼻づまりを通すツボとして、東洋医学では古くから知られている。
もう一つ紹介したいツボがある。
手首の内側、脈が打っているところ。
そこに 太淵(たいえん) というツボがある。
こちらは肺の経絡に属する。
呼吸器系を整えるツボだ。
ここで気づいただろうか。
大腸の経絡が鼻の脇に届き、肺の経絡が手首にある。
肺と大腸。
まったく別の臓器が、東洋医学では「金」という同じ属性でつながっている。
鼻と手首という離れた場所を結んでいる。
🔄 二つの医学が重なる場所
さて、ここからが面白い。
西洋医学で言う三叉神経の第2枝。
鼻のむずむずを脳に伝える神経だ。
この神経の末端が通る場所は、鼻の脇。
東洋医学で言う迎香穴。
大腸経の終着点で、鼻づまりに効くとされるツボだ。
このツボがある場所も、鼻の脇。
同じ場所だ。
名前が違う。理論が違う。歴史が違う。
でも、たどり着いた場所が同じだ。
偶然だろうか。
ん~、やはり面白い。 笑
👃 無意識の手が教えてくれること
ここで冒頭の話に戻る。
鼻がむずむずすると、私たちは無意識に鼻に手をやる。
鼻の脇を触る。こする。押さえる。
花粉症の人は、花粉のない部屋でも、つい鼻のあたりに手がいく。
あの動作は、西洋医学的に見れば「三叉神経が刺激された反射」だ。
でも東洋医学的に見れば、迎香穴を自然と刺激している動作とも言える。
つまり、体が勝手にツボを押している。
もう一つ。
不安なとき、緊張しているとき、手首を触る人がいないだろうか。
脈を確かめるように、手首の内側に指をあてる。
あの場所に太淵がある。
肺の経絡を、無意識に触れている。
触れる。撫でる。押さえる。
私たちは気づかないうちに、体が必要としている場所に手を伸ばしている。
そういうことなのかもしれない。
👐 触れることしかできない私の話
私は全盲だ。
情報のほとんどを、耳と手で受け取っている。
花粉症の季節は、正直つらい。
白杖を持つ手で鼻をかみたいが、白杖を手放せない場面がある。
目がかゆくても、こすると余計にひどくなる。
見えない上に、くしゃみで一瞬だけ方向感覚が飛ぶ。
花粉は、見える人にとっても見えない敵だ。
でも見えない人間にとっては、もう一段厄介な存在になる。
だからこそ、私は「触れる」ケアに意味を感じている。
迎香を押す。太淵を撫でる。
薬ではない。魔法でもない。
でも、道具がなくても、目が見えなくても、自分の手だけでできる。
触覚だけで見つけられる場所に、体を整えるポイントがある。
東洋医学のこの設計に、私は少し救われている。
🎯 やってみよう:2つのツボ
試しに、今すぐやってみてほしい。
迎香(げいこう)
小鼻の脇、少しくぼんだところ。
やさしく押す。それだけでいい。
ちなみに、大腸の経絡は反対側の鼻に届く。
右手で左の小鼻を、左手で右の小鼻を。
鼻がすっと通る感覚があったら、そこだ。
太淵(たいえん)
手首の内側、親指の付け根の下あたり。
脈が打っている場所だ。
反対の手の親指でやさしく押す。
呼吸が少し楽になる感覚があれば、そこだ。
効く効かないは、正直、人による。
でも、触れることで少し落ち着く人もいる。
まずは1分だけ、試してみてほしい。
どちらも、道具はいらない。
電車の中でも、布団の中でも、白杖を持ったままでも。
自分の手さえあれば、いつでもできる。
迷ったとき、つらいとき、自分の手で自分に触れられること。
それだけで、少しだけ安心できることがある。
⚖️ 体は一つ。見方は二つ。
鼻がむずむずする。
西洋医学は「ヒスタミンと三叉神経の反応です」と言う。
東洋医学は「金の気が乱れ、肺の憂いが鼻に出ています」と言う。
言葉はまるで違う。
でも、どちらも鼻の脇を指している。
どちらも「触れること」に意味を認めている。
今度、鼻に手がいったとき、少しだけ思い出してほしい。
あなたの手は、ちゃんと正しい場所に向かっている。
体は一つ。見方は二つ。
そしてあなたの手は、どちらの見方にも、ちゃんと届いている。
※ この記事は個人の体験と学びをもとに書いています。
鍼灸師はツボを押し、鍼を打ち、実際に結果を出しています。
西洋医学には西洋医学の治療がある。
東洋医学には東洋医学の治療がある。
見方が違えど、治療の道は二つある。
症状がつらい方は、どちらの扉を叩いてもいいと私は思います。
🎬 動画で見る
「触れること」の意味を、こちらの動画でも感じていただけるかもしれません。
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