西洋医学と東洋医学、両方で体を見たら面白かった話 手のひら編
子どもの頃、こう言われたことはありませんか。
緊張したら、手のひらに「人」という字を3回書いて飲みなさい。
今はあまり言わないかもしれない。でもこの話、知っている人は多いと思います。
おまじないだと思っていました。
ところが調べてみると、あの動作を西洋医学と東洋医学それぞれの見方で眺めたとき、面白い共通点が見えてきました。
しつこいですが、私は体についての専門家なんです。 笑
なので、こういう昔からある動作を見ると、つい身体の仕組みで考えたくなります。
この記事は、前回の「体の軸編」の第二弾です。
前回の記事
西洋医学と東洋医学、両方で体を見たら面白かった話 体の軸編
たくさんのスキをいただきました。ありがとうございます。
今回のテーマは、手のひら。
早速、本題いってみましょう。
🖐️ 手のひらは「神経の密集地帯」 西洋医学の視点
手のひらは、体の中でもかなり特殊な場所です。
足の裏と並んで、末端でありながら感覚神経が極めて密集している。血管も細かく張り巡らされている。
緊張すると手のひらに汗をかく。いわゆる精神性発汗です。
これは手のひらが自律神経と深くつながっている証拠でもあります。
ここを意識的に刺激すると何が起きるか。
末端の血流が促進され、自律神経のバランスが整い、全身のリラックス効果が期待できる。
「手を握ると落ち着く」「手をもむと気持ちが楽になる」。
聞いたことがある人も多いと思います。
あの感覚は、単なる気のせいだけでは片づけにくいものだと思います。
手のひらを意識して動かすこと自体が刺激になって、緊張が少しほどける人は少なくありません。
少なくとも、昔のおまじないには、体を落ち着かせる動作としての一面がありそうです。
✋ 手のひらは「気の通り道」 東洋医学の視点
東洋医学でも、手のひらと足の裏は体の中で特別な場所です。
東洋医学では、体のはたらきを経絡(気の通り道)という見方で捉えます。鍼灸で使われる名称や経穴の整理は、WHO関連の標準化文書でも扱われています。
手のひらと足の裏は、その経絡が集中する要所です。刺激を加えることで全身の気の巡りに影響を与える、いわば体のスイッチのような場所。
古典でも、手のひらへの刺激を重視する記述が見られます。
そして手のひらのほぼ中央に、「労宮」というツボがある。
この名前が面白い。
「労」は働く。「宮」は宮殿。格の高いツボであることが名前に刻まれています。
では、ここで実際にやってみてください。
手のひらに「人」という字を書く。
一画目を書く。二画目を書く。二つの線が交わる場所。
そこに、労宮がある。
つまり「人」という字を書くと、一画目で一回、二画目でもう一回、労宮を通過する。
おまじないは、ツボを2回刺激する動作だったのです。
そしてそれを「飲む」。
書いた字を手のひらで包み込み、口に運ぶ。
東洋医学的に言えば、労宮に集めた良い気を体内に取り込む動作です。
ここから先は半分は私の感覚ですが、信頼している人に手を取ってもらうだけでも、落ち着きやすくなる人はいると思います。「人」の字を書いてもらう行為には、意味づけの力も乗るのかもしれません。
ふたつの視点が、また同じ場所を指している
前回の記事では、丹田と人体の重心が同じ場所でした。
今回も、西洋医学と東洋医学が同じ場所を指しています。
西洋医学は「神経と血管の密集地帯」と言い、東洋医学は「経絡の要所」と言う。
そして「人」という字を書いて飲むという、一見おまじないに見える動作が、両方の見方から眺めたとき、理にかなって見える。
昔の人は、理屈を知らなかったかもしれない。
でも体の声を聞き続けた結果、同じ答えにたどり着いていた。
伝統医学には、長く受け継がれてきた観察の知恵があると私は感じています。もちろん、そこには効果の実感だけでなく、文化や習慣として受け継がれてきた面もあるはずです。だからこそ、現代の視点で見直すと面白いのだと思います。
数千年前の先人の知恵。私はそれがとても好きです。
🤝 さらにもうひとつだけ。握手と、手をつなぐこと
ここまで読んで気づいた方もいるかもしれません。
握手をする。好意のある人と手をつなぐ。
あの安心感にも、両方の見方から説明ができそうです。
西洋医学では、信頼できる人との肌の接触が安心感や幸福感に関わるホルモンの分泌を促すと考えられています。手のひらは感覚神経が密集しているからこそ、触れた瞬間の安心感が全身に伝わりやすい。
東洋医学では、手のひら同士が触れ合うとき、互いの労宮が向き合うことになります。気の交流が起きる場所と場所が重なる。
握手で気持ちが通じた気がする。手をつないで安心する。
あれは気のせいじゃない。文字通り「気」のせいかもしれないし、神経とホルモンのせいかもしれない。
どちらにしても、手のひらは人と人をつなぐ場所なのだと思います。
そしてもうひとつ、私が気になっていること。
生まれたばかりの赤ちゃんは、手のひらに触れたものを反射的にぎゅっと握ります。把握反射と呼ばれる原始反射です。
まだ何も学んでいないのに、手のひらへの刺激に体が勝手に反応する。
考えてみれば、赤ちゃんが親の指を握るあの瞬間が、手のひらで人とつながる最初の体験です。
手のひらが特別な場所だということを、体は生まれた瞬間から知っていたのかもしれません。
ただし、感染症等のリスクもあります。むやみに他者と手をふれ合うことを勧めているわけではないので、そこは誤解なく。
おわりに
エビデンスについてはさまざまな見解があるので、そこは読者の皆さんや専門家に委ねます。
ただ、ひとつ言えること。
数千年前の人が「ここを押すと落ち着く」と言い、現代の医学が「ここには神経が密集している」と言う。
その二つが、手のひらの同じ場所で出会っている。
体は一つ。見方は二つ。
そして今回もやっぱり、二つの見方が同じ答えにたどり着きました。
次にあなたが緊張したとき。
手のひらに「人」と書いて、飲んでみてください。
やるなら、息をゆっくり吐きながら、手のひらに大きく3回。急いで書くより、その動作そのものを味わうつもりで。
おまじないだと思っても、医学だと思っても、どちらでもいい。
それで少し楽になるなら、あなたにとって使える対処法のひとつかもしれません。
ただし、緊張や不安が強いとき、長く続くときは、無理せず医療機関に相談してください。
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今回の記事の前編。丹田と重心が同じ場所だった話。まだの方はこちらからどうぞ。
見えない映像クリエイターが作った動画
触れて感じる安心 肩車だって、押すことだって立派な協力の仕方
触れることで相手の存在がわかる。今回の記事で書いた「手のひらが人と人をつなぐ」というテーマを、映像でも感じていただけます。
