マダニとSFTS ~人もペットもマダニに注意。マダニ媒介感染症SFTS増加中
マダニとは、哺乳動物の血を吸血する大型のダニです。毎年死亡者が出ている深刻な感染症「SFTS」を媒介するために近年特に問題になっています。
マダニが媒介するSFTSは、マダニに刺されたことによる人への感染だけでなく、ネコや犬などペットへの感染や、ペットを介した人への感染も要注意です。
マダニとは
マダニは、哺乳動物の血を吸血する大型のダニで、人の命に関わる感染症のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)や日本紅斑熱などを媒介するために近年特に問題になっています。
活動は、春から秋(3月~11月)にかけて活発になります。1m以下の低めの植物の陰に潜んで、動物や人を待ち伏せして飛びつきます。やわらかい部位の皮膚を探して刺し、吸血します。マダニの唾液には麻酔の作用があるので刺されてもなかなか気づきません。7~10日間で飽血(満腹状態)すると離れます。
野生の哺乳動物は、多くのマダニを運んでいます。近年は野生動物の分布の拡大に伴い、田畑のあぜ道や、住宅地に近い草むらなどにもマダニがいるケースがみられるようになりました。
今年に入っても、各地でのクマの出没が相次いでいます。また大阪の市街地にシカが、名古屋にはカモシカが現れて話題になりました。里山環境の減少や宅地開発により山林と市街地が隣接する地域が増えたことで、今後シカやイノシシ、タヌキ、アライグマなどの野生動物が住宅地にさらに頻繁に出没することが考えられます。野生動物が運んでくるマダニの分布も拡大すると思われ、今後の動向にますます注意が必要です。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、マダニが媒介する人獣共通感染症です。日本ではマダニによって感染する病気は10種類以上ありますが、人の命に関わるSFTSが最も深刻です。西日本に多かったのですが、2025年には東日本や北海道からも症例の報告があり、リスクは既に全国に広がっていると考えられます。
高齢の方の発症や重症化、死亡例が多く(60歳未満の症例は全体の約1割、小児の患者はまれ)、2025年には日本全国で191名の症例があり、うち15名の方が亡くなっています。
風邪に症状が似ており、6日~2週間の潜伏期間の後に発熱、倦怠感、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)などが現れます。ワクチンはまだありません。
全てのマダニが病原体を持つわけではなく、刺されたら必ず感染症になるわけでもないので、過度の心配は必要ありません。マダニのウイルス保有率は地域や季節により違いがあるものの0~数%です。しかし、万が一、マダニに刺された後に症状が出た際は、いつ刺されたのか申し出た上で医療機関をを受診してください。

ペットのSFTS深刻化の懸念。特にネコは高死亡率。
SFTSは人と哺乳動物の両方が感染する、人獣共通感染症です。
特にネコのSFTSは重症化しやすく、短期間で命を落としてしまいます。SFTSによるネコの死亡率は約60%にのぼります。動物に対してのワクチンや治療法は、まだ確立されていません。
さらに、SFTSを発症したネコや犬から人が感染する事例も報告されています。2025年にはSFTSに罹患したペットから感染した獣医師の方が亡くなった事例があります。また、人から人への感染事例も報告されています。
動物用の予防薬でペットのマダニを予防しましょう。屋外にペットを連れて行く際は、マダニに刺されていないか十分気をつけてください。マダニが付いていたら動物病院に相談を!

マダニの対策と駆除
(1)マダニにかまれないようにする
・山林などマダニが生息する場所に入る際は、肌の露出をできるだけ少なくしましょう。長袖、長ズボンを着ることはもちろん、シャツの袖口は手袋の中に入れる、シャツの裾はズボンの中に入れる、ズボンの裾は靴下や靴に入れるなどの工夫をしましょう。
・マダニにかまれるのを防ぐため、マダニを忌避できる人体用虫よけ(プレシャワーシリーズ、虫よけキンチョールシリーズ)を使用しましょう。イカリジンの有効成分のものは、服の上からもかけることもできます。
・マダニが服に着いた時に分かりやすいよう、明るい色の服を着ましょう。マダニがしがみつきにくいツルッとした素材の服を着ることも効果があります。

(2)持ち帰ってきてしまったマダニを駆除する
・着用した服や靴、リュックなどに付いているマダニがいれば、ガムテープで家に入る前に取りのぞきましょう。縫い目や、ひもの部分などに注意!
・採集してきた植物なども、マダニが付いていないか点検しましょう。
・着用した衣類はすぐに洗濯し、帰宅後はすぐにシャワーを浴びましょう。
・スプレー式殺虫剤(ダニがいなくなるスプレー、キンチョール、ゴキブリがうごかなくなるスプレーなど)をマダニに直接かけて、殺虫しましょう。
・ワンちゃんなどペットと一緒に山林に行った際は、マダニがついていないか十分に確認してあげてください。(ペットのマダニ対策は動物用医薬品、動物用医薬部外品をお使いください)
・マダニの体液には感染症のウイルスが多数含まれている可能性もあります。生体や死骸の取り扱いには注意しましょう。

マダニから命を守る
One Healthアプローチの考え方にもあるように、人の健康と、ペットや家畜を含む動物の健康と、それを取り巻く環境は密接につながっています。感染症を媒介するダニや昆虫類とそれらが生育する環境に気をつけることも、人と動物の健康を考える上で大変に重要なことなのです。
しっかりと予防・駆除して、マダニの被害を防ぎ、命を守りましょう。

生態と種類を知る | マダニ | ウルトラ害虫(がいちゅう)大百科 | KINCHO
感染症発生動向調査で届け出られたSFTS症の動向について
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A|厚生労働省
ネコにおける重症熱性血小板減少症候群
ワンヘルスの定義と原則 | 公益社団法人 日本WHO協会
ワンヘルス・アプローチに基づく人獣共通感染症対策|厚生労働省
マダニ用の虫よけや殺虫剤は、使用上の注意をよく読んでお使いください。
