『ここにいれば安心ですよ』――認知症の患者さんと、我が家の白猫が教えてくれたこと
ここ数日、認知症の患者さんの入院が続いています。その中でも今、4人の患者さんが自然と意気投合し、いつも行動を共にされるようになりました。
なぜ自分は病院に入院したのか。どうすれば病院から出られるのか。家に帰れるのか。4人は毎日集まっては、そのことを話し合っておられます。
一人一人、理解力は異なります。ですから、それぞれに違う言葉と方法で説明するのですが、結局話は堂々巡りしているようです。そして、4人の中で何か解決できない問題が起きると、代表して4人の中で一番認知症状が進んだ患者さんが相談にいらっしゃいます。
「何で私らはここに来たんですか?何をすればいいんですか?」
毎回、同じ内容の質問です。
そんな時、私はこうお答えしています。
「急にここにいてびっくりされましたよね。大丈夫ですよ。ここには体調のチェックと、少しのんびり静養するためにいらしているんです。ここは体の疲れを取ってゆっくり休んで、元気を蓄えるところですよ」
そして、こう付け加えます。
「私がしっかりついていますから、任せておいてくださいね」
経験上感じることですが、こうお伝えすると、患者さんは「今は何もしなくていい」「安心して過ごしていい」という許可を得たかのように、ホッとしてくださるのです。
理由を説明した後は、その話を深追いしません。「そういえば、今日はお天気がいいですね」など、別の話題や次の行動(お茶を飲む、散歩するなど)へ優しく誘導すると、患者さんの意識はそこから離れやすくなります。実際に一緒に病棟内を歩いたりすると、より効果的です。
それでも、しばらくすると同じ状況を繰り返されます。それでも私は、「正しい事実を伝えること」よりも、「ここにいれば安心で、大切にされている」と感じていただけるような声かけを、根気強く続けています。ここが、看護師の根気の見せどころだと思っています。
さて、話は変わりますが、私はその名の通り、実家で白猫を飼っています。16歳のおばあちゃん猫です。昔はよく走り回って元気だったのですが、今では寝ていることも多くなりました。それでも可愛さは変わらず、私の唯一の癒しです。
仕事でどんなに根気を使い、疲れきって帰っても、うちの子の顔を見るとスーッと疲れが吹き飛びます。仕事を頑張れるのも、この子のおかげです。
職場では「頼れる看護師」としての役割を担い、緊張感を持って判断を下す場面が多くあります。しかし、家に帰れば、愛猫の前ではただ一人の人間、「大好きな飼い主」でいられます。ペットは、人間の評価や職業的立場とは無関係に、ありのままの自分を受け入れてくれます。この「素になれる関係」が、精神的な疲労感を和らげてくれるのだと思います。
認知症の患者さんに「ここにいれば安心ですよ」と伝えるように、私も毎日、白猫から「ここにいていいんだよ」と教えてもらっている気がします。
安心を届ける仕事を続けられるのは、帰る場所に安心があるから。
今日も白猫に癒やされながら、また明日も患者さんへ安心を届けに行きたいと思います。
