初めて観た舞台は、中村倫也さんの安倍晴明だった|七夕まもりと娘の芸事のこと
もうすぐ七夕。
この時期になると、京都の晴明神社のことが、ふっと頭に浮かぶ。
それと同じくらい自然に、娘のピアノのことも思う。
晴明神社の七夕まもりは、娘にとって少し特別なお守りだ。
この記事の最後には、『狐晴明九尾狩』や晴明神社の公式リンク、当時の自分のポストも置いている。
あの頃のことを、少しずつ思い出しながら書いてみる。
初めて観た舞台が、中村倫也さんの晴明だった
私が初めて観た舞台は、中村倫也さんの安倍晴明だった。
劇団☆新感線の『狐晴明九尾狩』。
今でも、あの時のことはよく覚えている。
上演された頃は、コロナ禍の真っただ中だった。
舞台の中止や、途中で止まってしまう公演の知らせが、今よりずっと身近にあった時期。
チケットを持っていても、幕が上がるまで安心できない。
幕が上がっても、最後まで走りきれるかどうかはわからない。
観る側でさえ、どこか祈るような気持ちで劇場に向かっていた。
そんな空気の中で、中村倫也さんは、ひょうひょうと安倍晴明を生きていた。
重たさを全部背負い込むのでもなく。
不安をなかったことにするのでもなく。
すっと立って、ふっと笑って、晴明としてそこにいる。
その姿が、初めて舞台を観た私の中に、強く残った。
舞台って、こんなふうに人の記憶に残るんだ。
たぶん私は、あの時そう思ったのだと思う。
その世界から抜け出せなかった
『狐晴明九尾狩』で、私はたくさんの言葉を初めて知った。
五芒星。
四方を守る四神。
東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武。
そして、急急如律令。
それまで私にとって遠かった言葉が、舞台の中で生きていた。
物語の中で聞いた言葉。
晴明の口から放たれた言葉。
舞台の光や音と一緒に、体の中に入ってきた言葉。
観終わってからも、なかなかその世界から抜け出せなかった。
中島かずきさんの戯曲本を、隅から隅まで読んだ。
ふとシーンやセリフが頭に浮かぶたびに、ページを開いて読み直した。
あの場面は、どこだったかな。
あのセリフは、誰がどんな顔で言っていたかな。
そんなふうに何度も読み返しているうちに、私だけでなく、家族まで巻き込まれていった。
DVDやゲキ×シネを一緒に観た次男も長女も、
「それ、あのシーンのあのセリフやんな」
と、言い当てられるくらいになっていた。
気づけば『狐晴明九尾狩』は、私ひとりの推し活ではなく、家族の中にも入り込んだ作品になっていた。
舞台で出会った晴明が、京都につながった
『狐晴明九尾狩』をきっかけに、私は京都の晴明神社を知った。
安倍晴明公をお祀りする神社。
舞台で出会った安倍晴明が、現実の京都にある晴明神社へつながっていく。
それを知った時、なんだか不思議な気持ちになった。
物語の中で心をつかまれたものが、ちゃんと現実の場所にもある。
画面や本の中だけではなくて、京都へ行けば、その場所がある。
それだけで、少し心が動いた。
そして、晴明神社に七夕まもりがあることを知った。
しかも、芸事のお守りでもあることを知った。
その時、娘のことが浮かんだ。
娘の音楽のこと
娘が音楽を続けていく中で、私は一時期、親として迷っていた。
専門的に音楽を学ぶことが、本当にこの子に合っているのだろうか。
好きで続けることと、専門的に学ぶことは、似ているようで少し違う。
練習の量も増える。
求められることも増える。
評価される場にも出ていく。
親として娘の様子を見ていると、つい先回りして不安になってしまうことがあった。
でも、娘本人は言った。
コンクールに出たい、と。
その気持ちは、私が決めるものではなかった。
向いているかどうかを、親が先に決めてしまうものでもない。
本人がやりたいと言ったなら、その気持ちは尊重したい。
そう思って、コンクールに出始めた頃。
ちょうどその時期が、『狐晴明九尾狩』に出会った頃と重なっていた。
中村倫也さんの晴明に出会い、晴明神社を知り、芸事の七夕まもりを知った。
だから私にとって七夕まもりは、ただの季節のお守りではなかった。
娘のためのお守りであり、親である私の気持ちを整えるものでもあった。
上手になりますように。
もちろん、それも願う。
でも、それだけではなかった。
本人がやりたいと言ったことを、親の不安で先回りして止めすぎないように。
その気持ちを整えるためにも、私は七夕まもりをいただくようになった。
3年間、郵送でいただいた
とはいえ、すぐに京都へ行けたわけではなかった。
コロナ禍の間、私は3年間、七夕まもりを郵送でいただいていた。
本当はお参りに行きたい。
でも、行けない。
その頃の京都は、今よりずっと遠く感じていた。
ポストに届いたお守りを見ながら、ありがたいなと思った。
遠くにいても、願うことはできる。
娘の音楽のことを思いながら、毎年そのお守りを受け取っていた。
京都が近くなった
それが、去年から少し変わった。
長男が京都の大学へ行くことになり、私は何度も京都へ行くようになった。
不思議なものだ。
あんなに遠く感じていた京都が、家族の用事で何度も足を運ぶ場所になった。
その流れの中で、念願だった晴明神社にもお参りできた。
舞台で知った場所。
ずっと行きたいと思っていた場所。
七夕まもりをいただいてきた場所。
そこに、やっと自分の足で行けた。
それだけで、胸の奥がすこし静かになった。
そして、娘とも一緒にお参りできた。
娘のために毎年いただいてきた七夕まもりを、今度は娘と一緒にいただきに行けた。
これは、私にとってかなり大きな出来事だった。
令和七年七月七日
令和七年七月七日には、母とも晴明神社へお参りした。
七が並ぶ日。
その日に御朱印をいただけたことも、よく覚えている。
娘のこと。
長男が京都へ行ったこと。
母と一緒にお参りできたこと。
気づけば晴明神社は、私ひとりの推し活の場所ではなくなっていた。
『狐晴明九尾狩』から始まったご縁が、少しずつ家族の中に広がっていったような気がする。
お守りは、親の覚悟でもあった
お守りをいただく時、私はいつも思う。
子どもの人生を、親が代わりに歩くことはできない。
ピアノを弾くのは娘だ。
舞台に立つのも娘だ。
コンクールに出ると決めるのも、出たあとに悔しがるのも、また弾きたいと思うのも、娘だ。
親にできることは、それほど多くない。
送り迎えをする。
ご飯を作る。
練習時間を支える。
先生とのやりとりをする。
本番の日に、忘れ物がないようにする。
そして、心の中で願う。
どうか、音楽がこの子の味方でありますように。
たぶん私にとって、七夕まもりはそういう願いの形だ。
娘を守るお守りであり、親の私が、娘の道を勝手に決めすぎないためのお守りでもある。
今年も七夕が近づいてくる
最初は、ひとつの舞台だった。
中村倫也さんの安倍晴明に出会ったこと。
コロナ禍の劇場で、幕が上がることを祈るように観ていたこと。
家族で何度も見返すほど、『狐晴明九尾狩』にはまったこと。
そこから晴明神社を知ったこと。
娘の芸事のために、七夕まもりをいただくようになったこと。
ひとつずつたどると、全部つながっていた。
推し活って、時々、自分でも思っていなかった場所まで連れて行ってくれる。
舞台を観ただけだったはずなのに。
気づけば、京都へ行き、神社へお参りし、娘の音楽のことを願い、家族の時間までつながっていた。
今年も七夕が近づいてくる。
積み重ねてきたものが、本番の一音目にちゃんと届きますように。
そしていつか振り返った時に、
「あの頃、よく頑張ってたな」
と、娘自身が自分のことを少し誇れますように。
そんなことを思いながら、今年も七夕まもりの季節を迎えている。
あわせて読んでもらえたら
私はこのnoteで、中村倫也さんの作品を入口に、音楽や劇伴、演技の余韻をたどる記事も書いている。
『狐晴明九尾狩』から晴明神社へつながったように、
作品をきっかけに、別の場所へ連れて行かれることがある。
そんな感覚に近い記事を、いくつか置いておく。
『君のクイズ』音楽考察
Yaffleさんと『君のクイズ』の音楽
『君のクイズ』から中村倫也さんの作品を音楽でたどるnoteも更新しました。
Yaffle、斎木達彦、Uru、宇多田ヒカル「Time」まで。
コーヒー一杯分で、作品をもう一度好きになる音楽地図です。
※有料記事です
参考リンク
『狐晴明九尾狩』や晴明神社について、公式情報を置いておく。
当時の空気を思い出すために、中村倫也さんの公式Xと、自分の過去ポストもあわせて残しておく。
『狐晴明九尾狩』公演公式サイト
ゲキ×シネ『狐晴明九尾狩』公式サイト
晴明神社 公式サイト
晴明神社|お守り・お札
七夕まもりの説明がある。
晴明神社 公式Instagram
中村倫也さん公式X|『狐晴明九尾狩』初日投稿
「優優如律令。」という言葉が添えられた投稿。
今日から始まります舞台 #狐晴明九尾狩
— 中村倫也 (@senritsutareme) September 17, 2021
楽しみたい気持ちを満タンに、
そして〝お隣さんの楽しみたい気持ち〟を損なわないように、
ルールとマナーを守って気楽にご観劇頂けましたらば幸いでござります。
優優如律令。
当時の自分のポスト|『狐晴明九尾狩』大阪大千穐楽の日
大千穐楽
— tomoyanflower : トモフゥー|中村倫也作品×音楽考察 (@tomoyanflower) November 11, 2021
おめでとうございます。
制作発表から
大千穐楽の幕が開くまで
こんなに皆さんの
無事を願い 祈り
追い続けたのは
初めてです。
観劇できたのは
たったの1回だけど
想いだけは
ずっと!
本当に
おめでとうございます#中村倫也#狐晴明九尾狩 pic.twitter.com/bBzYdqGSGX
当時の自分のポスト|『狐晴明九尾狩』大阪大千穐楽の日
おめでとうございます
— tomoyanflower : トモフゥー|中村倫也作品×音楽考察 (@tomoyanflower) November 11, 2021
私の目にも涙が浮かびます。
本当に無事完走できてよかった!
おめでとうございます
そして、ありがとう#中村倫也 #狐晴明九尾狩 #エアせんべいまき https://t.co/P3zWzS99g4
ゲキ×シネ公開ごろの私のデスク周り
作業モニター下の
— tomoyanflower : トモフゥー|中村倫也作品×音楽考察 (@tomoyanflower) June 28, 2022
癒やしコーナー
今日もがんばろ#七夕まもり
天の川の刺繍
キラキラしてて
素敵#晴明神社#中村倫也#トップコートランド#狐晴明九尾狩
また見に行きたい
がんばって時間を作ろう! pic.twitter.com/uFUO1aRM0I
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ここまで読んでくださってありがとうございます。「読めてよかった」と思ってもらえたら、チップでそっと応援してもらえるとうれしいです。また次も、好きなものを丁寧にたどっていきます。