【キャプテン・サボ登場前夜】反応ゼロの現場で、僕を救った一冊のノートの話
みなさんこんにちは、キム・タックです。
前回は、僕のアナログな相棒「キャプテン・サボ」をご紹介しました。今回は、そのサボが現場に登場するまでの話——介護歴15年の原点となった、小さなノートとの物語です。
介護を始めた頃の僕は、レクリエーションが得意でも好きでもありませんでした。「仕事だから仕方ない」。その一言が正直な気持ちでした。
最初に配属されたのは、認知症の方や重度介護が必要な方が多い部署。経験ゼロの新人だった僕は、最初の1ヶ月、利用者様に触れることすら許されず、毎日の体操とレクリエーションだけが仕事でした。
一生懸命やっても、反応はほとんどない。
毎日、心のどこかがじわじわと削られていきました。
「もう、辞めようか——」
でも、家には支えるべき子供と家族がいる。そう簡単に投げ出せない。
だから僕は、気持ちを切り替えることにしました。
「このレクリエーションを、自分なりに楽しんでやろう」と。
当時、子供がまだ小さかったこともあり、図書館で絵本や紙芝居を借りてきては、まず家で子供たちの前で練習しました。施設には事前に「こんなことをやらせてください」と許可をもらい、現場で実践。
そして始めたのが、毎日のノートへの記録です。
利用者様がどんな反応をしてくれたか。どんな話題でふっと笑顔になったか。何が「ウケた」か、何が「スベった」か。日記のように、細かく書き続けました。
その積み重ねが、少しずつ現場を変えていきました。
手が空いた職員が、紙芝居にそっと耳を傾けてくれるようになった。
家では子供たちが「パパの紙芝居、また聞かせて!」と待っていてくれるようになった。
そしてある日、あんなに無反応だった利用者様が、こう言ってくださったのです。
「お兄さん、面白かったよ。また聞かせてね、楽しみに待ってる」
あの言葉は、今でも忘れられません。
削られていた毎日が、一瞬で報われた気がしました。
15年間介護を続けてきた今、僕が強く思うことがあります。
食事介助や排泄介助は、大切な仕事。でもそれは「当たり前の業務」でもある。
その先にある、利用者様の「生きがい」や「明日への楽しみ」を一緒に見つけること——それこそが、本当の介護だと思っています。
「あの兄ちゃん、明日また紙芝居してくれるかな?」
「ウクレレで一緒に歌えるかな?」
そんな小さな期待が、施設での毎日をぐっと豊かにする。認知症予防にも、生活のメリハリにも、確かにつながっていると感じています。
もちろん、周りの全員が理解してくれるわけではありません。
「忙しいのに何してるねん」「仕事が増える」——そんな声が聞こえることもあります。
それでも、目の前の利用者様が喜んでくださっている。
その事実だけが、僕の背中を押し続けてくれています。
さて……!
今回も前置きが長くなってしまいました😅
いよいよ次回、相棒「キャプテン・サボ」が介護現場に登場します。
たった6秒しか録音できないこのキャラクターが、どんな奇跡を起こしたのか——お楽しみに!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
キム・タック
