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放送作家の仕事は「ジャンル」で全く違う|第4回 バラエティ番組編 ── バラエティ企画は「面白い画」から生まれる(松田の場合)

火曜日は「放送作家の企画論」をお届けします。

このシリーズでは、放送作家およそ30年の僕(松田敬三)が、テレビ業界の中の実際の仕事や、企画の作り方を、出来るだけ生の言葉で書いていきます。

本シリーズ『放送作家の仕事は「ジャンル」で全く違う』は全6回の連載です。第1回はドキュメント番組編、第2回はクイズ番組編、第3回は情報番組編でした。

今週は第4回 ── バラエティ番組編です。

バラエティは、放送作家の本流の仕事と言われるジャンルです。
そして、神様のような猛者が、本当に沢山いらっしゃる世界でもあります。僕が企画論を書くのは、正直、おこがましい。

でも、自分なりに掴んだものは、少しあります。
今日は、実際に出していたネタの話も含めて、できる範囲で書きます。

——

結論から書きます。

『バラエティの企画は、理屈ではなく「面白い画」から生まれる』(松田の場合)

そして、もう一つ。

『ゼロからイチを生み出すことこそ、放送作家の最大の醍醐味である』(松田の場合)

僕が出していた、こんなネタ

まず、具体的な話から始めます。

僕が昔、バラエティの現場で出していたネタを、いくつか思い出すまま書いてみます。

スキー場から東京まで、スキー板を履いたまま帰ったら、板はどれくらいボロボロになるのか」

「トランポリンの上で生活したら、トランポリンは何日で破けるのか」

「ミュージシャンが、歴史をギターの音色で教えてくれる、家庭教師ミュージシャン」

「映画のエンドロールが、どれだけ長くても、ファンは最後まで帰らずに見ているのか」

並べてみると、我ながら、くだらないものばかりです(笑)。

でも、このくだらなさの中に、バラエティ企画の本質が詰まっています。

企画は「面白い画」から生まれる

僕がバラエティの企画を考えるとき、出発点は、いつも同じです。

理屈ではありません。
企画書の体裁でもありません。

「こんな画が撮れたら、面白いだろうな」

この一点から、すべてが始まります。

たとえば、トランポリンのネタ。
あれは、「限界を検証する」みたいな番組だったんですが、

頭の中に、まず、画が浮かんで面白いのを提案していました。

トランポリンの上で、ぼよんぼよん揺れながら、朝ごはんを食べている人。
味噌汁を、こぼしそうになりながら。

その画を想像した瞬間に、「あ、これ、面白い」と思った。

スキー板のネタも同じです。
スキー場から、東京の街中を、スキー板で滑って(滑れないけど)帰ってくる人。
アスファルトの上を、ガリガリと板で歩いている、その異様な画。
それが先に浮かんで、「これ、見てみたい」と思った。

バラエティの企画は、ここから生まれます。

「面白い画が、頭に浮かぶかどうか」

これが、すべての入口です。(松田の場合)

なぜ「画」から考えると、企画が強くなるのか

「面白い画から考える」というのは、ただの感覚的な話ではありません。
実は、企画を強くするための、とても合理的な方法です。

理由は、こうです。

テレビは、画の媒体だからです。

どれだけ理屈の上で「意義のある企画」でも、画にした瞬間につまらなければ、テレビでは成立しません。
逆に、画が面白ければ、理屈が後からついてきます。

「画」から発想すると、その企画が成立するかどうかを、最初の段階で見抜ける。
頭の中で画が浮かばない企画は、たぶん、撮ってもつまらない。
頭の中で画がくっきり浮かぶ企画は、撮れば、まず面白い。

だから僕は、企画を考えるとき、いつも自分にこう問いかけます。

「これ、画が浮かぶか?」
「その画を、見てみたいと思うか?」

この2つに「イエス」と言えたものだけが、企画として前に進みます。

理屈は、その後でいい。
「消耗品の限界検証」も「ファンの愛情の可視化」も、画が面白いと決まった後に、企画書のために考えた言葉です。

順番が、逆ではないんです。
画が、先。理屈は、後。

日常の中に、画は転がっている

では、その「面白い画」は、どこからやってくるのか。

これは、特別な才能の話ではありません。
日常の中に、画の種は、いくらでも転がっています。

トランポリンを見たときに、「これの上で生活したらどうなるんだろう」と思えるかどうか。
スキー板を見たときに、「これで街を帰ったらどうなるんだろう」と思えるかどうか。
映画のエンドロールが流れたときに、「これ、みんな最後まで見てるのかな」と思えるかどうか。

目の前のものに対して、「もし、これが○○だったら」と、ひとつ角度をずらして考える。
その癖がついていると、日常のあらゆる場所から、画が生まれてきます。

僕は、これを長年、ずっとやってきました。
街を歩いていても、電車に乗っていても、頭のどこかで「これ、面白い画にならないか」と考えている。

職業病かもしれません。
でも、この癖こそが、バラエティ作家の、頭の筋トレだと思っています。

神様たちと、どう戦うか ── ゼロイチという醍醐味

冒頭に書いたとおり、バラエティには、神様のような猛者が沢山います。

ネタ出しの瞬発力。
会議室での、一発のひらめき。
そういう才能で、僕が到底かなわない人たちが、何人もいます。

では、その中で、僕はどう戦ってきたか。

僕が選んだのは、「ゼロからイチを生む」という戦い方でした。

既存の番組に呼ばれて、その番組のためのネタを出す。これも、もちろん放送作家の大事な仕事です。
でも、僕がやりたかったのは、違いました。

企画そのものを、ゼロから作る。
番組を、立ち上げる。
新しい番組を、世に送り出す。

番組をゼロから立ち上げると、その番組全体の設計に関わることになります。
どんな画を撮るのか。どんなコーナーを作るのか。番組が何を目指すのか。その大枠を、考える立場になる。

大枠を考える人間は、自然と、番組の風上に立てます。

個別のネタの瞬発力で、神様たちと殴り合うのではなく、企画そのものを生み出して、番組という大きな船を動かす側にまわる。
これが、僕の放送作家としてのキャリア形成でした。

そして、これは戦略であると同時に、僕にとっての、放送作家の最大の醍醐味でもあります。

世の中に存在しなかった番組を、ひとつ、生み出す。
昨日まで、この世になかったものが、自分の発想から始まって、何百人ものスタッフの皆さんが動く番組になる。

この、ゼロがイチになる瞬間。
これ以上の喜びは、放送作家の仕事の中に、ありません。

そして、数百万、昔なら数千万の人が見てくれる番組になるんです。

その全部が、ゼロイチの醍醐味です。

バラエティ番組の現場が教えてくれること

ドキュメントが「ナレーションで物語を紡ぐ」仕事なら、
クイズが「問いの立て方を磨く」仕事なら、
情報番組が「情報に角度をつける」仕事なら、

バラエティは「面白い画を、頭に浮かべる」仕事かなと思います。

『この画を、見てみたいか?』
『この画は、頭にくっきり浮かぶか?』
『そして、この画から、新しい番組を立ち上げられるか?』

これを徹底的に鍛えられるのが、バラエティ番組の現場です。

そして、この「面白い画から発想する」という筋肉は、テレビの外でも、まったく同じように使えます。

企業のPR企画も、SNSの動画も、お店のイベントも、結局は同じです。
「面白い画が浮かぶか」「その画を人は見たいか」。
ここから発想すれば、企画は、ぐっと強くなります。

次回予告:来週火曜は「スポーツ番組編」

来週火曜は【第5回 スポーツ番組編】です。

実は僕は色んなスポーツ番組をやってきました。
スポーツで、放送作家が何を考えているのかを書きます。

シリーズ全6回の予定

・第1回 ドキュメント番組(終)
・第2回 クイズ番組(終)
・第3回 情報番組(終)
・第4回 バラエティ番組(今回)
・第5回 スポーツ番組
・第6回 全ジャンルを通じて、僕にある「唯一無二のルール」

最終回には、どのジャンルの番組をやっていても、僕の中で絶対に譲らないルールがひとつだけある、という話を書きます。


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