連載「菌活 ボーイがゆく」⑳乙女の憂鬱
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ

喫茶店を営む Iママさんは、金髪と野球帽がトレードマーク。
明るい色の服を着こなして、ピエロのネックレスをかけている。
年齢を聞かれると、「18歳の乙女。来年は28歳だけど」と笑わせる。
カウンターには、「祝81歳」と書かれたカード付きの花束があった。
若々しさの秘訣を聞いてみた。
「お客さんとおしゃべり」
「運動は?」
「子どもたちと一緒に、毎朝、店まで歩いて登校してたんだけどね」。浮かない顔。「1年前からやめたの」
コーヒーを持ってきた娘さんが、理由を教えてくれた。
「手をつないでいる」と、学校に通報があったという。
「手をつなぐほうが、安全なのでは」
驚いて聞き返したら、
「お尻を触る人もいるからね」
児童と一緒の出勤は、20年以上続いていたという。
「学校に行きたくない子がいてね」とIさん。「つないだ手を大きく振って、元気づけてあげてたの。あの子、どうしているかな」。頰づえをついた。
店に沈黙が落ちて、僕はコーヒーに手を伸ばした。
いつもより、ほろ苦い。
今夜は、さっちー師匠の甘いどぶろくに癒やされたい。
そして、朝になったら、醤油こうじをお土産に再び店を訪れよう。
(続く)
