見出し画像

伊豆マリオットホテル修善寺のディナーの一皿「イズシカのロースト」人より鹿が多い町で出汁のカクテルを飲んだ夜/旅先で見えた、身近な違和感

伊豆マリオットホテル修善寺のホテル内レストラン「Grill&Dining G(グリル&ダイニング ジー)」ディナーの一皿の鹿のローストには驚いた。


伊豆には、年に何度も来ている。
季節ごとに訪れていると言ってもいい。
それなのに私は、この土地に「鹿が多い」という事実を知らなかった。

観光地としての伊豆しか見ていなかったのだと思う。
温泉、海、ホテル、山の景色。
どれも好きで、どれも知っているつもりでいた。

けれど、その夜の皿の上で、
伊豆は急に「生活の土地」になった。

皿の上にあったのは、観光ではなく生活だった

メインに出てきたのは、鹿肉のローストだった。
ジビエ、と聞くと少し身構える。
野生の匂い、血の気、クセ。
頭の中ではそんなイメージが先に立つ。

ところが、口に入れると予想が裏切られる。
赤身はプリッとしていて、やわらかい。
余計な脂がなく、むしろ清潔な味がした。
生臭さではなく、肉そのものの弾力。

横には白焼きのうなぎ。
脂の甘みと塩味。
その下には味のついたご飯。
和でもない、洋でもない。
日本のどこにもなかった一皿だった。

「おいしい」という感想よりも先に、
「これは何だろう」という感覚が来る。

“おいしい”の奥にあった背景

シカ肉は赤く硬そうにみえたけれど、ナイフを入れるとさくっと切れて、くちにいれると柔らかかった。

驚いて、スタッフの方に「シカ肉はそんなに日常的なんですか?」と聞くと、むしろ聞かれたことに驚いたように「よく食べますよ」とかえってきた。

「スーパーには、鶏肉、牛肉、豚肉、シカ肉、みたいに並んでいるんですか?」と重ねて聞くと、
「そうですそうです。よく食べています。伊豆では、人より鹿の方が多い地域なんですよ」と教えてもらった。

増えすぎた鹿が森の生態系を壊してしまうこと。
捕獲された命を無駄にしないために、
猟師と問屋と市役所が一緒に取り組んでいることは後で知った。

背景:伊豆半島の深刻な状況

  • 生息密度: 適正密度(1〜2頭/km)に対し、伊豆半島は約27頭/km2*と異常に高い密度。

  • 食害: 特産のワサビ、シイタケ、山林への被害が深刻化。

  • 課題解決: 狩猟者の高齢化や耕作放棄地の増加に対し、「食肉化」という出口を作ることで、被害防止と地域ブランディングの両立を図っている伊豆市の「イズシカ問屋」を中心としたシカ対策の取り組みが行われている。

「イズシカ問屋」の役割と成果

深刻な鳥獣被害を逆手に取り、駆除したシカを地域の特産品「イズシカ」としてブランド化した市営施設「イズシカ問屋」。

  • 処理能力: 年間約1,000頭(シカ・イノシシ)を処理。

  • 被害減少: かつて数億円に達した市内の農業被害額が、現在は年5,000万円程度まで減少

  • 持続可能な駆除: 個体を買い取ることで、狩猟者の重労働(埋設処理など)を軽減し、モチベーションを向上させています。

徹底した品質と安全管理

ジビエ特有のリスクを排除するため、厳しい基準を設定。

  • 衛生管理: 電解水による洗浄、金属探知機での残弾検査、トレーサビリティの確保。

  • 熟成のこだわり: 1週間〜10日間熟成させることで、旨味を凝縮。

  • 認定: 静岡県内初の「国産ジビエ認証施設」として農林水産省から認められました。

そんな伊豆のシカが“イズシカ”という名前で流通している。
長期熟成や衛生管理の徹底、国産ジビエ認証。
ただの郷土料理ではなく、
地域の課題と産業と技術の交点にある食材が「イズシカ」だ。

伊豆マリオットホテル修善寺では、そんなシカを夕食の一皿としていただくことができた。

伊豆マリオットホテル修善寺以外でも、イズシカを食べられるお店もある。

イズシカを味わえる飲食店(例

  • 修善寺醤油(あまご茶屋など): 「イズシカ丼」や、鹿肉を使ったカツなど

  • ラフォーレ修善寺:伊豆マリオットホテル修善寺と同じ敷地内にあるラフォーレでも本格的な「イズシカ・ジビエ料理」をコースやアラカルトで提供することが多く、洗練された味を楽しめる

  • 道の駅「伊豆月ヶ瀬」: 「イズシカカツバーガー」やシカ肉を使ったコロッケなど、手軽なスナック系が充実

  • 地元のイタリアン・フレンチ: 「イズシカのロースト」や「赤ワイン煮込み」として、ジビエ専門店顔負けのクオリティで提供する店舗が市内に点在

イズシカ肉を購入できる場所

ご家庭で調理したい場合や、お土産用のものも。

  • 精肉店: 伊豆市内の「ささの精肉店」など、イズシカ問屋と提携している街の精肉店で購入可能

  • 道の駅・直売所: 「道の駅 天城越え」内の竹の里などで、冷凍のブロック肉やスライス、加工品が販売

  • ふるさと納税(伊豆市): 遠方の方に最もおすすめなのが、伊豆市のふるさと納税です。ステーキ用、焼肉用、さらには「イズシカ・ジャーキー」などの加工品も返礼品として人気

注目の加工品

お肉そのものだけでなく、手軽な商品も開発

  • イズシカカレー: レトルトで保存が利き、お土産に最適

  • ペットフード: 栄養価が高くアレルギーが出にくいとして、愛犬用のジャーキーなどもイズシカ問屋の資源を活用して作られている

イズシカは徹底した熟成と処理がされているため、ジビエ特有の臭みが驚くほど少ないのが特徴です。「まずは手軽に」ということであれば、道の駅でのカツバーガーやメンチカツから挑戦してみるのも⚪︎

イズシカ以外にも! 出汁がカクテルに!伊豆マリオットホテル修善寺で味わう、海外から見た日本のグルメ

さらに面白かったのは、飲み物だった。
季節のカクテルのベースが「出汁」。

出汁のカクテル。
最初は少し戸惑う。
けれど、口に含むと不思議と落ち着く。
甘さや酸味ではなく、旨味で整えられている。

そこに書いてあった説明文を読んで、
もう一つの違和感に気づいた。

これは、日本人のための和食ではない。
インバウンドの人たちの口に合うように
日本の食材を翻訳した料理だった。

私たち日本人が「美味しい」と感じる味とは
少し違う軸で作られている。
けれど、決して妥協ではない。
むしろ、日本の食材を別の角度から最大化している。

鹿肉も、うなぎも、出汁も、
どれも日本に昔からあるものなのに、
並び方と使い方が違うだけで、
まるで別の文化の料理になる。

違和感の正体は、距離だった

私は、鹿をかわいい動物としてしか見ていなかった。
でも、皿の上では食材だった。
森では問題で、
町では産業で、
職人にとっては技術だった。

そして、出汁は家庭の味だったはずなのに、
グラスの中では世界に向けた表現になっていた。

旅先で出会ったのは鹿ではなく、
自分の距離感のほうだったのかもしれない。

伊豆は何度も来ている場所なのに、
私はまだ、観光地しか見ていなかった。
その夜、初めて
「誰かが暮らしている土地」を食べた気がした。

楽しい「伊豆の旅」熱川旅の記録

伊豆・熱川を歩いてワクワクしたポイントや注目のホテルを紹介!


いいなと思ったら応援しよう!

Taka@子犬と猫と娘2人と夫と暮らす よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!