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《闇夜に刻まれた印》第十七章:白紙の報告書(上)/《烙印於黑夜之印》第十七章:白紙之報(上)(和訳付き)

前編

作者便り



日本語訳

【第十七章・白紙の報告書(上)】

王都の本部には、紙と墨の匂いが満ちている。
再びエルールの身体で目覚めたクールマにとって、
魔導器の光も、仲間たちの笑い声も、一瞬の静寂にすぎなかった。
だが、遠方から届いた一通の封筒が、その均衡を壊す。
それは「執行報告書」――けれど、中身は白紙だった。
記録の欠落ではなく、沈黙の警告。
そこには、処刑されなかった者と、抹消された真実が並んでいる。
白い紙面の向こう側で、闇が再び動き出そうとしていた。

「……ああ、この庭園……王都に来たばかりの頃に見たあの場所に似ている。何百年前のことだっただろうか……」
意識の奥でその呟きが反響し、花の香りと霧が同時に薄れていく。

「……うん、そろそろ目が覚めそう。ここは――どこ?」
クールマはゆっくりと瞼を開けた。
視界をかすめるのは、淡く黄昏た光。
黒地に銀の縁取りが施された流星の徽章が壁に掛けられ、
その傍らの書棚には、今にも崩れ落ちそうなほど書簡や書物が積み上げられている。
そして、壁際の机の前には一人の少年が身を屈め、
手元の魔導器を淡く光らせていた。

「クールマ、おはよう。」
頭の中にエルールの澄んだ声が響く。
「ほう……今回はお前の身体を借りているのか。」
魔王は小さく笑う。

「どれくらい眠っていた?」
「二週間くらいかな? 魔力は安定してるし、足も問題なし。」
「それは良かった。」
クールマは意識の中で背を伸ばした。
「今は本部か? 勤務中だろう?」
「そうだよ。――それとね、勝手に動いたら、また閉じ込めるからね。」

「う……それは残念。」
クールマは手をこすり合わせながら、悪戯っぽく笑う。
「でも、その制服……ちょっと触ってみたくなるじゃないか。」
「こら! ふざけないで! 本当に魔導器が壊れるってば!」
エルールは睨みながらも、思わず吹き出してしまう。

その時、集中して修理をしていたライノールがふと手を止め、
道具が小さく音を立てた。
彼は顔を上げ、淡い紫の瞳に赤と金の光を宿らせる。

「……魔王陛下、お目覚めですか?」
「うむ。」
クールマはエルールの意識を通じて応える。
「余は起きておる。どうした?」
「陛下、この魔導器に技術的な問題が発生しまして、少しご相談を……」
「お前は余の知識庫であろう? 本来なら自ら直せるはずだ。」
クールマは面倒くさそうに言った。

「そ、それが……」
ライノールは少し頬を赤らめる。
「実際の修理となると、経験が必要でして。」
「持ってこい、余が見てやろう。」
ライノールが魔導器をエルールの前に差し出そうとした、そのとき――
扉の外から「カチリ」と音がした。

大広間の扉が開き、冷たい風が吹き込み、紙束がかすかに揺れる。
書類の束を抱えた処刑人が、静かに中へ入ってきた。

「処刑人、今日はどうした?」
ライノールは手元の魔導器を調整しながら顔を上げる。
「地方から届いた執行報告書を、保管庫に戻しに。」
処刑人は淡々と答え、分厚い封筒を机の上に置いた。
鈍い音が響く。
彼女は自分の持ち場――受付脇の机に書類を並べながら、
ふと視線をエルールへと向けた。

「……魔王陛下はお目覚めですか。――どうやら、そうみたいですね。」
彼女は腰のポーチから一枚の小さなカードを取り出し、エルールに手渡す。
「殿下から陛下へ、お預かりしています。」
エルールと体内のクールマは同時にそのカードに目を向けた。
そこには王女の整った筆跡で、こう記されていた。

陛下へ。
ご報告いたします――エルールの制服は新調されました。
存分にお触りくださいませ!
今回の鋼線繊維はさらに細く、軽量かつ防護性能も向上しております。
改良案があれば、いつでもご提案を。
王女 より

「……となれば、余としては触らぬわけにはいかぬな。」
クールマは笑いながらエルールの口を借りて言う。
「それに、この魔導器――どうやら余の手で直す必要がありそうだ。
 エルール、しっかり持っていろ。少しだけ身体を借りるぞ。」

「はぁ……仕方ないな。魔導器の修理もあるし。」
エルールはため息をつく。
「でも先に言っとくけど、変なところに触ったら承知しないからね!
 ――ライノール、あんたもちゃんと立って、動かないで!」
「わ、わかってますっ!」

ライノールが返事を終えた瞬間、エルールの髪が一瞬で銀白に染まり、瞳の奥に紅の光が瞬いた。
本来なら車椅子に座っているはずの彼女が、ゆっくりと立ち上がる。
その動作は儀式のように静かで、揺るぎない。
クールマが肉体の支配を引き継ぐと、まずは深く頭を下げ――ライノールの額に軽く口づけを落とした。
「同調完了。システム、安定。」
その声は低く艶があり、微かな笑みを帯びていた。

「これで問題なし――では、まずは制服の確認からだな。」
そう言うと、彼女は本当に上下から丁寧に布の質感を確かめ始めた。
その指先の動きは、驚くほど真剣だった。
「陛下、僕の魔導器が――」
「はいはい、余が満足してからにしろ。」
『も、もうっ……変なところ触らないでよぉ……!』
(エルールの抗議が意識の中で響く。)

その光景に、処刑人は思わず苦笑を漏らした。
そして彼女が踵を返そうとしたちょうどその時、生活区の扉が開く。
入ってきたのはヘレンだった。
目の前の「額への口づけ」場面を見てしまった彼女は、明らかに固まり――
そのままドア口で引きつった笑みを浮かべながら、ぎこちなく挨拶をした。

処刑人は小さく頭を振り、ため息をつくと、
何事もなかったように自分の作業へと戻っていった。

彼女は封筒を机の上に置き、手袋をはめて封を切った。
書類を引き抜いた瞬間、かすかな鉄錆の匂いが鼻を刺す。
「……斬首か。」
処刑人は小さく呟き、布に包まれた書類を広げた。

血の跡はすでに乾いているが、赤黒い色がまだ紙の奥に滲んでいた。
表紙には執行人と市長の署名、
後ろのページには執行の経過、判決書の抜粋、罪人名簿が添付されている。
彼女は一枚ずつ丁寧にめくり、指先で染みの上をなぞりながら、印と日付を確認した。

次に、背後の棚から分厚い台帳を取り出す。
表紙にはこう刻まれている――
《高等裁判所(王都外地域) 死刑確定案件記録および執行書副本》。
彼女は該当ページを開き、照合しながら別の帳簿にも記入していく。
ペン先が紙を擦る音が、静まり返った室内にやけに鮮やかに響く。


「殺人……判決日……確定日……」
低く繰り返しながら、各欄を一つずつ埋めていく。
すべての記入が終わると、台帳を閉じ、再び書類の整合を確認。
――異常なし。
処刑人は報告書を棚の指定位置に収め、
紙の背を二度、軽く叩いた。まるで儀式の締めくくりのように。

顔を上げると、視線の先には――
銀髪紅眼のエルール。
まだクールマが肉体を支配しているようだ。
彼女は黙々と魔導器の構造を調整しており、
傍らでライノールとヘレンがその様子を見守っていた。
その光景は静かで、一定のリズムを持ち、
まるで時間の中に封じ込められた一瞬の平穏のようだった。

「……今日は研がなきゃな。あの日の斬り味、少し違和感があったし。」
処刑人は小さく呟き、数日前の執行と使った斧の感触を思い出す。
(処刑室に戻って、手入れをしておこう。)
書類整理の任務を終え、
彼女は静かに立ち上がり、闇夜騎士団本部を後にしようとしていた――。

「カタン。」

静寂を裂くように、大扉が開く音が響いた。
全員の視線が一斉にそちらへ向く。
武装女官団の制服を着た少女が、息を切らしながら駆け込んできた。

「チェナ?」
処刑人がすぐに立ち上がり、迎えに出る。
「どうした? 何があった?」
「私たち……さっき、受領した書類を整理していたんですけど――」
チェナは息を整えながら、胸元から一通の封筒を取り出した。

それは、何の汚れもない清潔な封筒だった。
記されているのはただ一行――発送地《オルパキ(Arbakki)》のみ。
宛名も印もない。

封はすでに一度開かれていたが、
収発室の再封緘の印と、チェナ本人の署名がきちんと貼られている。
――内部は未開封、内容物は未改変。

「決算書類の束の中に紛れ込んでたんです。」
ライノールが水を差し出し、チェナはそれを一口飲むと、まだ荒い呼吸のまま続けた。
「最初は違和感があるだけだったんですけど……開けてみたら、どうも“あなたたちの文書”みたいで。
すぐに持ってきました。」

「中身は?」
処刑人は封筒を受け取り、手際よくレターカッターを取り出す。
声は静かだったが、指先にはわずかな緊張が走っていた。
「……処刑の執行報告書です。」
チェナは唇をかすかに噛み、目を伏せる。
「ただし――“空白”でした。」

処刑人の表情が、一瞬にして凍りついた。
彼女は無言のまま、封筒を完全に切り開く。
紙が擦れる音が、張り詰めた空気の中に鋭く響いた。

三枚の真っ白な書類が、静かに机の上へ滑り出る。
罪名も、罪人の名も、印も――何ひとつ記されていない。
すべての欄が、まっさらのまま。
処刑人はその紙を見つめ、瞳の奥の光が、ゆっくりと沈んでいく。
「……あり得ない。」
低く押し殺した声が、誰にも届かないほど静かに漏れた。

つづきは


以上の翻訳は ChatGPT による翻訳文をもとに、自ら校正・監修した形でお届けしています。
もし文体や語調などに不自然な箇所がありましたら、ぜひご指摘いただけますと幸いです。
ご感想やご質問などございましたら、コメント欄にてお知らせください。できる限りお返事させていただきます。
改めまして、本作品をお読みいただき、誠にありがとうございます。


中国語本文

第十七章・白紙之報(上)

王都的團部裡,連呼吸都帶著紙墨的味道。
當庫爾瑪再次甦醒於艾露爾的身體中,世界看似恢復了平靜——
魔導器的微光、笑鬧的聲音、文件的沙沙聲,構成了短暫的安寧。
然而,一封從遠方寄來的信,打破了這份常態。
那是一份「執行回執」,卻空無一字。
白紙之報,不是錯漏,而是警告。
它意味著,有人該死卻未死,有人該記錄卻被抹消。
在那片空白中,潛伏的真相正慢慢浮現。

「啊……這片花園……好像我剛到王都時看到的那一座。是幾百年前了嗎……」
低語在意識裡回盪,花香與霧氣一同淡去。
「……嗯,好像快醒了。這裡是——哪裡呢……」

庫爾瑪緩緩睜開眼,視線掠過一片昏黃的光。
黑底銀邊的流星徽章懸在牆上,旁邊書架堆滿了快要傾倒的卷宗與書冊。
而在靠牆的桌邊,有個少年正彎腰,手裡的魔導器亮著微光。

「庫爾瑪,早安。」
腦中傳來艾露爾清亮的聲音。
「哦……原來這次是在妳的身體裡啊。」魔王輕笑,「我睡了多久?」
「大概兩週吧?目前魔力很穩定,腿部也沒問題。」

「那就好。」庫爾瑪在意識裡伸了個懶腰。「妳現在在團部?值勤中嗎?」
「是啊。——還有,妳要是想亂動就別怪我把妳關回去喔。」
「嗚……真不巧。」庫爾瑪搓著雙手,語氣裡帶著壞笑。「不過,妳身上的制服,看起來還是很想摸摸看啊~」
「別鬧啦!再鬧下去那台魔導器真的要報銷了!」艾露爾瞪了一眼,卻又忍不住笑出聲。

這時,正在專心修理的萊諾爾忽然停下手,手中的工具碰出一聲輕響。
他抬頭,淡紫色的瞳孔裡閃過紅與黃的反光。
「……魔王陛下醒了嗎?」

「嗯哼,」庫爾瑪透過艾露爾的意識回話,「余醒著。有事嗎?」
「陛下,這台魔導器出現技術問題,我想請教一下……」
「你不是余的知識庫嗎?照理該自己會修吧?」庫爾瑪懶洋洋地吐槽。
「這個嘛……」萊諾爾被嗆得有點臉紅,「恐怕還是要實作經驗才行。」
「拿過來,余看一眼。」
萊諾爾正把魔導器遞到艾露爾眼前時——

門外傳來「咔」的一聲。
大廳的門被推開,冷風帶起紙頁的沙沙聲。
處刑人抱著一包公文袋走了進來。

「處刑人,今天怎麼會進來?」
萊諾爾一邊調整手上的魔導器,一邊抬頭問。
「地方送來的執行回執要歸檔。」
處刑人回答得簡短,手上厚厚的公文袋在桌面上發出沉悶的聲音。她把文件放到櫃台旁自己專屬的位子上,視線卻不自覺落在艾露爾身上。

「魔王陛下起來了嗎……看起來應該是。」
她從臀包中取出一張小卡片,遞給艾露爾。
「殿下要我轉交給陛下。」
艾露爾與體內的庫爾瑪一同看向那張卡片。
上面是王女端正的筆跡:

陛下:
容我向您報告,艾露爾的制服剛換新,可以盡情摸歐!
這次的鋼絲纖維更細,應該更輕量也更防傷。若有改進建議,請隨時提出。
王女筆

「……那余非摸不可了。」庫爾瑪笑著透過艾露爾說。
「而且那台魔導器,看來還得余親手修一修。艾露爾,妳把它拿好,身體借余一會兒。」
「唉……好吧,因為還有魔導器的問題。」艾露爾嘆口氣,「但先說好,不准亂摸奇怪的地方!——萊諾爾,你給我站好別亂動。」
「我、我知道!」

萊諾爾剛回答完,就看到艾露爾的髮色在瞬間轉為銀白,紅光在她瞳孔中閃爍。
她本應坐在輪椅上,卻緩緩站起身,步伐穩定得近乎儀式。
庫爾瑪接管身體後,先低下頭,在萊諾爾額前輕輕一吻。
「同調完成,系統穩定。」

她的聲音低沉而帶笑,「這樣應該沒問題了——那麼,先從制服開始。」
說完,她便真的開始上下摸索那件新布料的質地,神情極為認真。
「陛下,我的魔導器——」
「好好好,等余摸夠了再說。」
『嗚嗚,不要摸奇怪的地方啦……!』

處刑人看向那一邊,忍不住苦笑。
正當她準備轉身時,又有人從生活區進來——是赫倫。
對方顯然被庫爾瑪剛才那突如其來的「額吻」顯然讓她嚇得一愣,只能僵在門口,尷尬地打了聲招呼。

處刑人搖搖頭,低嘆一聲,開始處理自己的任務。
她把公文袋放到桌上,戴上手套,拉開封口,
剛抽出文件,一股淡淡的鐵鏽味便撲面而來。
「……斬首嗎。」
她低聲自語,將那層布包打開。
血跡已經乾涸,卻仍透出深暗的紅色。
封面上是執行人與市長的簽名,後頁附著執行經過、判決書摘錄、被執行人名冊。

她一張一張翻閱、檢核,指尖偶爾停在染痕上方,確認印章與日期。
之後,她拉開身後的櫃子,抽出一本厚重的登記冊。
封皮上印著:
《高等裁判所(王都以外地區)死刑確定案件記要及執行書副本》。
她翻開對應頁面,一邊比對,一邊在另一冊登記簿上填寫。
筆尖摩擦紙面的聲音在房裡顯得異常清晰。

「殺人……判決日期……確定日期……」
她低聲複誦,將各欄一一填滿。
填完後,將登記簿闔上,又重新核對一次文件的完整。
一切無誤。
她將那份回執收進書架的指定區,手指輕敲了兩下紙脊,像在結束儀式。

抬頭時,視線落在另一側。
艾露爾已經恢復成銀髮紅瞳——應該是庫爾瑪仍在掌控身體。
她正低頭調整魔導器的結構,萊諾爾與赫倫在旁邊看著。
那畫面安靜、規律,像一場被封存在時間裡的平和。

「今天大概還是得磨吧……那天砍起來的手感,有點怪。」
處刑人想著那天的處刑還有斧頭,打算回處刑室保養一下傢伙。
歸檔的任務結束,她正準備離開團部——

「咔。」

大門被推開的聲音在寂靜中格外刺耳。
所有人幾乎同時抬頭。
一名穿著武裝女官團制服的少女闖了進來,氣喘吁吁。

「切娜?」處刑人立刻迎上前,「怎麼了?怎麼會過來?」
「我們……剛在整理收到的文件,」
切娜邊喘氣邊從懷裡掏出一個公文封,「然後發現了這個。」
那是一個乾乾淨淨的信封。
上面只有寄出地——「奧爾帕奇(Arbakki)」——除此之外,什麼都沒有。

封口雖已拆開,卻貼著收發室的再次封緘與切娜親筆的簽名,
表示:內部物品未動。

「它是夾在決算文件裡的,」切娜喝下一口萊諾爾遞來的水,氣息仍不穩,
「一開始只是覺得不對勁……打開後,發現裡面好像是妳們的文件,就立刻送過來了。」
「裡面是什麼?」處刑人取過信封,順手抽出拆信刀。
她的聲音仍平靜,但指尖微微用力。

「是……處刑執行回執。」切娜抿了抿唇,「不過,是空白的。」
處刑人的表情在瞬間凝固。
她沉默地把信封完全劃開——紙張摩擦的聲音在空氣中放得異常響亮。

三張雪白的執行回執靜靜滑出。
沒有罪名、沒有姓名、沒有蓋章,所有欄位都是空的。
她盯著那三張紙,眼底的光一寸一寸暗下去。
「……怎麼可能。」

續篇:


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