《闇夜に刻まれた印》外伝:処刑人日記II(上):抜剣案件(処刑人シリーズ)/《烙印於黑夜之印》外傳:處刑人日記II(上):拔劍案件(處刑人系列)(和訳付き)
日本語訳
【処刑人日記II(上)・抜剣案件】
報告書が王都へ届いた翌日、
闇夜にも一つの報せが届いた。
――抜剣。
それは負傷でも戦闘でもない。
命を賭して放たれる、最後の手段。
処刑人は再び制服に袖を通す。
今回、斧は罪人のためではない。
同袍を「家へ連れ帰る」ために。
王国暦 Z年○月△日
昨日の午後、
報告書について殿下と副官に報告してから
どうにも一日中、胸の奥がざわついていた。
用事を終えて部屋に戻り、
身体はベッドに横たわっているのに、
心の奥に小石が引っかかっているようで落ち着かない
寝返りを打っても、
どうしても眠れない。
最後には腹を括った。
――明日は処刑がない。
――急いで救命する羽目になる不運な者もいない。
ならば、斧でも研ぐか。
制服を着込み、
私は再び処刑室へ向かった。
馴染みの石床の冷たさ。
脂と金属が混ざった匂い。
それだけで、心が静まる。
自分の「相棒」を手に取り、
刃を砥石に当て、
ゆっくりと押し滑らせる。
――シャリ。
――シャリ。
金属音が規則正しく反響する。
だが、研ぎの途中、
視界の端に小さな赤い点が浮かび始めた。
師匠が、かつてこの症状について話していた。
だが――
その後に何と言っていたのか、
今はどうしても思い出せない。
しばらくすると、
赤い点は自然に消えた。
私は、それ以上深く考えなかった。
「――コツ、コツ。」
空虚な処刑室に、
ノックの音がやけに鮮明に響いた。
顔を上げると、
長いスカートを揺らす人影が戸口に立っている。
「ヴァルレーナか。」
私は立ち上がった。
彼女は笑みを浮かべて中へ入る。
「殿下に呼ばれていてね。
そのついでに、様子を見に来たのよ――“先輩”。」
私たちは、同じ師の門をくぐった姉妹弟子だ。
彼女は勅命制裁騎士。
処刑技術も学んだが、
私より一足先に師門を離れ、
“裁く側”の道へ進んだ。
彼女は私の前で足を止め、
手にしている斧へと視線を落とす。
「機嫌が悪いの?」
そう問いかける。
「……少し、変な感じがする。」
私は正直に答えた。
彼女はそれ以上踏み込まず、
懐から一束の書類を取り出した。
分厚い紙の束。
縁には、まだ乾ききらない夜霧の湿り気が残っている。
「官邸に潜伏していた団員が戻ったわ。」
彼女は言う。
「殿下は資料を読んだあと、
すぐ私を呼び出した。」
私はすぐには開かなかった。
だが、指先にはすでに紙の重みが伝わっている。
――オルパキ。
やはり、何かが起きていた。

ヴァルレーナは、 書類の束を私の隣の机に置いた。
私は最初の頁を開く。
――汚職。
――職権濫用。
――官商の癒着。
――人身売買。
一行ごとが、
湿った冷たい指となって、
首の後ろへと絡みつくようだった。
私は頁をめくり続ける。
呼吸さえ、慎重になる。
「……背筋が寒い。」
低く呟く。
ヴァルレーナの視線が、
傍らの木製のブロックへと向かった。
先週使ったばかりなのだろう。
斧の痕が、まだ生々しく残っている。
「殿下は、私を現地へ派遣するつもりよ。」
彼女は淡々と言う。
「状況は、かなり厳しいはず。」
私は報告書を読み進める。
名簿の最後の数行で、指が止まった。
「……私まで、執行日の延長申請が必要になりそうだ。」
書類を閉じる。
「この人数だと、処刑は二日かかる。」
「これだけの数を“処理”するとなると――」
私は自分の手を見た。
「腕が鈍る。」
ヴァルレーナが口を開こうとした、その瞬間――
駆け足の音が、
処刑室の石壁に反響しながら突き刺さった。
「処刑人――!」
扉が勢いよく押し開かれる。
飛び込んできたのは、ライノールだった。
肩で息をし、
顔色はわずかに歪んでいる。
「……裁騎も、いるのか?」
一瞬だけ動きが止まる。
だが、すぐに言葉を続けた。
「どうしたの?」
先に問うたのはヴァルレーナだった。
ライノールは深く息を吸い込む。
「――メンバーが『抜剣』した。」
空気が、凍りつく。
私たちは全員、理解していた。
「抜剣」。
それは、
負傷でも、
交戦でもない。
――命を代価にする、最後の手段。
「……抜剣?」
ヴァルレーナが、低い声で確認する。
「その者は?」
自分の声が、思っていたよりも冷静だった。
ライノールは顔を背けた。
こちらに目を見せまいとするように。
「……すでに、『隕落』した。」
私は何も言わなかった。
ただ、ゆっくりと――
斧を、元の架に戻す。
金属と木が触れ合う。
鈍い音。
それはまるで、
鳴らされぬままの鐘を
内側から叩くような音だった。
「……誰が。」
「リシナだ。」
その瞬間、
指先に力が籠もる。
「……くそ。」
言葉が、自然と漏れた。
昨日まで、
決算書の束の中に空白の報告書を忍ばせる、
あの子。
情報を探り、
静かに歩き回っていた、
あの小さな背中。
そして――
私が最も望まなかった結末が、
ついに現実になった。
ライノールは言葉を止めなかった。
「殿下の命令だ。
処刑人とヘルンは直ちにオルパキへ向かい、
彼女の弟と遺体を撤収せよ。」
「クレアはすでに現地にいる。
追手の有無を確認できず、
王都へ支援要請を送ってきた。」
彼はヴァルレーナへ向き直る。
「裁騎閣下。
殿下はあなたにも同行を命じている。
さらに、緋焰と碧嵐の飛行部隊は待機中。
夜明けと同時にオルパキへ展開する見込みだ。」
そう言って、
彼は二通の書類を差し出した。
ヴァルレーナが受け取る。
「委任状……」
一瞥し、すぐに顔を上げた。
「クレアの身分は?」
ライノールはさらに一枚の資料を渡す。
「個人記録だ。闇夜のもの。」
「了解。」
ヴァルレーナは書類を懐へ収める。
余計な質問は一切なかった。
私はライノールを見る。
「彼女が亡くなってから、どれくらい経つ?」
彼はわずかに思考を巡らせる。
「クレアからの報告時刻によれば――
およそ三十分前。」
私は即座に飛行時間を計算する。
……足りない。
どう見ても、
“あれ”を持って行かねば間に合わない。
「ヴァルレーナ。」
私は口を開く。
「先に飛行場へ行け。
ヘルンはすでに到着しているはずだ。」
「私は装備を取ってから向かう。」
「了解。」
ヴァルレーナは即座に踵を返した。
その足取りに、一切の迷いはなかった。
ライノールもまた、
無言でそれに続いた。
残された空気は、
石壁のように冷たかった。
私は奥へ向かいながら、
魔導通信を起動する。
「……ノットディス。」
短い静電音のあと、
向こうから聞き慣れた、少し軽い声が返ってきた。
「まあ、処刑人?
これは珍しいね。どうしたの?」
私は回りくどい言い方をしなかった。
「ミエグリはそばにいるか?」
「いるよ。」
軽快な声色。
だが次の瞬間、
彼女は何かを察した。
「……何があったの?」
「すぐに闇夜の本部へ来させてくれ。」
私の声は沈んでいた。
「重要任務だ。」
通信の向こうで、
わずかな沈黙。
「……了解した。」
先ほどまでの軽さは消え、
乾いた、的確な返答だけが残る。
通信は切れた。
私は処刑室の奥の扉を押し開ける。
石の床は、変わらず冷たい。
片隅に、一つの箱が置かれていた。
そこに記された文字。
――「流星隕落の時」。
まさか、
本当にこれを使う日が来るとはな……。
私は箱の中身を取り出し、素早く装備を整えると、そのまま本部へ向かった。
大広間はいつも通りだった。
警報もない。騒ぎもない。
メデューサは眼帯をしたままソファに腰掛け、本を読んでいる。
まるで、すべてが日常の延長にあるかのように。
「処刑人。」
彼女は、私が来ることを知っていたかのように、
静かに手で隣を示した。
そこには、ミエがすでに待っていた。
「処刑人姉――」
「黙れ。」
私は遮った。
「腕を出せ。」
彼は一瞬きょとんとしたが、
素直に腕を差し出す。

針が血管に入った瞬間、
彼は小さく息を呑んだ。
「処刑人姉さん……これは……?」
またその呼び方をされたことに少し苛立ちつつ、私は答える。
「仲間が一人、逝った。」
「吸血鬼の血は、遺体を柔らかく保ち、腐敗を遅らせる。」
「えっ?」
ミエが眉をひそめる。
「竜の血じゃだめなの?」
「竜血は活性が強すぎる。」
私は淡々と言った。
「遺体が首を振る。」
「遺族にそんな姿を見せたいか?」
「……それは、やめておきます。」
採血はすぐに終わった。
「今度、甘いものを奢ってやる。」
器具を片付けながら告げる。
「お前も隊へ戻れ。
殿下はオルパキへ支援を送る準備をしている。
おそらく、お前も編成に入る。」
ミエは黙って頷いた。
それ以上、何も聞かなかった。
私は踵を返し、団部を出る。
飛行場へ向かって、早足で歩く。
「……くそ。」
風が頬を掠めた。
一滴。
そして、もう一滴。

追伸:
以上は”裏”の物語、”表”の物語はこちら:
本章は「オルパキ篇」の補完です、ぜひ「オルパキ篇」(17-26章)も一緒に読んでください。
以上の翻訳は ChatGPT による翻訳文をもとに、自ら校正・監修した形でお届けしています。
もし文体や語調などに不自然な箇所がありましたら、ぜひご指摘いただけますと幸いです。
ご感想やご質問などございましたら、コメント欄にてお知らせください。できる限りお返事させていただきます。
改めまして、本作品をお読みいただき、誠にありがとうございます。
中国語本文
【處刑人日記II(上)・拔劍案件】
回執送達王都的隔天,
闇夜也收到了另一個消息——
有人「拔劍」了。
這不是受傷,不是戰鬥,
而是以命為代價的最後手段。
於是,處刑人再次穿上制服。
這一次,斧頭不是為了罪人。
而是為了把同袍帶回家。
王國曆 Z年○月△日
昨天下午向殿下與副官報告回執的事情之後,
今天一整天都覺得不太對勁。
事情辦完回到房間,
人躺在床上,
心卻像卡著一顆小石子。
翻來覆去,怎樣都睡不著。
最後心一橫。
反正明天沒有處刑。
也沒有需要急救的倒楣鬼。
——那就去磨斧頭吧。
我穿上制服,
再次出現在處刑室。
熟悉的石地板冷意,
油脂與金屬混合的味道,
讓人安心。
我拿起自己的「傢伙」,
讓刃口貼上磨石,
慢慢推動。
沙——
沙——
金屬的聲音規律地回蕩。
只是磨到一半,
視野邊緣開始浮出細小的紅點。
師傅曾提過這種狀況。
但她後面說了什麼,
此刻我卻想不起來。
過了一會兒,
紅點自行消失。
我沒有深究。
「叩叩。」
敲門聲在空曠的處刑室裡格外清晰。
抬頭時,
一個穿長裙的身影站在門口。
「瓦爾蕾娜。」
我站起身。
她笑著走進來。
「殿下召見,所以順路來看看妳啊,『師姊』。」
我們出自同一位師傅。
她是誥命制裁騎士,
學過處刑技術,
只是比我早一步離開師門,
踏上真正的審判之路。
她停在我面前,
視線落在我手中的斧頭。
「心情不好?」
她問。
「有點怪。」
我如實回答。
她沒有追問,
只是從懷中取出一疊文件。

紙張很厚,
邊角還帶著未乾的夜霧氣息。
「官邸潛伏的成員回來了。」
她說。
「殿下看完資料後,就叫我過去。」
我沒有立刻翻開。
但指尖已經感覺到紙的重量。
——奧爾帕奇。
果然出事了。
瓦爾蕾娜把文件放到我身旁的桌上。
我翻開第一頁。
貪污。
瀆職。
官商勾結。
人口買賣。
每一行字都像濕冷的手指,
一節一節扣進後頸。
我一頁一頁翻下去,
連呼吸都變得小心。
「……頭皮發麻了。」
我低聲說。
瓦爾蕾娜的目光落在旁邊那個木樁上。
應該是上週才用過,
上面的斧痕還清晰可見。
「殿下說,準備派我過去徹查。」
她語氣平穩。
「情形應該不輕。」
我繼續翻著報告書。
指尖停在名單的最後幾行。
「連我都得申請延長執行日期了。」
我闔上文件。
「這樣的數量,上刑台要兩天。」
「要『處理』完那麼多人,」
我看了看自己的手。
「手會軟。」
瓦爾蕾娜正要開口——
急促的腳步聲,
撞進處刑室的回音裡。
「處刑人——」
門被推開。
萊諾爾衝了進來。
他還在喘,
臉色有點扭曲。
「……裁騎也在?」
他愣了一瞬,但沒有停下。
「怎麼了?」
瓦爾蕾娜率先問。
萊諾爾深吸了一口氣。
「有人拔劍了。」
空氣瞬間凝固。
我們都知道。
「拔劍」——
不是受傷。
不是交戰。
而是
以命換命的最後手段。
「……拔劍?」
瓦爾蕾娜低聲確認。
「那人呢?」
我的聲音比我自己想像的還要鎮定。
萊諾爾別過臉。
像是不願讓我們看到他的眼神。
「已經……殞落了。」
我沒有說話。
只是慢慢地,
把斧頭放回架上。
金屬與木頭碰撞。
一聲悶響。
像是在敲響
某種無聲的鐘。
「是哪位?」
「露西娜。」
那一瞬間,我的指節緊了一下。
「可惡。」
話脫口而出。
是那個會把回執塞進決算文件裡的孩子。
昨天還在探聽消息。
而我最不想發生的結果,終究還是發生了。
萊諾爾沒有停下。
「殿下下令——處刑人與赫倫立刻前往奧爾帕奇,撤離她的弟弟與遺體。」
「克雷亞目前在現地。他無法確認是否仍有追兵,因此向王都請求支援。」
他轉向瓦爾蕾娜。
「裁騎閣下,殿下命您一同前往。殿下也令緋焰和碧嵐的飛行部隊待命中,應該等天亮就會過去奧爾帕奇。」
說完,他遞上兩份文件。
瓦爾蕾娜接過。
「委任狀……」
她翻開掃了一眼,隨即抬頭。
「克雷亞的身分?」
萊諾爾又遞出一份資料。
「他的個人檔案。闇夜的。」
「明白。」
瓦爾蕾娜將文件收入懷中。
沒有多問一句。
我看向萊諾爾。
「她離開多久了?」
他稍微回想了一下。
「依克雷亞傳回的時間——大約半小時前。」
我在心中迅速計算,加上飛行時間的話。
不行,不夠。
看起來那東西非帶不可了。
「瓦爾蕾娜。」
我開口。
「妳先去飛行場。赫倫應該已經在那裡了。」
「我需要先取裝備。」
「好。」
她轉身離去,腳步沒有絲毫遲疑。
萊諾爾也立刻跟上。
留下的空氣,冷得像石壁。
我轉頭走進裡面,一邊走,一邊開啟魔導通訊。
「……諾烏蒂斯。」
短暫的靜電聲後,對面傳來那熟悉的、略顯輕浮的語調。
「哎呀,處刑人?這可真稀罕。找我有事嗎?」
我沒有拐彎。
「米耶古里在妳身邊嗎?」
「在呀。」
她語氣輕快,但下一秒便察覺了什麼。
「……發生什麼事了?」
「請他立刻來闇夜團部。」
我的聲音沉了下去。
「重要任務。」
對面沉默了半秒。
「我明白了。」
那輕快的尾音消失了。
只剩乾淨俐落的回應。
通訊切斷。
我轉頭推開處刑室裡面的門。
石地板依舊冰冷。
在一旁有個箱子,上面標著:
「流星殞落時」
沒想到,還是要用到它...
我把箱子裡的東西取出,迅速收好,便趕往團部。
大廳一如往常。 沒有警報,沒有騷動。 梅杜莎戴著眼罩坐在沙發上看書,彷彿一切仍在日常軌道裡。
「處刑人。」
她像是早就知道我會來,抬手指向一旁。
米耶已經在等。
「處刑人姊——」
「閉嘴。」
我直接打斷。
「手伸出來。」

他一愣,仍乖乖伸出手臂。
針頭扎入血管的瞬間,他倒吸一口氣。
「處刑人姊姊,這是……?」
被他還是叫了那聲,我心裡不爽,但還是回答。
「我們的成員離開了。」
「吸血鬼的血,能讓遺體保持柔軟,也能延緩腐敗。」
「啊?」
米耶皺起臉。
「不是龍血也行嗎?」
「龍血活性太高。」
我淡淡說。
「會讓遺體搖頭晃腦。」
「你想讓家屬看到那種畫面?」
「……那還是不要。」
抽血很快完成。
「下次請你吃甜點。」
我一邊收起器具一邊說。
「你也該回隊部了。殿下準備派人去奧爾帕奇,你大概會被編入支援。」
米耶點頭,不再多問。
我轉身,快步離開團部,朝飛行場走去。
「可惡……」
風擦過臉頰。
又一滴。
然後第二滴。

