AI事実検証を組み込んだら、自分の修正指示の誤りも止められた【AI経営実験 #53】
書籍の事実関係を見直していたとき、ある利用規約の変更について「30日が7日に短縮された」と修正指示を出しました。
コミット前のAI事実検証で、別系統のAIから「公式ソースには記載がありません」と返ってきました。私が直接、公式一次ソース(提供者本人が公式に発表している原典資料)を確認したところ、確かに記載がありません。
修正は反映せず、原文の表現で残しました。仕組みがなければ、書籍に誤情報が混入していたところです。
大学教員・士業・教育担当者・経営者に向けた、「権威があるから正しい」を疑う検証設計の話です。
「権威があるから正しい」が一番危ない
自分の発言・自分の指示でも、誤情報の入り口になります。
私の場合は大学教員という肩書きがあるので、「久原がそう言っていた」と広がる経路を持ちます。間違いに気づいて訂正しても、最初の発言だけが切り取られてSNSや社内資料に残るケースがあります。
「権威があるから正しい」を信じる側は、検証する手間を省きます。発信する側は「権威があるから検証されないだろう」と気が緩みます。両方が組み合わさると、誤情報は権威の名前で広がります。
権威を持つ立場ほど、自分の発言を疑える仕組みが必要です。
別系統のAIに事実検証を任せる仕組み
私の自社環境では、コミット前(変更内容を確定する直前)のタイミングで、別系統のAIに事実検証を投げる運用にしています。
別系統という指定が肝心です。同じAIに「いま自分が書いた内容を検証して」と頼んでも、同じバイアスで「読みやすいです」「論理は通っています」と返ってきます。
実装に使っているのは、Codex CLI(Claude Codeとは別ベンダーのコマンドラインAI、第三者検証者として使うツール)です。実行系のAIと検証系のAIを意図的に分け、別の判断系統で点検させます。
検証の対象は、数字・固有名詞・引用の3つです。すべてに「公式一次ソースで確認できるか」を問います。
公式一次ソース基準で誤情報を止めた
冒頭の「30日が7日に短縮された」のケースは、まさにこの仕組みが働いた事例です。
私が修正指示を出した瞬間、別系統AIに「この変更が公式に発表されている事実か」を投げました。返ってきたのは「公式ソースには記載がない」という指摘です。
そこで私自身が、提供元のサポートドキュメントとリリースノートを直接確認しました。確かに、その短縮を示す記載はありません。修正は反映せず、原文の表現で残しました。
仕組みがなければ、私は自分の記憶を信じて修正していました。書籍は印刷後の訂正が困難です。誤情報を一文混入させていれば、訂正コストは数百倍に膨らんでいたはずです。
「権威があるから正しい」ではなく「公式一次ソースで確認できるか」
事実検証の判定基準は、発信者の権威ではありません。「公式一次ソースで確認できるか」の一点です。
大学教員・士業・教育担当者は、自分の名前で誤情報を広げてしまうリスクが特に大きい立場です。受講者・読者・クライアントは、肩書きを見て信じる構造があります。
仕組みで止める設計を入れているかどうかで、半年後の信頼が変わります。AI出力に限らず、自分の発言・自分の指示にも同じ仕組みを適用する。これが私の運用の核心です。
関連する自社運用の試行錯誤は、こちらにも書いています。
ClaudeCodeの「作業」を全部Pythonに渡したら9,309行になった話(動いているAI運用編)
AIの月額コストが止まらない。"判断"と"作業"を分けたら3割減った話(判断と作業の仕分け編)
あなたの組織では、AI出力や自分の指示の誤情報を、どう止めていますか。
「人間が気をつける」だけで止めようとしている場合、急ぎ・面倒・うっかりで必ずすり抜けます。別系統AIで仕組みを組み込むのが、現実的な防御です。
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